オリックス 山下舜平大が変わり身を示せた裏側には何があった?心技体の充実に復活の兆しを見る

先発し力投するオリックス・山下舜平大=京セラドーム大阪=16日

 オリックス・山下舜平大投手(21)が1軍の舞台に帰ってきた。6月16日・ヤクルト戦(京セラ)で登板し、5回無安打1失点、9奪三振。自身316日ぶりの白星をつかむことはできなかったが、復活の兆しを感じさせる投球内容だった。

 初回は四球や自身の暴投なども絡み、無安打で失点したが、二回以降は修正できた。なぜ、立て直すことができたのか。まず、大きなテーマとなったのは「脱力」だ。 

 立ち上がりは久々の1軍マウンドへの緊張感などから、自然と力みが生じていたという。自己最速タイの160キロを投じるなど、力強い直球を投じていたが、体のズレを実感し、「力を抜いて」投げる意識に変えた。

 「球速も結構落ちるかなと思ったんですけど、あまり変わらず本来の良い時のイメージのまま投げきれたかなと思います」。脱力しても150キロ超の直球を維持し、春先から試行錯誤を重ねてきたフォークも制球良く決まり出す。これが快投を支えた要因ともなった。

 村上や山田にもフォークで空振り三振に仕留め、特に五回に山田を三振に仕留めた同変化球はストライクゾーンから抜群の落差で落ち、まさに完璧な1球だった。山下も手応えを深めていた。

 「全体的にボールのラインが出ていれば、全部勝負はできるかなと思っていたので。ラインは出ていたので、良かったのかなと思います。三振も多かったですし、より真っすぐ、カーブは途中、生きていたんじゃないかなと思います」

 今季初先発となった4月3日・西武戦では、5回0/3を投げ2安打2失点でまさかの8四死球と大荒れだった。その際に「課題は何が原因か今すぐにちょっと分からない。気持ちの面でちょっと乱れがあったり…」と完全に自信喪失する姿があった。「いい時のイメージがなかなかしっくり来なくて」と感覚を取り戻せなかったそうだ。心技体に狂いが生じていたことは間違いない。

 今回のマウンドでも初回に荒れかけたが、自分の中で瞬時に原因を把握し「力みだったりに気づけて、試合の中ですぐにピッチング自体を変えられたというのが良かった」。心を整え、身体を理解し、己の技術を信じて勝負する。マウンドで考える余裕が生まれたことが、一つ大きな成長だ。

 今年は105キロ前後に体重を増やし、パワーアップも実感している。出力的には去年以上の感覚があるだけに「いい球を投げていって、スピードも後からついくればいいんじゃないかな」と考える。「球のライン、キレだったりをイメージして。スピードは後から考えたい」。キャッチボールやブルペンではトップの位置を作ってから投げる調整を意識しており、「一番、腕の振りやすいところで投げる」再現性を高めている段階だ。

 今の山下は言葉からも自信が漂う。「もちろん自分に期待しています」。現在、チームは5位。全く優勝の可能性を諦めていない。「まだ優勝も狙えると思う。そこに貢献したいです」。昨季の新人王右腕が、輝きを取り戻す日は近いはずだ。(デイリースポーツ・関谷文哉)

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