「教職をブラックと呼ばないで」現役教師やOB・OGが語る学校のリアル

教職員の「なり手不足」が深刻化している。背景には長時間労働や精神的な負担などがあるとされているが、そんな中、衝撃的なタイトルの本が出版された。そこには現役教師やOB・OGが語る学校のリアルが綴られていた。

現役教師が語る学校現場

長崎市立高尾小学校の馬場奏子先生。教師になって30年のベテランで2024年4月からは5年生の担任を受け持っている。児童からは「優しい」「相談にいつも乗ってくれる」と厚い信頼を集める先生だが、様々な特性を持つ子供たちに対応した授業づくりやトラブルの対応、保護者への対応などに追われ、負担を感じることもあるという。

長崎市立高尾小学校・馬場奏子先生:
表に出せない部分もたくさんあるし、日々子供たちも色々変わってきていて、現実的には色んな仕事がたくさん増えているところがある。

2024年に出版された『教職をブラックと呼ばないで』の中で、馬場先生は胸の内を明かしている。

『働き改革が叫ばれて、ずいぶんと持ち帰ってする仕事量は減りましたが、やはり、長時間労働には間違いはないと思います。(中略)教職ってかなりの「ブラック」な仕事だなあと思ってしまいます。』 (「教職をブラックと呼ばないで~学校現場からのお願い~」馬場奏子先生の手記より)

学校を魅力ある場所にするために

教師の働き方を見直し、仕事のやりがいを発信しようと、長崎県教育委員会は2023年度「教職の魅力化作戦会議」を立ち上げた。

長崎県教育庁・山下健哲室長:
やはり教師が生き生きとしていないと将来の教師を目指す者にも影響が出てくるのではないかと危惧をしている。見直しができる業務は見直しながら生み出された時間で子供たちと向き合っていただく。

会議では教師の仕事をサポートする支援員など、スタッフ配置の拡充などを柱とした提言案について話し合いを重ねている。

一般財団法人松尾財団・松尾由佳委員:
本当に先生が大変なことは間違いなくて。子供たちのためにやりたくても先生が自殺しちゃったり先生が辞めちゃったりという現状を見ている中で、どうしたら何か改善できるか。

十八親和銀行 常務執行役員・艶島博委員:
(提言案は)第一人者が誰なんだろうとちょっと不安に思いました。これで(社会に)通じるのかなと。

長崎大学教育学部 教授・木村邦弘座長:
やはり学校教育の充実というのは、ど真ん中に子供がいますので、そこを大事にしないと県民の理解を得られない。

子供たちにとっても働く大人にとっても学校を魅力ある場所にするためにはどうすればいいのか。

“教職”に感じる学生のホンネ

長崎県教育委員会の担当者は2024年5月長崎大学を訪れ、教師を目指す学生たちに仕事に対するイメージを尋ねた。

教育学部の学生からは「子供たちの初めてに携われたり、できないことができるようになる瞬間に一番携われる職業じゃないかなと思っているので魅力的に感じている」「(先輩から)朝早く行って夜遅くまでやるのが多いみたいな話を聞くのがあって、残業が多いのかと」「ブラックなのかそうでないのかまだ分からなくてまだ不安がある状態」「どんどん色んな改善をしていって、これからはよくなることしかないと知り合いから言われているので希望を持っている」といった声が聞かれた。

学生たちも気になっている「勤務時間」。

文部科学省が2022年度に行った実態調査で、教師のひと月あたりの平均残業時間は小学校で41時間、中学校で58時間だった。様々な特性を持った子供たちもいて、一人一人に目を配ることが難しいこともある。

大変な中でも得られるもの

馬場先生はそんなとき授業の支援に入る「サポーター役の先生」がいると、子供と向き合う時間が増えると考えている。

『子どもたちとの出会い」は教職の大きな魅力です。純粋な心をもった子どもたちと接し、大人の発想では思いつかないことに触れ、心が豊かになります。(中略)教育は人間と人間が接する場であるからこそ、大変な面もありますが、喜びも大きなものがあります』(「教職をブラックと呼ばないで~学校現場からのお願い~」馬場奏子先生の手記より)

長崎市立高尾小学校・馬場奏子先生:
「きょう楽しかったよ」とか「きょうの勉強分かったよ」とか子供たちのその言葉でやりがいというか、きょうも1日頑張れてよかったとかいうところが教職の仕事って大きいところがあるかなと思う。

子供たちの成長を目のあたりにできる教職に多くの若者についてほしい。そう願う現場教師やOB・OGのメッセージが込められた本『教職をブラックと呼ばないで』。長年長崎大学で教師を志す学生の指導に当たり、この本を企画・自費出版した橋本健夫さんは編集後記で「教職を、華やかなゴールドではないが、読後にいぶし銀ともいえる深く力強いシルバーを思い浮かべた」と記している。

先生が明るく生き生きと輝き子供たちが健やかに育つ環境を整えるためにも社会が教育現場の声に耳を傾けることが必要だといえそうだ。『教職をブラックと呼ばないで』(長崎県内の書店で販売 1部1900円(税別))

(テレビ長崎)

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