「守備の安定性を提供」「欠けていた人材」バイエルン加入の伊藤洋輝の有用性を独メディアが指摘! フランス代表の名手と同じキャリアを辿る可能性も示唆

シュツットガルトから名門バイエルンへの移籍を果たした伊藤洋輝。25歳の日本代表DFは、2028年までの4年契約を結び、移籍金は、契約解除金として設定されていた3000万ユーロ(約50億円)が支払われるという。

2021年に加入したシュツットガルトでは、2シーズンは下位に終わるも、昨季はブンデスリーガ2位と大躍進を遂げ、その中で伊藤も最終ラインでCB、左SBと複数のポジションをこなしながら、これに貢献。その去就には様々な憶測が流れたものの、3位に沈んで12連覇を阻まれるとともに10年ぶりに無冠に終わったバイエルンが、ヴァンサン・コンパニ新監督の最初の補強として、この日本人選手に白羽の矢を立てた。

大きなステップアップを遂げ、「世界最大のクラブのひとつでプレーできることを大変光栄に思います」と声明を出した伊藤について、バイエルンのクリストフ・フロイントSDは「ヒロキはシュツットガルトで信頼性を体現し、トップレベルでのパフォーマンスを継続した。背が高く、攻撃的で、強力な左足、優れたパス能力を持ち、中央と左サイドの両方でプレーできるため、守備においても万能だ。若くしてドイツに到来し、非常に成長しているが、さらなる可能性を秘めていると我々は確信している」と賛辞を贈り、覇権奪回への貢献に期待を寄せている。
シュツットガルトの歴史において、バイエルン移籍の際に3500万ユーロ(約59億円)が動いたバンジャマン・パバールに次ぐ3000万ユーロの移籍金は、元ドイツ代表FWマリオ・ゴメスに支払ったのと同額ということで、その価値の高さが示された伊藤。移籍専門サイト『TransferMarkt』は、3年前にジュビロ磐田からわずか50万ユーロ(約8400万円)で獲得したシュツットガルトを、「安価な投資額で、その何倍もの利益を生み出した」と伝えた。

このような大金を費やしてまでバイエルンが獲得した日本代表選手について、ドイツの放送局『Sport1』は、「昨季の彼のパフォーマンスは驚きだったが、同様にバイエルンへの移籍も驚きに満ちていた」と伝えるとともに、「彼はバイエルンが求めている守備の安定性を提供するはずである」と期待を込め、さらに以下のように続けている。

「伊藤のプロフィールは魅力的だ。188センチの高身長、正確なスキル、そして高精度のロングパスも特長のひとつ。なお彼は、バイエルンでは珍しい左利きでもある。そのプレーは際立ち、昨季はバイエルンのどのCBよりも多くのシュートチャンスを作り、また自らも多くのシュートを放った。そしてもちろん、彼の得意とするサイドチェンジのパスの多さも、統計に表われている。さらに、イエローカードわずか1枚と、フェアな選手としても際立っている。毎試合16回以上のスプリントを記録し、これはブンデスリーガのDFでは2番目に多い数字だった」「彼のプレースタイルは非常にユニークだ。技術的に優れ、プレーメイクにも長けたCBであり、スピーディーで守備力もあり、身長が高く、ヘディングも強い」というシュツットガルトのセバスティアン・ヘーネス監督による評価を紹介した同メディアは、左SBでもプレーできる有用性を強調する一方で、彼の“弱点”も挙げた。

「ただし、フィジカルの強さではまだ、バイエルンのレベルには達していない。対人戦勝率は54%と、ダヨ・ウパメカノやマタイス・デ・リフトには大きく遅れをとっている。パス成功率90%はブンデスリーガの中では優れた数字だが、バイエルンのスター選手たちと比べると際立ったものではない」

そして、「失敗に終わった宇佐美貴史と才能ある福井太智に続いて、伊藤はバイエルンにとっての3人目の日本人選手となる。彼がこの2人よりも良い結果を残せるかどうかは、EURO2024の後の時間が教えてくれるだろう」と綴って記事を締めている。
一方、ドイツのスポーツ専門サイト『SPOX』は、伊藤を優れたビルドアッププレーヤーであり、プレッシャーの下でも良い判断を下せる選手だと評価し、「これまでのバイエルンに欠けていた人材」だと指摘。そして、彼がパバールのようなキャリアを辿る可能性があるとも示唆した。

「パバールも同じような金額でシュツットガルトから加入し、最初は批判的に見られていたが、その後、このフランス人選手はチームの最も重要な選手のひとりとなった。彼はどのレベルでも安定してプレーし、ミスが少なく、バイエルンに安定感を与えた。彼の(昨夏のインテルへの)移籍はチームに空白を生じさせたが、今後は伊藤がそれを埋めるかもしれない。最低でも信頼できるバックアップとして、チームの戦力の幅を広げるだろう」

同メディアは、25歳の伊藤と、昨季はレバークーゼンで活躍した28歳のドイツ代表DFで、バイエルン入りが確実視されるヨナタン・ターという2人のCBの補強について、「マックス・エーベルSDが示唆したチームの若返りの方針に反する」とやや疑問も呈してはいるが、まだ伸びしろがあると期待される伊藤が、ブンデスリーガ優勝33回、CL優勝6回を誇る超名門クラブでここからどれだけ価値を上げられるかが非常に興味深く、また楽しみでもある。

構成●THE DIGEST編集部

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