路面電車線路わきの肉屋さん、夜は「生ユッケ」が名物の立ち飲み店に 広島電鉄と歴史をともに創業98年

広島の路面電車、広島電鉄は100年を超す歴史があるが、その沿線に100年近く続く肉屋さんがある。夜は店頭が立ち飲み居酒屋となり、名物は「生ユッケ」だという。鉄道ファンの野川アナウンサーの「てつたま」、今回は立ち飲み編。

各駅周辺の魅力を伝えるポスターで沿線を盛り上げ

広島電鉄宮島線は2022年に開業100周年を迎え、今、沿線の街を盛り上げるキャンペーン中だ。まずやってきたのは宮島線の起点駅となる西広島駅。

野川諭生アナウンサー:
西広島駅は大きな屋根が、「トレインシェット」という、ヨーロッパの駅のようなイメージですよね。今回の広島電鉄のキャンペーンはどういう内容なんでしょうか?

広島電鉄 地域交流事業課 前田琢己 係長:
宮島線をテーマにしたポスター展で、一駅一カ所ずつ、その地域のありのままの魅力を伝えるポスターを各駅に張り出しています。簡単に言えば沿線を盛り上げようという取り組みです

このキャンペーンは「生活沿線・宮島線」と名打って西広島から宮島口まで21の駅周辺の魅力を伝えるポスターをつくり、日常的な風景のありのままの魅力をPRするもの。

肉屋さんの店頭が夜は立ち飲み居酒屋に

宮島線起点の西広島駅のポスターに選ばれたのが、大正15年、1926年創業の町のお肉屋さん、菊岡精肉店。

野川アナウンサー:
いい雰囲気のお店ですね。ただ、広島電鉄のポスターの写真と、ちょっとムードが違うような気がするんですけど。

菊岡精肉店 店主 廣瀬恭兵さん:
そうですね。昼間は肉屋なんですけど、午後6時から午後9時まで立ち飲み居酒屋になるんですよ。その時の雰囲気がポスターの写真になります。皆さん、肉のショーケース見ながら飲むというので驚かれますね

午後6時からの立ち飲み居酒屋は「菊岡精肉店 角打部」と名付けられている。「角打ち」とは、もともとは酒屋さんの店頭での立ち飲みのことだったが、今はいろいろな店での立ち飲みを指すようになった。ショーケースの上には角打ち居酒屋としてのメニューが並ぶ。

それにしても、夜の営業を始めたわけは…

菊岡精肉店 店主 廣瀬恭兵さん:
もともと、店は午後7時ごろまでの営業でしたが、仕事終わりに立ち寄りたいので、もうちょっと長く開けてほしいというお客さんの声があり、僕も酒好きなので、ちょっと立ち飲みを始めました。ビールサーバーをおいて、僕も飲めるようにしてから、お客さんをもっと待ってみようかと時間をのばしたら、うっかり有名になっちゃったという感じ

ご主人もお酒好きなところが、「角打部」の繁盛に繋がったようだ。

名物はとろける「生ユッケ」

野川アナウンサー:
おすすめの一品と言ったら、どんな物がありますか?
菊岡精肉店 店主 廣瀬恭兵さん:
うちは独自の自家工場で生肉の販売許可を厚生労働省からもらっていて、生ユッケが一番人気です。

その生ユッケをいただく前に、広島電鉄の前田係長に、この店をポスターに選んだ理由を聞いた。
野川アナウンサー:
この周辺でこちらのお店を選んだ理由というのはどのあたりなんですか?

広島電鉄 前田琢己 係長:
もちろん駅周辺には、美味しいお店とか、居酒屋さんがたくさんありますが、昼はお肉屋さんで、夜は角打ちという、サッと飲めるスタイルって意外とあるようでないかなと思ったんです。この外から見た時の外観も含めて、町の風景に溶け込んでいるところにすごい魅力を感じて、もうここだってビビッときた感じです

ここで、お待ちかねの名物「生ユッケ」が来た。卵黄を生肉と絡ませれば、とろっとジューシーな感じに。

野川アナウンサー:
それでは頂きます。おいしい。最初はしっかり噛み応えがあって旨味が出てくるんですけど、だんだんスーッと消えていくんですよね。これ不思議だなと思いました。これは人気なんじゃないですか?

菊岡精肉店 店主 廣瀬恭兵さん:
結構人気ですね。今は一番人気かもしれない。

メニューに「消える魔球」も

野川アナウンサー:
ずっと気になってるんですけど、メニューに「消える魔球」というのがありますが…

菊岡精肉店 店主 廣瀬恭兵さん:
消える魔球は、肉を叩いて、たたきにして、ネギトロみたいにするんです。それをお寿司にして、食べると口の中で消えて無くなるので、「消える魔球」と呼んでます
野川アナウンサー:
生ユッケも消えましたよ
菊岡精肉店 店主 廣瀬恭兵さん:
じゃあ「消えるユッケ」にしましょうか?

広島電鉄、宮島線が開業したのは、1922年(大正11年)。その4年後に菊岡精肉店が開店した。創業からまもなく98年。広島電鉄とほぼ同じ歴史を歩んできたことになる。

野川アナウンサー:
どうですか?98年やって来られて、この歴史の転換点みたいなところにいるっていう感じは?
菊岡精肉店 廣瀬恭兵さん:
僕は代変わりしてから8年しかいないんで、歴史に、のっかっちゃってる形ですけど、その分この街にお返しをしたいので、98、99、100周年はイベントをしながら、お客さんに還元したいなと思っているので、ぜひ期待してください

野川アナウンサー:
これからもずっと広島電鉄の宮島線とともに、このお店も進んでいくんだと思いますけど。改めて宮島線はお店にとって、あるいはご主人にとってどんな存在ですか?
菊岡精肉店 廣瀬恭兵さん:
僕はここに住んでいるので、宮島線の音は、子守唄のようです。初めは寝られなかったんですけど、今は子守唄のように、カンカンという電車の音、踏切の音で心地よく寝られるようになった。ずっと一緒に生きて来たので、僕もこれからもずっと共に一緒に生きて行きたいと思っています。

(テレビ新広島)

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