100&200mで大会新V 山形愛羽が抱くでっかい夢 身長154cmでも「誰にも負けない」【日本学生陸上】

100メートル決勝でU20日本新をマークし、記念撮影に応じた山形愛羽【写真:中戸川知世】

100mに続き200mも大会新で優勝、昨夏のインターハイ覇者が大学でいきなり好記録

陸上の2024日本学生個人選手権の最終日が16日、神奈川県のレモンガススタジアム平塚で行われた。女子200メートルでは山形愛羽(福岡大1年)が決勝で23秒53(追い風1.4メートル)の大会新記録をマークし優勝。15日も100メートル決勝で11秒41(同1.7メートル)のU20日本新、大会新で優勝しており、堂々の2冠に輝いた。身長154センチの小柄な体に詰まった無限の可能性。大柄な選手にはない部分で勝負し「背が低くても走れると広めていきたい」と野望を口にした。

身長154センチの小柄な体が、スタートから弾丸のように飛び出し圧倒した。他を寄せ付けないレースで2つ目の大会新をマークした山形は「100と200で自己ベストを更新できた。200は高2から止まっていたので、絶対に更新したかった」と笑顔をはじけさせた。

それぞれの種目で予選、準決勝、決勝と1日3本のレース。U20日本新をマークした100メートルの激走は、翌日になってもダメージとなり残っていたという。「筋肉痛も出たりしていたんですけど、アドレナリンと気合が出たので」。勢いあふれる走りで障害を乗り越えた。

準決勝が追い風参考2.8メートルながら、23秒77の好タイム。決勝を走り終えた瞬間は(23秒)7台かな」と思ったというが、進化のスピードが感覚を上回った。「前半から突っ込もうと思って。200でも120メートルまで全速力。あとはキープできれば」という作戦通りのレースでぶっちぎった。

昨夏のインターハイでも100メートル、200メートルの2冠をさらった黄金ルーキー。その上で大学での進化を「以前は考えながら走ることができなかった。大学に入ってからは違います。足を前に前に、腕を最後まで振れている」と、走りのメカニズムへの理解が高まったと分析している。

身長154センチの小柄な体で駆け抜ける山形【写真:中戸川知世】

夢の100m10秒台へ「背が低くても走れると広めていきたい」

日本女子が苦しいと言われる短距離の世界で、世界と互角に戦っていくのが目標だ。自身と世界との距離を考えさせられるできごとがあった。5月にバハマで行われた世界リレーに4×100メートルリレー日本代表の一員として参加し、アンカーを務めた。

「まだまだ足りない。(100メートル)11秒台じゃなく、10秒台を出さないと話にならない。今までは夢みたいに思っていたけれど、今は目指しているので。10秒台」

日本の選手でも特に小柄な山形は、海外の選手との違いについても考えさせられたという。「体格、筋肉量、練習量も違うと思うんです。どうしたらいいか考えないと。でも身長で勝てない分、ピッチでは誰にも負けません。背が低くても走れると広めていきたいんです。高くなりたいけど無理なので、ストライドをもっと広げて……」。作戦が頭を駆け巡る。

世界リレーでは、スタートの瞬間になっても全く静まらないスタンドの空気にも圧倒された。「オンユアマークといわれてもまだざわついていて……。ぼーっとしてたらピストルにも気づかないくらい」。そんなタフな環境でも結果を残せる選手を目指していく。

2週間後には日本選手権が控えており「走るからには金。2冠を目指します」と言い切った。2028年のロサンゼルス五輪には、リレーと個人種目双方での出場を目指している。18歳の前には、大きな可能性だけが広がっている。

THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori

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