人手不足 苦境強まる小売業

「時給は限りなく2千円に近づくだろう」。関西に本社を置く外食チェーンの社長は「大きな懸念材料になる」と、来年の万博で人件費の高騰が進むのを危惧する。賃金を上げなければ人が集まらないのは小売業も同じ。対策として飲食店ではスマホやタブレットによる注文、スーパーではセルフレジの導入といった効率化を進めている。

▼ある小売業の決算会見で、人件費が減少していたので聞いてみた。「省人化が浸透した効果ですか?」。幹部は「『そうです』と言いたいところだけど…」と前置きした上で、「本当に人がいないんです」と途方に暮れる。単純に人が減った結果に過ぎなかった。

▼スーパーでは、正月3が日の営業を休む店が徐々に増えてきた。生協の宅配事業でも、お盆前後の1週間を休業とする動きが広がってきている。当然、その間の売上高や供給高は減少するが、それ以上に従業員が働きやすい環境づくりを優先させなければならない。優先事項はもう一つある。小売業の幹部は続ける。「新たに採用するよりも、今働いている人が辞めないようにすることの方が重要なのです」と。

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