中国首相、オーストラリアにパンダ2頭を送ると表明 関係改善の動き

中国の李強首相は16日、オーストラリアのアデレード動物園を訪れ、パンダ2頭を同国に送ると申し出た。両国の関係は近年、冷え込んでおり、改善に向けた動きとみられている。

李氏は4日間の日程でオーストラリアを訪問している。中国指導者の訪豪は7年ぶり。両国とも、貿易や外交の問題に対処するうえで重要なものと位置付けている。

アデレード動物園には現在、「網網(ワンワン)」と「福妮(フーニー)」の2頭のパンダがいる。

李氏はこの日、それら2頭は年内に中国に戻るが、「同じように美しく、活発で、かわいらしく、若いパンダのペアを、中国が近いうちにアデレード・パーク(動物園)に提供する」と約束。「中豪関係の友好の使者」だと説明した。

パンダを外交上の贈り物として送る中国の「パンダ外交」は、唐王朝(618~907年)までさかのぼる。

李氏はアデレードに到着した15日、両国の外交関係に雪解けがみられるとし、「相互尊重、相違点を棚上げにしての共通点の模索、互恵的な協力」が両国関係の鍵だと述べた。

中国とオーストラリアの関係

中国は南太平洋における影響力の強化を図っている。その一環として、歴史的にオーストラリアと関係が深い島国と、安全保障や経済での結びつきを強めている。

そのことが、両国間に長年にわたって緊張を生んできた。2020年にはオーストラリアのスコット・モリソン首相(当時)が、新型コロナウイルスの発生源を解明するための国際調査を中国で実施するよう求め、両国関係は大きく悪化した。

中国はこの要求に対し、オーストラリア産ワインなどに高い関税を課すことで応酬した。

オーストラリアは今回、李氏をワイン醸造所にも案内した。中国が最近、ワインに対する関税を撤廃したことを意識したとみられる動きだった。

オーストラリアで2022年に労働党が政権を握って以来、豪中関係は改善がうかがえるが、相違点も残っている。貿易障壁の撤廃や、2019年に中国・広州の空港で拘束された豪民主化ブロガー、ヤン・ヘンジュン(楊恒均)氏の釈放をめぐる問題などだ。

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、17日にキャンベラで李氏と会談する際、ヤン氏の件を持ち出すとみられている。ヤン氏は2月にスパイ罪で執行猶予付きの死刑判決を受けている。

ヤン氏の支持者らは16日、中国の高裁が下級審の判決を見直したものの、支持する決定を出したとする声明を発表。「私たちの最も差し迫った懸念は、ヤンの病状が深刻なまま対応されていないことだ。(中略)アルバニージー首相には、李強首相との会談で直接、ヤンの健康上の理由での仮釈放を要求するよう求める」とした。

(英語記事 Beijing offers pandas as ties with Australia thaw

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