二十歳を迎えた鈴木福 呼ばれ方は「『福さん』が増えました」 “子役のイメージ”を「超えたい」

子役時代から活躍を続ける俳優・鈴木福が二十歳を迎えた【写真:荒川祐史】

父は和楽器職人、母は箏の師範 愛のある「ド昭和」な教育を受けてきた

子役出身の俳優・鈴木福が二十歳を迎え、充実度を高めている。1歳で芸能界デビュー。2011年に放送され、放送開始時に6歳で出演したドラマ『マルモのおきて』(フジテレビ系)で人気に火が付き、子役ブームを牽引(けんいん)した。昨春に大学に入学し、学業両立の中で「演技と学問」の新たな探究心が芽生えたという。今回、誕生日である6月17日に『鈴木福 フォトエッセイ 笑う門には福来る』(主婦と生活社刊)を上梓。おなじみの呼称である「福君」から「福さん」と呼ばれることも多くなってきた現在、自身の芸能界人生をどう振り返り、どんな将来像を描くのか。厳しくも優しく育ててくれた両親の教育があってこそ今があるといい、「一番頼れる存在」である両親への感謝の思いについても語った。(取材・文=吉原知也)

凜(りん)としたたたずまい、大人びた雰囲気。子役時代の面影はどこに行ったのかと思えば、写真撮影で無垢(むく)な笑顔を振りまいた。舞台公演の合間を縫った取材は、大学終わりの夜の時間帯に実施。それでも、疲れたそぶりは一切見せず、プロ意識が感じられた。

「二十歳になるという実感は、実はあまりないです。一緒にお酒を飲む約束が入り始めていてちょっとずつ現実味が出てきています。仕事に集中していたら『いつのまにか誕生日なんだ』といった感じになるのかなと思っています」

役者業の他にも、日本テレビ系朝の情報番組『ZIP!』の木曜パーソナリティーを務めるなど、多忙そのもの。仕事が途切れないありがたみを感じる日々だという。

芸能人のキャリアとしては、もう“20年選手”だ。大人になるにつれ、名前の呼ばれ方への変化が起きているという。

「僕は鈴木と呼ばれるのは好きじゃないんです。福君か福さん、福ちゃん、福。福の名前で呼んでほしいなと思っています。『福さん』は増えました。やっぱりお仕事だと、『福さん』と言っていただくことが多いです。マネジャーさんも『福さん』と言ってくれます(笑)。年齢があまり変わらないので、僕としては『福君』と呼んでもらってもいいのにと思っていますよ!(笑)」。

父は和楽器職人で、箏(こと)の奏者だった母は現在、箏の師範として生徒たちを教えている。著書で「ド昭和」と表現した両親から、愛を持った厳しい教育を受けてきた。

「ちっちゃい時から本当に厳しく優しく、育ててもらいました。悪いことをしたら当然怒られて、場合によっては父から『(頭を)パチン』もありました」。

仕事に臨む姿勢について、両親から学んだこともある。子役時代のある時、現場にゲーム機を持ち込んでエキストラの子どもたちとはしゃいでいた。「ちょっと自覚が足りないんじゃないか?」。仕事と遊びのメリハリ、オンとオフの切り替えについて叱られたことがあった。今でも、大事な教えになっている。

平日は母、土日は父が撮影の現場に来て、見守ってくれた。母は小学校で遅れをとってしまうことがないように、一緒になって勉強をしてくれた。両親は献身的なサポートで支えてくれた。「ダメなことはダメ」ということを教え込まれた。4きょうだいの長男として、弟と妹たちの面倒をしっかり見ることのできるお兄ちゃんに育った。

公私のことを何でも相談できるオープンな家庭

意外と言うか、やはりと言うか、反抗期はなかったという。「全くなかったと言うとちょっと違うかもしれませんが、筋が通らずにイライラを親にぶつけるようなことはなかったです。自分が納得しなかった時に、母に対してちょっと当たるみたいなことはありましたが、僕がいわゆる反抗みたいなことをすれば父が許さなかったと思います」。公私のことを何でも相談できるオープンな家庭で、深い絆で結ばれている。

中学生の頃から父に言われてきたことがある。それは人生観にも深くつながっている。「遊んだり楽しんだりする時間を作るために今頑張れ、ということです。『大事なのは今だけじゃない。30歳、40歳になってある程度自分でスケジュールを動かせるようになって、がむしゃらにやらなくてもお仕事をもらえる余裕が出てきた時、その場所に自分が立てた時に楽しめるように、そうなれるように今頑張れ』。このことをずっと言われてきました。ただ、今頑張り過ぎて、潰れてしまったら意味がないと思います。父は、学校も含めて今大事にしなきゃいけない時間を持つことも必要だということも教えてくれています。未来のために今があるし、今があるからその先がある。そう思いながらすべてのことに取り組んでいます」。真剣なまなざしで語る。

