伝統野菜「畔藤キュウリ」無二の実り 収穫最盛期、出荷は川井さん(白鷹)のみ

収穫が最盛期を迎えている畔藤キュウリ=白鷹町畔藤

 白鷹町畔藤(くろふじ)の農業川井敬一さん(70)の畑で、置賜地域の伝統野菜「畔藤キュウリ」の収穫が最盛期を迎えた。かつては畔藤地区を中心に多くの農家が栽培していたが、今では出荷しているのが川井さん1軒だけとなり、自家採種で郷土の味を守り継いでいる。

 畔藤キュウリの発祥は、明治以前とされる。一般的な濃い緑色で白いいぼのキュウリとは異なり、淡い緑色で黒いいぼが特徴。昔ながらの風味と甘み、うまみがある。

 小さく収量性が高いキュウリが主流になり、市場から姿を消した。川井さんの父も栽培をやめたが、長年種の保存に努めてきた農業新野惣司さん(93)=同町広野=から託され、川井さんが20年ほど前に再開した。現在は約20坪の畑で500キロほどを栽培する。

 畔藤キュウリは生育が早く、川井さんは朝と夕の2回、収穫している。長さ30センチほどに育ったものを見極めて、一本一本丁寧にはさみで摘み取っていく。川井さんは「土地や栽培方法で味が変わり、手がかかる難しい野菜だが、先祖から受け継いだ種子を守り続けたい」と語った。収穫は今月いっぱい続く。

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