後肢旋回ってどんな技?

騎乗鞍数が増え、常歩、速歩、駈歩などの基本的な馬の操作をマスターすると、いよいよ馬術の世界へと足を踏み入れることになります。
今までのレッスンで学んだ成果を試すために、馬術競技会への出場を目指す方も多いことでしょう。

今回は、馬術としてマスターしたい後肢旋回についてまとめました。

後肢旋回とは

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後肢旋回とは、後肢を支点としてコンパスのように円を描く動きのことをいいます。** 足踏みしながら前肢を交差させて、前躯を後躯の周囲で旋回します。後肢旋回には360度旋回と180度旋回があり、後者はハーフピルーエットといいます。

ちなみに後肢旋回は、数ある横運動(側方運動)のひとつです。側方運動には以下の7種類があります。

・肩を内へ(ショルダーイン)
・斜め横歩(レッグイールディング)
・前肢旋回
・腰を内へ(トラバース)
・腰を外へ(ランバース)
・後肢旋回(ピルーエット)
・横歩(ハーフパス)

どれも馬術には必要な運動になります。

やり方

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後肢旋回は、馬の前に行こうとする気持ちを横へ変換する動きです。** 左手前の場合は左回転(左が内側)、右手前であれば右回転(右が内側)となります。
ここでは右方向への後肢旋回(360度)について説明します。

まず初めに、乗り手の重心を後ろ寄りにします。馬は前肢の肩を動かしやすくなるため、スムーズに旋回できるようになります。
左手綱で壁をつくるイメージで、左手綱で首を右に向けるように押し手綱をおこないます。
そして外方脚である、左脚でも壁を作ります。ふくらはぎを馬体にしっかり添えましょう。

この時右側の手綱は、左側とは逆にゆるめます。
馬が旋回する方向である右の手綱を開いて馬を回転方向に誘います。内方の手綱で馬の動きを妨げない様に注意しましょう。
内方脚ある右脚では、馬に対して旋回のための推進力を与えます。腹帯の直ぐ後あたりで脚を使い推進します。

次に、外方脚で腹帯のやや後ろを強く圧迫して回転半径が小さくなるように推進します。馬の四肢がリズムを保って動くことが大切です。
上記をくり返して旋回し、元の位置に戻ります。

これらの動きの中で、手綱を使って動かそうとすると馬はブレーキだと認識して動かなくなってしまいます。
人から馬へのメインの指示出しは、手綱ではなく脚でおこなうことが基本です。
手綱は、前進気勢が強すぎたときにブレーキをかけたり、馬の反応を修正していくための補助として使います。

いきなり360度の後肢旋回が難しいようでしたら、以下の方法でラチ沿いの蹄跡を使って半ピルーエット(180度の後肢旋回)を試してみて下さい。
1. 蹄跡上で馬体を真っすぐにして、常歩での歩幅を詰める。(収縮常歩)

2. 内方騎座に乗りながら後方へ体重移動して内方後肢の軸に乗る。(内方脚を中心に馬体を屈曲させ、外方脚は後方へ)

3. 内方姿勢を維持しつつ、外方手綱と外方脚で横(内方向)へ前躯を旋回させる

4. 1歩横へ旋回したら、内方脚と内方騎座で半歩だけ前進させる。

5. 3と4を繰り返しながら前駆を旋回させる。この間も内方姿勢はキープする。

6. 180度旋回する前に元のラインに戻り馬を真っ直ぐ歩かせる。

180度の後肢旋回でも推進は大切です。是非試してみて下さいね。

得られる効果

後肢旋回を始めとする横運動(側方運動)には、以下のような効果があります。

・前駆・後躯に対する乗り手のコントロールが改善できる。
・馬の運動能力を向上させて、柔軟性を高める。
・乗り手が扶助を効果的に使えるようになり、扶助に対する馬の反応が良くなる。
・馬の操作性が高くなり、乗りやすくなる。
・馬のバランスや体勢(セルフ・キャリッジ)が良化する。
・馬の動きに対する乗り手の感覚が向上する。

後肢旋回などの側方運動は、馬だけでなく乗り手にとっても様々な効果がありますね。
後肢旋回をさせるための指示を馬にしっかりと伝えることができれば、乗り手の自信にもつながります。

ただし、後肢旋回は肢に負担がかかる運動なので、やり過ぎには注意して下さいね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は、後肢旋回についてまとめました。

馬によっては、屈曲が苦手な馬がいます。後肢旋回は馬を屈曲させておこなう運動なので、内方姿勢を維持できるように乗り手が扶助をしっかりおこなうことが大切です。

乗馬から馬術へとレッスンを進めている方は、既に後肢旋回はマスターしていらっしゃるかもしれません。
側方運動のうち比較的マスターしやすいものは、斜め横足と前肢旋回です。習得しやすいものから始めるのが良いでしょう。

後肢旋回のマスターは、練習あるのみ!です。
是非頑張って下さいね!

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