『光る君へ』佐々木蔵之介の“器の大きさ”が安らぎに 宣孝がまひろの夫となるのも納得

吉高由里子主演の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。公式サイト内には出演者の撮影現場からのコメントが聞けるキャストインタビュー動画「君かたり」が公開されている。第24回「忘れえぬ人」の放送後には、まひろ役の吉高由里子、宣孝役の佐々木蔵之介が登場した。

第24回で、まひろは宣孝から求婚され、さらには周明(松下洸平)からも一緒に宋へ行こうと誘われるが、まひろの心の内には“忘れえぬ人”がいた。しかし物語の終わり、「早く都へ帰ってまいれ」という宣孝の文を受け取ったまひろは、鷹揚な宣孝の姿を思い浮かべたのかおかしそうに笑った。この心の変化には、周明が朝廷に宋との交易を認めさせるためまひろを利用しようとした一件も影響していると思う。だが、物語冒頭に宣孝が言った「ありのままのお前を丸ごと引き受ける」という言葉が、まひろの心を捉えたのだとも思う。

宣孝を演じている佐々木は、宣孝はまひろへの想いを伝えるために越前に来たのではない、と考えている。続けて佐々木は、まひろに求婚した宣孝の心の動きについて、「越前に来て、ある光景を見て、そしてそのときに為時さんもいなくて2人になってしまって」「久しぶりに会ったまひろに対して、話しながら、食事をしながら、琵琶を聴きながら心が動いていったという感じですかね」とコメントしている。

これまでの回でも、まひろのために唐物の紅を買って帰ったり、いと(信川清順)が指摘したようにまひろから叱られるのを喜んだり、まひろを気にかける様子は度々見られていたが、確かに、はっきりとした恋愛感情というよりは親愛の情と恋愛感情の間といった感じに見えた。宣孝は元々、まひろに実資(秋山竜次)を薦めたり、為時(岸谷五朗)から「宣孝殿の息子はどうだ」と言われて拒否したりと、心情的にも立ち位置的にも自らがまひろに求婚するとは思ってもみなかったはずだ。

佐々木は、宣孝のまひろに対する胸の内について「実際、離れて会わなくなると、今までは意識していなかったものが、なんだろうこの、喪失感とは言わないですけど、『なんだろうこれ』っていうのは思っていたのかもしれない」と語った。越前に来て、まひろの自由な発想に触れた宣孝は、第23回でこんな印象的な言葉を残している。

「会う度に、お前はわしを驚かせる」
「お前と会うと違う世界がかいま見える。新たな望みが見える。未来が見える」

宣孝がまひろに「わしの妻になれ」と口にするまでのやりとりについて、佐々木は「心がゴロゴロゴロっと動いていったというふうに、自分はあの会話の中でドラマが起こっていったというふうに思っています」と語った。

為時は、まひろが宣孝の妻になることに難色を示したものの、まひろは、ありのままの自分を引き受けてくれると言った宣孝となら穏やかに暮らせると感じていた。まひろが宣孝の妻になることに前向きになれるのは、旧知の仲ということもあると思うが、胸の内にある道長への思いを無理やり消し去ることなく、ともに生きられる相手というのが大きい。

宣孝を演じている佐々木のおおらかな口ぶりや朗らかな笑顔によって、宣孝の寛大さが伝わってくる。調子がいいことを言う宣孝にまひろが怒るといった場面が今後多くなる気もするが、そんな宣孝といることでまひろの心は安らぎを得られるはずだ。

(文=片山香帆)

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