【J2「後半戦開幕」】仙台、MF郷家のダイビングヘッド同点弾からドラマはATに 壮絶な撃ち合い…森山監督「残念過ぎて悔し過ぎます」(2)

ストライカーのようなダイビングヘッドを決めた郷家友太  撮影/中地拓也

■4位・仙台は2位・長崎と6ポイントマッチ

後半戦のスタートは、いきなりの大一番となった。

J2リーグ第20節が6月15、16日に行なわれ、4位のベガルタ仙台は16日、2位のV・ファーレン長崎をホームに迎えた。両チームの勝点は仙台が「33」に対して長崎は「39」だ。しかも、ルヴァンカップで勝ち上がった関係で、長崎は消化試合数がひとつ少ない。仙台にとっては絶対に負けられない6ポイントマッチである。

森山佳郎監督が指揮する仙台は、前節と同じスタメンで臨んだ。相手のポゼッション時はミドルゾーンで構え、ブロックの外側へボールを誘導していく。

試合の入りは悪くなかっただろう。しかし15分、長崎に先行される。MFマルコス・ギリェルメに左サイドを破られ、中央へのクロスがペナルティエリア内でCB小出悠太の手に当たってしまう。ハンドによるPKを、FWエジガル・ジュニオに決められた。

追いかける仙台は、MFオナイウ情滋が対面する左SBの背中を狙う。長崎の両SBが攻撃時に高い位置を取るため、守から攻への切り替わりでオナイウを走らせる狙いを共有していた。しかし、「個」が質的優位を発揮しながらコンビネーションも使ってくる相手に、自陣に押し止められる時間が続く。マルコス・ギリェルメの縦突破に、前半の仙台は大いに悩まされた。

長崎がFWから規制をかけてくることで、攻撃も糸口をつかめない。前半のチャンスは29分、小出の縦パスをFW中島元彦がワンタッチで落とし、右SB真瀬拓海が引き取ってペナルティエリア内からシュートへ持ち込もうとする。しかし、相手CBにブロックされた。

■アディショナルタイムにドラマが…

前半の仙台は最前線から規制をかけなかったため、長崎の左CB田中隼人、アンカーの秋野央樹がフリーになることが多かった。彼らにボールを動かされることで、インサイドハーフの加藤大とマテウス・ジェズスをつかまえきれない、という状況が生まれていた。

後半は前線からのプレスも織り交ぜ、攻守にパワーを注いでいく。そして55分、ユアテックスタジアム仙台が沸き上がる。

相手の縦パスを小出がカットし、MF長澤和輝がすかさず右サイドへ展開する。パスを受けたオナイウは抜き切らずにクロスを入れると、MF郷家友太がダイビングヘッドで合わせたのだった。

追いついた仙台は、その後も好機を作り出す。長崎にもゴールに迫られるが、追加点の予感を漂わせたまま終盤へ向かっていく。

ドラマはアディショナルタイムに訪れる。90+2分、GK林彰洋のロングフィードからアタッキングサードへ侵入し、MF有田恵人が右サイドからクロスを入れる。FW中山仁斗が薄くフリックし、MF松下佳貴が左足でプッシュした。途中出場の3人が、土壇場で大きな仕事をやってのけた。松下は21年6月の清水エスパルス戦以来、実に3年ぶりのゴールである。

ところが、試合はまだ終わらないのだ。90+5分、長崎がFKをきっかけにゴールへ押し寄せてくる。仙台も一度は跳ね返したが、途中出場のFWフアンマ・デルガドにヘディングシュートを決められてしまうのだ。その直後、試合終了の笛が鳴り響いた。

試合後のフラッシュインタビューで森山監督は、「ホントに勝利に値するゲームだった。残念過ぎて悔し過ぎます」と話した。

勝点3を逃したゲームと言っていいが、試合内容は今後につながる。次節はモンテディオ山形との「みちのくダービー」だ。中位で喘ぐライバルを叩くことで、勢いをつかむことができるはずだ。

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