すかいらーく系列「とんから亭」で“鶏の生肉”を提供、運営元が謝罪「健康被害の報告は受けていない」

とんから亭の鶏つけ汁蕎麦(公式HPより)

飲食店でつけそばを注文した客が、具として入っていた鶏肉が生のままで提供されたとして、画像付きでXに投稿し波紋を呼んでいる。

投稿者によると、この飲食店はすかいらーくグループのとんかつ・からあげ店「とんから亭」。提供時の様子について、「誰がどうみても生。メニューの写真と明らかに、違う。 一切れ食って異変…に気付き。明らかに生で食っていい用の、鶏肉じゃない」とつづっていた。

翌日の投稿でも、「オープンしたばっかなのに、あれは信用なくすわ。こっちから、言わなきゃ向こう(店側)はスルーしてたんだろーな。怒りが収まらん」と振り返っていた。

●運営のすかいらーくは謝罪「健康被害の報告は受けていない」

とんから亭を運営する「すかいらーくホールディングス」広報室は6月17日、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、鶏の生肉提供が事実であるとし、「この度は、大変なご心配とご不快な思いをおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」とコメントした。

同社は同日、ホームページ上で「『鶏つけ汁蕎麦』の鶏肉ご提供に関するお詫び」を公表。「とんから亭札幌白石本通店」(北海道札幌市)で6月14日、「鶏肉の加熱状態を確認できていないままご提供した」としている。

「商品をご提供したお客様を含め健康被害の報告は受けておりません」とし、管轄保健所には既に報告したという。

生肉の提供については「厳粛かつ重大に受け止めている」とし、今後について「調理オペレーションの改善と、調理マニュアルの再徹底を行い、再発防止に努めてまいります」としている。

●体調不良などの事態生じれば「業務上過失致傷罪」の可能性も

客とのやり取りなどについての詳細は不明だが、今回のようなケースで、注文した品の代金はどうなるのだろうか。

西口竜司弁護士は、「ちゃんと加熱した鶏肉が入ったそばを提供しなければ、債務不履行(民法415条)に当たりうる」と説明する。

「ただし、客側からすれば、生の鶏肉が入ったそばなんて『もういらない』となることも多いでしょう。客はそば提供に関する契約を解除することが可能です。解除すれば代金を払う必要はないですし、すでに代金を払っている場合は返金してもらうことも可能になります」(西口弁護士)

代金のほかにも、「駐車場代などが発生している場合には損害として請求可能」だという。

鶏の生肉を提供したということだけでは、「直ちに刑事上の責任が発生するわけではない」(西口弁護士)。ただし、食べてしまったことで体調不良になった場合等は「業務上過失致傷罪(刑法211条)」が問題になりうるという。

「今回のケースのように、仕事で調理したそばを提供する行為は『業務』に当たりますので、同罪が成立する可能性があります。仮に有罪となれば、5年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金となります」(西口弁護士)

法的な責任だけではない。西口弁護士は、「SNSでの拡散や報道などによって、多くの利用者は見放されてしまうおそれがあることは、店側にとって大きな問題だろう」と指摘する。

「気温が上がり、湿度も高くなる梅雨の時期は、食中毒が発生しやすいです。飲食店は食の安全に万全を期してもらうとともに、消費者も十分に注意してほしいです」(西口弁護士)

【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/

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