杉咲花&若葉竜也、『アンメット』第9話ラストシーンの裏側語る 「最高に贅沢な時間でした」

毎週月曜22時よりカンテレ・フジテレビ系で放送中の月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』。第10話の放送に向けて、杉咲花と若葉竜也からコメントが到着した。

講談社『モーニング』で連載中の人気コミック『アンメット -ある脳外科医の日記-』を連続ドラマ化する本作は、事故による後遺症で過去2年間の記憶がない脳外科医のミヤビ(杉咲花)が、同じ脳外科医でアメリカ帰りの三瓶(若葉竜也)と出会い、医師としての自分を少しずつ取り戻していく、新たな医療ヒューマンドラマ。

6月10日放送の第9話では、冒頭で綾野(岡山天音)と麻衣(生田絵梨花)のスピード入籍に加え、綾野病院と丘陵セントラル病院が法人合併することが発表された。一方で、ミヤビがある人物に得体の知れない恐怖を感じたことを皮切りに、ミヤビの記憶障害の本当の理由が明かされる様子も描かれた。

そんななか、大きな話題になったのが、ミヤビと三瓶によるラストシーン。演じる杉咲自身も「忘れられません。いつまでもああしていたい14分でした」というあの場面、実は、14分間にわたる長回し一発撮りで撮影し、その場にいるスタッフも最小限の人数に減らして臨んだ渾身のシーンで、若葉は、「照明部、撮影部、録音部、演出部という各部署が力をあわせていろんなアイデアを出して一致団結できた」と、チーム力の高さに自信をのぞかせた。さらに「撮影前のリハーサルでは数十人のスタッフが輪になって芝居を確認して、1カットのために1時間以上セッティングして全員緊張してカメラがまわる。最高に贅沢な時間でした」と、知られざる舞台裏を明かした。SNSでもミヤビと三瓶のリアルな会話劇に多数のコメントが寄せられ、X(旧Twitter)では「#アンメット」が日本トレンド1位、さらに世界トレンド1位も獲得。さらに、2021年以来の地上波テレビ出演となった池脇千鶴のゲスト出演も話題になった。

6月17日放送の第10話では、一過性健忘の症状が現れたミヤビの脳の詳細を、ついに三瓶が知ることに。しかし非情にも、その事実は三瓶を悩ませることになる。はたして、三瓶はどんな決断を下すのか。そして、当のミヤビも、未来の自分を彷彿とさせる患者を診ることにより、かつてないほどに不安を募らせ、そしてある決意をするまでが描かれる。

物語はいよいよ最終章へと突入。杉咲は「さみしくてさみしくて。あと90話分くらい撮影していたい気持ちです」とコメント。一方の若葉は、「我々は9話のラストから10話、11話は1本の作品だと思っています。いろいろなものがうごめき出していきます。ぜひ目撃してください」と、残り2話への意気込みを語った。

【杉咲花 コメント】
●これまでの放送を終えて、今の心境
さみしくてさみしくて。

あと90話分くらい撮影していたい気持ちです。

●周囲の反応や反響、届いたメッセージで嬉しかったこと
周囲の反響で言うと、同業者の方々からこんなにも感想のご連絡をいただいたのは、初めての経験でした。こんなドラマに関わりたいと感じられるような作品作りができたら…という自分たちの密かな夢が、少し輪郭を成したような気がしてぐっときてしまいます。

●ミヤビの日記や血管吻合も自身が担っているが、どのような思いから取り組んだのか
負けず嫌いだからです(笑)。

去年の12月に監修の石川久先生から初めて縫合を教わった時、全然できなくて途方に暮れました。できないことを突きつけられた瞬間、この先カメラの前に立っても自分は医者じゃないと思ってしまう気がしたんです。目の前にあるたったひとつのことだけでもできるようになったら、川内ミヤビとして存在する自信になる気がして。毎日縫う練習をしました。

これまでの放送で好きなシーンや印象に残ったセリフ
数えきれないほどありますが、9話のラスト、医局での三瓶先生とのやり取りが忘れられません。現場にいた全スタッフが大きな輪になってリハーサルを見つめ、各部署がアイデアと体力を振り絞って長回しに臨みました。自分でも信じられないほど緊張しましたが、俳優がどんな動きをしても絶対に捉えてやるという熱量で重たいカメラを担ぎ続け、どこが切り取られても最高に美しい光をセッティングし、ひとつの吐息も録りこぼさないほどの気概で音を拾い、祈るように見守ってくれているスタッフさんに囲まれながら行われた撮影。いつまでもああしていたい14分でした。