「一番頼れる存在。何かあったら相談する相手。今までも、これからも、お世話になるつもりです」。両親への感謝の思いにあふれている。

子役時代、国民的な大ブームを巻き起こした。子役出身の俳優・芦田愛菜と歌って踊った『マルモのおきて』のドラマ主題歌『マル・マル・モリ・モリ!』は大ヒットを記録し、勢いに乗ってNHK紅白歌合戦出場を果たした。

「あれがあったから今があると思っています。当時のどんな音楽ヒットチャートを見返しても、『マル・マル・モリ・モリ!』が上位に入っています。自分が思っている以上に、皆さんに見ていただいて、踊っていただいたのかなと。今も共演者の方々が『小学校や中学校の時に踊っていたよ』と言ってくださることが多く、すごかったんだなと実感します」

一方で、これまでに何度も「福君と言えば『マル・マル・モリ・モリ!』だよね」「あの小さかった福君が大人になったんだね」と言われてきた。子どもの頃のイメージありきで語られることは、子役出身者の宿命なのかもしれない。実際にどう捉えているのか。

「あの時の自分があって、今の自分があります。確かに子役のイメージが強いと言われることも多いです。そうした中で、今の僕の顔を見て『鈴木福』と分かってもらえるということは、今の僕のことも知っていただいているわけですよね。逆に言えば、その強いイメージというものを超えていかなきゃいけない。超えたい。そんな思いを感じることもあります」。率直な思いを明かした。

理想像も思い描く。「『この役を』と言っていただける役柄を精いっぱい頑張ること。こういう作品に出たいなということが実現した時に、200パーセントの力で頑張れるだけの準備を常にしておくこと。今の僕を見て応援してくれる人が1人でも増えれば。それに、僕より年下の皆さんは『マル・マル・モリ・モリ!』を知らない方もいっぱいいるわけなので、若い方にも応援されるように頑張りたいです」。

学業との両立「ただの大学生で終わりたくないな」

大学と仕事の両立はスケジュール管理が至難の業だ。多忙の中でも、できる限り勉学の時間を確保。周囲への感謝の思いを口にする。「時間管理はマネジャーさん、スタッフの皆さんの大変な調整があってこそです。みんなが僕のために動いてくれている。そう思うと、もっと頑張らないといけないですよね。お仕事をもらっている以上、その責任を果たさなければいけません。お仕事も大学も、100パーセント以上で取り組んでいきたいです」。

大学の学問や研究のアプローチから、芝居のレベルを高められそうな可能性もひしひしと感じている。

「撮影現場で学べることはたくさんありますが、別の方向から見てみるということに興味を持っています。大学に入って、何かと何かを結び付けて研究にする手法、その可能性についてすごく実感するようになりました。お芝居に関しては、まず哲学的なアプローチが挙げられます。それに、人から人への伝わり方を重視する研究があって、この学問的な視点からお芝居についてまとめることができるかもしれません。脳科学の分野から、(自分を客観視する)メタ認知の観点から研究する方法もあると思います。ちょっと考えただけでもこれだけ思い浮かびます。すでに確立されている学問とお芝居をかけ合わせることで、新しい可能性を見いだすことができそうですよね!」。文字通りに目を輝かせる。

いい意味の化学変化が起きそうな予感。新たな“鈴木福”の一面が生み出されるかもしれない。「大学でいろいろやりたいのですが、時間が足りないぐらいです。卒業まであと2年半。ただの大学生で終わりたくないな。そんな思いも持っています」。さらなる進化が楽しみだ。

□鈴木福(すずき・ふく)2004年6月17日、東京都生まれ。2006年に芸能界デビューし、ドラマ『マルモのおきて』など、子役として数々の作品に出演。幼少期からの夢だった仮面ライダーシリーズへの出演を、2022年に『仮面ライダーギーツ』で実現させた。今回の著書『鈴木福 フォトエッセイ 笑う門には福来る』では、特別企画として両親がメディア初登場。“親子対談”を通して、子育てや家族の秘話を明かしている。また、『妖怪人間ベム』(日本テレビ系)で共演して以来、尊敬してやまない俳優の亀梨和也が登場。“亀福コンビ”の貴重トークも収録している。

ヘアメイク:堀川知佳
スタイリスト:作山直紀吉原知也

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