夫婦で「年金月30万円」もらえるはずだが…年金機構から「年金支給停止」の通知が届く夫と届かない夫の決定的な差

(※写真はイメージです/PIXTA)

ひと昔前であれば、年金の受給が始まる65歳には仕事を辞めて、年金を頼りに暮らしていく……というのがスタンダードでした。しかし、いまは65歳以降も働くのも主流。なかには年金をもらいながら働くという選択をしている人も。しかしその場合、「年金支給停止」という理不尽が壁として立ちはだかるケースも。みていきましょう

年金受給年齢「65歳」を越えてもなお働き続ける日本人

総務省『労働力調査』によるっと、2023年、男性「55~59歳」の就業率は91.5%。「60~64歳」が84.4%、「65~69歳」が61.6%、「70歳以上」が25.9%となっています。

現在、多くの企業では60歳が定年ではありますが、65歳、さらには70歳まで働ける環境整備が進んでいます。50代後半と60代前半の就業率の差は7.1ポイント。60代前半と60代後半では22.8ポイント、60代後半と70代以上では35.7ポイントとなっています。60歳の定年を迎え、そのまま勤めていた会社で働き続けるかどうかはさておき、「60歳定年で仕事をやめる」と選択する人は少数派。60歳以降も働き続け、65歳で「働く」or「働かない」という選択をする人のほうが多数。次にターニングポイントになるのが「70歳」といえそうです。

【就業率の変化】

2013年:89.1%/72.2%/48.8%/19.7%

2014年:90.0%/74.3%/50.5%/19.9%

2015年:90.2%/75.5%/52.2%/20.1%

2016年:90.6%/76.8%/53.0%/19.9%

2017年:91.0%/79.1%/54.8%/20.9%

2018年:91.3%/81.1%/57.2%/23.1%

2019年:91.1%/82.3%/58.9%/24.7%

2020年:91.3%/82.6%/60.0%/25.4%

2021年:91.0%/82.7%/60.4%/25.6%

2022年:91.3%/83.9%/61.0%/25.9%

2023年:91.5%/84.4%/61.6%/25.9%

※数値左より男性、55~59歳/60~64歳/65~69歳/70歳以上

現在、老齢年金の受取は原則65歳。60歳で仕事をやめてしまうと、無収入の期間が5年間できてしまうので、65歳までは働く。さらに65歳を迎えてもなお働き続ける、という人が確実に増えていることが分かります。

年金月18万円…月40万円を稼いで「年金支給停止」される人、されない人

給料をもらっている間は年金を受け取らず、完全引退してから年金受給を開始する、という方法のほかにも、年金を受け取りながら働くというのも良く知られたものです。

60歳以降に在職(厚生年金保険に加入)しながら受ける老齢厚生年金を在職老齢年金といいますが、意識したいのが支給停止となる基準額。令和6年時点、その額は年金と給与の合計が50万円以上。50万円を超えると、月額「総報酬月額相当額+基本月額-50万円)×1/2」が年金支給停止、となり毎月の年金から減額となります。「年金支給停止」となると、日本年金機構から「支給額変更通知書」などが届き、その旨を知ることになります。

ここでいう年金は、厚生年金のこと。給与は毎月の給与と直近1年間の標準賞与額を12で割った額のことをいいます。

たとえば、夫「月18万円」、妻「月12万円」、合わせて月30万円の年金を手にする夫婦がいたとしましょう。夫の厚生年金は「18万円-6.8万円=11.2万円」。つまり給与が38.8万円以上だと、「年金支給停止」となるわけです。

厚生労働省の調査によると、65~69歳・非正規男性の月収の中央値は21.7万円。月収40万円以上はおよそ10%。実際に「年金支給停止」という悔しい思いをする人はかなりの少数派であることが分かります。

それでも実際に毎月の年金から減額されることには、どこか理不尽さを感じるもの。また「これ以上稼ぐと……」という上限があると、就労意欲の減退になることも。

一方で、年金月18万円とは別に、働いて40万円以上の収入があるに関わらず、「年金支給停止」とならない人も。それは厚生年金に加入せずに働いている人、すなわち、フリーランス。前出にある通り、在職老齢年金は、厚生年金に加入していることが前提。定年後の働き方を企業側と調整する際に「業務委託」などの形で働くことができないか確認してみるのは手。「年金支給停止」に怯えず、稼ぎたいだけ稼ぐことができるようになります。

ただその場合、収入が不安定になるなどのリスクも。どちらの働き方が自分に合っているか、よく検討することが重要です。

[参考資料]

総務省『労働力調査』

日本年金機構『在職中の年金(在職老齢年金制度)』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

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