「くるり〜誰が私と恋をした?〜」最終回【プロデューサーインタビュー】「記憶喪失を通しての自分探しの答えを描きました」

TBS系で放送中の火曜ドラマ「くるり〜誰が私と恋をした?〜」が明日、最終回を迎える。ある事故で自分の名前をはじめ、自分にまつわるすべての記憶をなくした緒方まこと(生見愛瑠)が、手元に残された一つの男性用の指輪をめぐって、“恋の相手”と“本当の自分”を探すラブコメミステリーだ。

記憶喪失になったことで、まことの世界はくるりと一変。かばんの中には見覚えのない男性用の指輪が入っていたが、誰に贈るつもりだったのか思い出せない。そんなまことの前に、自称・元カレの西公太郎(瀬戸康史)と、自称・唯一の男友達の朝日結生(神尾楓珠)、自称・運命の相手の板垣律(宮世琉弥)の3人の男性が現れ、恋の四角関係が幕を開ける。

本作を手掛けるのは、八木亜未プロデューサー。今回は、作品に込めた思いをはじめ、最終回の見どころなどを伺った。

――まずは、本作を作る上で大切にしたことを教えてください。

「記憶喪失という内容は、重く描けてしまう題材ではありますが、火曜ドラマらしく見て元気になってもらえるような主人公であるべきだと思っていたので、くよくよせずに自分なりに歩み出していくさまを大切にして作っていこうと考えていました。まことは、第9話で“くるり”と悩みモードに入らざるを得ない展開ですが、そこから主人公が見つけ出す答えや、進み方を大事にしながら作りました」

――“火曜ドラマ”は胸キュン要素がある枠ですが、今までと違うところや、意識したところもお聞かせください。

「このドラマは、胸キュン要素が記憶に結び付いていて、キュンからミステリーの展開が直結してるんです。キュンの余談を感じられないという、今までとは違った視点でその振り幅がどう見えるのか? という不安はありましたが、演者の皆さんも新しいものを一体となって作っていこうと面白がってやってくださっていたので、チャレンジしてみてよかったです」

――考察も飛び交っていますが、反響は意識されていますか?

「内容が“くるり”する瞬間や、意味深に感じてほしいなと思っているシーンは、オンエアの最中にSNSで反響を見ています。どうリアクションしてくれているのか、その反応を見て、こうしてもいいんだと気付きがあったり。リアルタイムで素直なリアクションが見れるので、参考にさせていただいています」

――その反響を見て、意外だったり、取り入れたシーンなどはありますか?

「男性3人をまことの恋の相手として見せる一方で、まことをつけていた人の可能性ももたせなくてはいけなかったので、ラブで見せたいのに怪しまれていないか…結構参考にさせてもらいました。一番最初に嘘を告白する第8話の朝日の時は、どういう反応になるか心配していましたが、みんな朝日を応援して愛してくださっていたので安心しました」

――男性の反応で印象的だったことはとありますか。

「今回、私の周りで『面白いです!』とわざわざ連絡くれる方は、男性の方が多く、ミステリー要素を入れたから、そういうリアクションをくださったのかなと。火曜ドラマはラブコメ枠ですが、いつもと違う層にも響いていて、そこも面白いなと実感しています」

――クライマックスを描いていく中で、こだわった部分や難しかった部分はありましたか?

「どういう流れにしたらまことに共感してもらえるかをすごく悩みながら作りました。ただ、公太郎とキスをして律を思い出すシーンや、全部記憶は戻ったけど、覚えていないもところもあるというのは、最初から決めていたので、そこをどう見せていくのかに重きを置いて、台本を作りました。最後、皆さんが『なるほど!』と納得してもらいたいと思って作りましたので、最終回も楽しみにしていただけたらうれしいです」

会って受けた印象と、テレビで見る印象を全部混ぜて脚本をつくりました

――あらためて、主人公のまこと役に生見さんを起用した理由を教えてください。

「生見さんの演技力は、ほかのドラマで活躍されているのを見ていて、バラエティで見る明るさと、女優としてお芝居している生見さんの差にとても魅力を感じていました。なので、記憶喪失だけど明るく、3人の男性に言い寄られても嫌味なく見られるところで、生見さんがぴったりだなと思いオファーさせていただきました」

――実際ご一緒されてみて、生見さんの魅力を感じた部分はありますか?

