更年期世代に注意が必要な梅雨や湿気 乗り切るために今日から始められることとは

ジメジメする梅雨時期が苦手な人も(写真はイメージ)【写真:写真AC】

ジメジメ、ムシムシ、ベタベタ……と、湿気や蒸し暑さを感じる鬱陶しい時期になりました。病気ではないけれど、手足がだるくなったり、下半身がむくんだりした経験がある人も多いでしょう。「Hint-Pot」では、更年期の女性の元気をサポートする、国際中医薬膳師のかみむら佳子さんによる連載をスタート。今回は、苦手な人も多い梅雨時期の過ごし方や食養生をお届けします。

◇ ◇ ◇

梅雨シーズンの重いだるさやむくみなどは「湿邪」の影響

薬膳では、梅雨など湿度が高い日が続くと、自然現象の湿気が変化して「湿邪」となり、体に悪影響を及ぼすと考えます。湿邪には「沈重性」と「下降性」の特徴があることから、梅雨時になるとなんとなく手足がだるい、頭が重くだるい、膝や足が重い・痛みが出る、下半身がむくむといった状態が出る人もいるでしょう。

たとえば同じTシャツでも、乾いているものと濡れたものの重さを比較すると、濡れたTシャツのほうが断然重いですよね。体も同じで、湿気や余分な水分があると重く、だるく感じるのです。

加えて、湿邪には「粘っこく汚い」性質があります。汗が肌にベタベタとまとわりつく感じや、痰がネバネバしたり、舌の苔が厚くべたーっとついたりすることも起こりやすくなるといわれています。

さらにやっかいなのは、「定着」という性質です。湿邪の影響から出た症状は、しつこく長引きやすい傾向があります。水虫が悪化したり、できものができてずっとジクジクしたりということも、この定着性の仕業と考えます。

こうした湿邪の性質によって、更年期のホットフラッシュやのぼせがある人はより熱がこもりやすくなり、すっきりしない日が続くこともあります。冷えや頭痛、関節痛、手足の強張りなどがある人は症状が加重傾向になりやすいので、梅雨時が苦手と感じることも多いでしょう。

体内に「湿」を溜めないように適度な運動や入浴で汗をかく

また、体には異常がないのに、梅雨時になると何を食べてもおいしく感じない、食欲がない、胃がもたれる、下痢ぎみといった状態になる人は、湿邪の影響を受けているかもしれません。

中医学では、臓腑の「脾」(西洋医学の脾臓とは異なります)が消化吸収に関わると考えます。脾は湿気を嫌うので、雨の日が続くと働きが悪くなり、体内に余分な水分や湿が溜まりやすくなる原因に。食欲不振や胃のむかむか、下痢、むくみなどが起こるといわれています。

元気に乗り切るためには、外から受けた湿気の影響を体の内側になるべく溜めないことです。適度な運動をして汗をかくことや、冷たいものの食べすぎ・飲みすぎで体を冷やさないこと、湯船に入り体を温めることなどが養生になります。

湿邪対策のメニュー【写真:かみむら佳子】

利尿作用のある食材を積極的に食卓へ

薬膳では、食から湿邪対策をします。「利水」という利尿作用の効能や体内の水湿を取り除く「きょ湿」の効能があるといわれる食材がおすすめです。キュウリやウリ、冬瓜、トウモロコシ、モヤシ、緑豆春雨、緑豆、黒豆、小豆、インゲン、ハトムギ、ウナギ、スイカ、サクランボ、パイナップルなどがあります。また、スパイスなどの香辛料を利用して発汗を促すのもいいでしょう。

薬膳レッスンで湿邪対策のお話をすると、「食材からメニューが思い浮かばない」といった悩みを持つ生徒さんがいらっしゃいます。そんなときは、「湿気の多い場所の料理を参考にしてみるといいですよ」とアドバイスします。たとえばベトナム料理には、体を冷やして熱を取り除き利尿作用もある緑豆を使った湿邪対策になる料理がたくさんあります。チェーというデザート、緑豆モヤシや緑豆春雨を使った生春巻きやフォー、バインセオ、サラダ、炒め物など。また、汗をかくような香辛料を使うタイ料理も当てはまります。

ただし、利尿作用のある食材は、同時に体を冷やしやすい特徴もあります。胃の弱い人や冷えが気になる人は、ショウガやニンニク、ニラ、ネギなどの温熱性の食材を加えた料理や、温かい汁物などを一緒に食べることで冷やしすぎを防ぎましょう。前述のベトナム料理は、冷やす食材にエビや鶏肉、パクチーなど体を温める食材を組み合わせる料理が多いことからもおすすめです。辛いスパイス類は消化機能に負担がかかるので、食べすぎに注意しましょう。

そして更年期世代は、薬膳でいえば「冷えタイプ」か「熱タイプ」のどちらかに極端に傾いていることが多いです。冷えタイプは、消化機能に負担がかからない程度に体を温めるスパイス類を取り入れて湿邪対策を。一方で、ホットフラッシュがあり潤いが不足しがちな熱タイプは、ベトナム料理などを参考に、体の熱を冷ましながら利尿作用のある料理での湿邪対策が向いています。

梅雨の時期は、住まいの環境と同じように体の“除湿”も心がけて、すっきり快適に乗り切りたいですね。

かみむら 佳子(かみむら・けいこ)
大学卒業後、ハウスメーカーの営業職にて勤務後、28歳でフードコーディネータースクールに通い、アシスタントを経て独立。35歳で第2子流産後に続いた体調不良をきっかけに、薬膳を学び始める。「あなたスタイル薬膳RKazen」を主宰し、身近な食材で手軽に養生を実践する簡単薬膳や中医学の指導、セミナーなどで活動中。

© 株式会社Creative2