●第2話のサッカー少年とミヤビが向き合う、高架下でサッカーボールを蹴り合う長回しのシーンなど、自身のアイデアや提案で実現したシーンや撮影方法について
高架下のシーンでは、亮介が自分の状態や気持ちをとても繊細に実感する重要なシーンでした。ゲスト出演というただでさえ緊張する環境のなかで、そこにいる人たちを信じて心を裸にしていく時間はとてつもないプレッシャーに襲われるはずで。少しでもフラットにその瞬間を生きられるために、Yuki監督とアイデアを出し合って、30分間の長回しをすることが決まりました。

2話に限らずですが、1つのシーンにおいて1台のカメラでさまざまなアングルから撮影を重ねていくなかで、どのような撮り順で進めていくかについてはかなり話し合いをしました。自分が経験してきた現場は、どんなシーンであっても一発目は主人公から撮っていくことが多かったんです。だけど、主人公だけが輝いていても良い作品にはならないと思っていて。だからこそ、そのシーンにおいて何が一番重要で誰を輝かせたいのかを密に考えながら、鮮度のある表情を大切に納めていくことについて、監督や米田プロデューサー、若葉さんと徹底的に話し合いを重ねました。

●脚本作りにも参加したそうだが、どのように打ち合わせを重ね、どのように自身の思いが反映されているか
打ち合わせは主に米田プロデューサー、Yuki監督、若葉さんの4人で行うことが多かったのですが、特にそれぞれの役のセリフにおいて適正な言葉を精査すること、伝えたいことを言語だけに頼らず表現する方法を探すことに注力していきました。

例えばたった一言のセリフや語尾、“てにをは”についての精査に1時間以上かかることも日常的で、決定的な情報を敢えてセリフにしないことに関しては緊張が走る瞬間もありました。ですが説明しすぎないということは、受け手を信じるということで。作劇上の都合で出口を誘導するのではなく、それぞれの役がひとりの人間として気持ちの筋を通すことを最優先するため、さまざまな視点からの擦り合わせを心がけていました。

●意外な反響に驚いたこと、反応・反響をみて思っていたことなど
やはりみんなで時間をかけて話し合ってきたことについて、視聴者の方々がしっかりキャッチしてくださっていることがすごく嬉しくて。意図していなかったところでも、その人だけの感性で受け止めて、その人だけの物語が育まれていっていることが最高に嬉しいです。

●撮影現場での思い出深いエピソード
みんなで集まってオンエアを見届けたり、スタジオの前室でお米を炊いて食卓を囲むような時間を過ごしたり、キャリアや部署を問わず、くだらない話でゲラゲラと笑っていたり。時にはすれ違いが起きて、気まずい空気が流れた場面もありました(笑)。だけどそれは、真剣だったから。 毎日を一緒に過ごしていると、いろんないろんなことが起きるけど、喜びも涙も、好きなお菓子もみんなで半分こすることができたすべての瞬間が宝物です。

●座長としての思いや考え
感謝とか愛情は、言葉や態度でなるべく伝えていきたくて。

軽やかに伝えることって難しいし、自分にできることも少ないですが、作品に関わるひとりひとりが大切で、誰もが欠けてはいけない存在であることをみんなで共有できたら、現場が“行かなきゃいけない場所”じゃなくて、“明日も行きたい場所”になるんじゃないかなって。

またみんなに会いたいです。

●第10話や今後の展開の見どころ、視聴者にメッセージ
アンメットが大好きでたまらないみんなと力の限りを尽くした自信作です。是非お家のテレビで観てください。

【若葉竜也 コメント】
●これまでの放送を終えて、今の心境
心血注いだだけあって、後半に向かって少しずつ数字も上がってきましたし、今までドラマを久しく見てなかった方々の声も多くいただくので、それはすごく心の支えになりますね。丁寧にやって良かったなと。

●自身が実感する反響について
近所のコンビニの店員さんに顔がバレたくらいですかね(笑)。あまり外出しないので、実感みたいなのはあまりないです。嬉しかったこととしては、SNSに頂いたコメントで、お医者さんを目指していたけど、持病もあり諦めていたという方から、『アンメット』を見て、やっぱり医者をめざしてみようと自分で決めましたっていうコメントをいただいたり、あと、高次脳機能障害の小さい男の子を持つお母さんから、温かいメッセージをいただいたんですけど、テレビで『アンメット』をみて、その子が泣いてたらしいんです。お母さんが、『どうして泣いてるの?』て聞いたら、『わかんない…』って言っていたらしくて。反響をいただいたり、数字が伸びているというのは、もちろん嬉しいんですけど、そういうメッセージをいただくことが、『アンメット』をやってる意味があったなと、僕が一番うれしかったのは、そこですかね。

