【日本ハム】交流戦首位打者の水谷瞬 ソフトバンクファーム時代に培った「1打席を大切にする気持ち」

交流戦で大活躍した水谷瞬

【球界こぼれ話】彗星のごとく現れた日本ハム・水谷瞬外野手(23)の勢いが止まらない。

昨オフ、現役ドラフトでソフトバンクから加入。今春キャンプで新庄剛志監督(52)から「ソフトバンクからこっちに来てね。いろんな思いがあると思うから」と目をかけられ出場機会を与えられた。開幕こそ二軍スタートも4月上旬には一軍昇格。直後にファーム落ちしたが、交流戦前の5月下旬に再昇格を果たすとそこから一気に打棒が爆発した。

交流戦に限れば打撃成績は17試合で打率4割4分3厘、3本塁打、13打点。堂々の交流戦首位打者に輝き、15日の巨人戦まで15試合連続安打を記録するなど今やチームに欠かせない存在に成長しつつある。この活躍には球団関係者らも「まさかここまでやるとは」と驚くばかり。新庄監督も「打席の雰囲気がいい。(ボールの)見逃し方とかバットの出方もいいからね」と目を細める。本人もここにきて「自分の中でプランを持って打席に入っている。それが少しずつできている」。確かな手応えをつかんでいる。

ただ不思議なのは水谷のこれまでの「球歴」だ。今季がプロ6年目だが、これまで一軍出場は一度もなかった。古巣は二軍どころか三軍、四軍にも逸材が眠る球界随一の選手層を誇る。この影響で出場機会に恵まれなかったようだが、現在の覚醒はそれだけなのか。水谷本人に聞くと「確かに(ソフトバンクの戦力層は)厚いですけど僕はチャンスをいただいていた。でもそれを生かせられなかった」と言い、これまでの道のりをこう振り返る。

「ファーム(二軍)とはいえ僕も昨季は80何試合か(計83試合)に出場させてもらいました。でも打席数が限られるというか、僕みたいなタイプのバッターは試合序盤や最初の2打席で打たないと試合終盤で代打を出されてしまう。そういう悔しさがずっとあったので徐々に1打席1打席をより大事に集中するようになりました。それに試合に出られる感謝の気持ちというのも忘れずに。そういうのが今、少しずつ結果につながってきたのかもしれません」

毎年才能あふれる新人や助っ人が加入してくるプロ野球界。激しい競争社会で戦う選手にとって出場機会が限られるのは当然のこと。その中でわずかなチャンスを生かせるかどうかは本人の野球への向き合い方や時運が左右する。水谷は自身の野球への姿勢や思考でその運を引き寄せたのかもしれない。普段から話をすると水谷にはそう感じさせる雰囲気がある。
「僕の打撃にはまだ波があります。でも1打席を大切にする気持ちだけはずっと持ち続けていきたい」と謙虚に話す23歳。

15日の巨人戦での走塁で右ヒザ裏を負傷し、16日の同戦は大事を取ってスタメンから外れたが、延長12回には代打で登場。結果は空振り三振も、この気持ちがある限り梅雨の時期を迎えても水谷のバットが湿ることはない。

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