●三瓶先生がミヤビにもらったロールキャベツは右手で食べる(味わいたいから)でも、普段は左手でご飯を食べている(医者の鍛錬として)ことについて、SNSでは「演技が細かい」との声があるが、左手を使うことで苦労したことはあるか
あれは別に誰に言われたわけでもないのですが、僕は利き手が右手なんですけど、勝手にやり始めましたね。原作にも三瓶が、普段は左手で食べるけど何かきっかけがあれば、右手で食べるという描写が少しあって頭にあったので、割と自然にやりはじめました。このシーンでは、左手、このシーンなら右手かなというのを自分の感覚でやっているという感じですかね。今はもう、左手で食べられるようになったんですけど、練習中は毎日家でも左手で食べるようにはしてましたね。一切説明もないのにそんな所に気づいてくれる人たちがいるなんて嬉しいですね。

●杉咲花曰く器用でなんでもすぐに習得するそうだが、スケボーもすぐ習得したとのことで運動もそうか?
わりと、そうかもしれないです。ダンス以外は…。仕事でスケボーに乗る役といわれて、経験はなかったんですけど、2回くらい乗ってみたら、あ、意外と乗れるな。ってなって、監督もイケる!と思ったのか渋谷の街を走らされて冷や汗をかきました。器用貧乏なんです。

●「(若葉竜也が)世界に知られてしまったか」とネットで話題になったことについて
めちゃくちゃ届いています(笑)。昔から応援してくださっているファンの方、僕がまったく仕事をしていない時から見てくれている人は、ある程度認識してるんで。本当に礼儀正しくて、秩序が守られたファンの方が多くて、人格がすごく素敵なんだろうなと思います。ただ、やっぱり僕はひっそりと暮らしていたいですね。有名になる事とか、ブレイクとか、本当に興味がないんだと思います。

●第7話でコーヒーショップの店員役として出演した今泉力哉監督とはどんな話をしたか
今泉さんが出たらきっと面白いだろうなと前からぼんやり思っていて…。プロデューサーの米田さんや杉咲さんに話したら、2人とも今泉さんどうかなと同じように思っていたみたいで、なるほどじゃあどこではめられるかなと…カフェ店員役はわりと満場一致でしたね。

●これまでの放送で好きなシーンや印象に残ったセリフ
アドリブっぽく見えるとこほど、実は台本があって、台本にないアドリブは、わりとバレてないんです。そういったあたりの感想をみて、ニヤニヤしてますね。例えば、6話の『チクっとしますよ』というのは、台本通りです。あれは、何カットも撮った上で笑うタイミングとか、セリフの間とかしっかり作られた芝居として存在していて。逆に、3話の『ぶっ飛ばします。昨日ロッキー見たんで』、あれはアドリブですね。原作の中に、三瓶は、ロッキーが好きというくだりがあったので、頭にあって。その場でやってみて、そのシーンを撮影してから、スタッフさんがセリフとして“ロッキー”が使えるかを確認してましたね。台本では『あの野郎』だけでした。そういうシーンはたくさんあるので見つけてください。自分のお気に入りを探してくれたら嬉しいです。個人的には星前がお母さんの事を話すシーン。感動しました。素晴らしすぎるお芝居でしたよね。あとは術者の景色を見たミヤビが「忘れたくないなぁ」と呟くシーン。杉咲さんがあの台詞をあの温度で発した事に鳥肌が立ちました。4話のラスト、綾野の「前にもこんなことあったな」ってとこも本当に素晴らしかったですね。

●第10話や最終話に向けて視聴者にメッセージ
前回放送の9話は、『アンメット』チーフ助監督の日髙さんが監督をしていて、ずっと傍らで見てくれていた方だったというのもあって、自由にやらせてもらいました。最後のシーンは、14分長回しだったり。近くで見ていてくれたからこそ、撮れた画がたくさんある。照明部、撮影部、録音部、演出部という各部署が力をあわせていろんなアイデアを出して一致団結できたなと思います。撮影前のリハーサルでは数十人のスタッフが輪になって芝居を確認して1カットのために1時間以上セッティングして全員緊張してカメラがまわる。最高に贅沢な時間でした。10話11話は、またメイン監督のYuki監督が担います。Yuki監督は繊細に芝居をみて、掬い取ってそれをしっかり作品に組み込む方なので俳優としては緊張する相手です。同時に僕もそんな監督がなにを見つめているのかを細かく見ています。演出家と俳優として緊張感がある理想的な関係性なので、一瞬の油断もできません。我々は9話ラストから10話、11話は1本の作品だと思ってます。いろいろなものがうごめき出していきます。ぜひ目撃してください。

(文=リアルサウンド編集部)

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