「とても自然体のお芝居ができる方で、感情移入しやすいところが彼女の魅力かなと思っています。お話をしている時はもちろん、撮影でモニターを見ていても、思わずかわいいと言ってしまうぐらい、とにかくかわいいです」

――また、演技を見て、いいなと思った瞬間はありましたか?

「台本は、こういうお芝居してくれるだろうなと想像しながら書いていますが、そこをさらっと超えて、深いお芝居をしてくださいます。普段は、明るくケラケラ笑っていますが、本番になるとこちらの意図もしっかり理解して演じてくださるので、安心感があります」

――瀬戸さん、神尾さん、宮世さんの男性陣のキャスティング理由も教えていただけると嬉しいです。

「男性陣は、3人違うタイプというが大前提である中で、新鮮な組み合わせになる方々に出てほしく、ベビーフェイスで大人の色気がある瀬戸さん。近年、影のある役が多い印象の神尾さんには、視聴者の皆さんが信じてしまうぐらい良い人の役で、いつもと違う神尾さんを見せたいというのがありました。宮世さん演じる律は、最初は少ししか出ないですが、最後は物語の大きな役割を担っているので、訴求力のある方にお願いしたいなと思っていました。キャラクター性は、実際にご本人とお会いして受けた印象と、テレビで見ていた印象などを全部混ぜて、脚本家とも話し合いながら作っていきました」

――丸山さん演じる平野香絵は、ドラマの中で“中和剤”と言いますか、皆の気持ちを代弁してくれているシーンも多いです。丸山さんを起用したきっかけもお聞かせください。

「丸山さんも最近、女優業を精力的に頑張っていらっしゃる印象があり、狙って面白くしていくというよりかは、自然にコメディを邪魔しないように演じてくださるので、とても頼もしかったです。最初、香絵の役は、あそこまで役回りは大きくなかったんです。ですが、まこととの掛け合いを見ていて、視聴者の方にも物語の整理をしていく必要があると思い、香絵さんにその役を担っていただきました。一度内容を整理するシーンを入れることで、見やすくなっていったので、丸山さんに実際に演じてもらうにつれて、どんどん増やしていきました」

女性スタッフでシミュレーションしながら完成させました

――キャストの方の意見が反映されたシーンはありますか?

「たくさんありますが、主にキュンの部分が大きいですね。ハンドクリームを塗るシーンは、演じている側がキュンとしないと、見ている側もキュンとしないので、密に話し合いながら作りました。後、女性陣だけで台本を作っているので、準備稿を出した段階で、キャストや男性陣のリアクション見て、少しやりすぎた部分は修正したり、すり合わせをしながら、いろいろなパターンを考えてそこに行き着いています」

――具体的にハンドクリームのシーンは、どんな意見があったのでしょうか?

「文字で見ると少し気持ち悪いかもと言われていて(笑)。実際に演じてもらい、塗った後にポンッとするとか。一歩間違えると気持ち悪く見えてしまうものが、やり方一つで良くも見えたりするので、実際に何度も試しながら作っています。後、第9話の“花びらキス”は、どう見せるかすごく話し合いました。台本で書くのは簡単ですが、それを映像に起こした時に、奇麗に見えるか見えないか、紙一重のところがあるので、女性スタッフでシミュレーションしながら完成させました」

――その“花びらキス”もすごい反響が大きかったと思いますが、瀬戸さんとはどういったやり取りをされましたか?

「最初は、あそこまで花を食べることにはなっていなかったです。ですが、サラっとかみちぎれる花ではなくて、結果、瀬戸さんが全部食べる形になりました」

自分なりに進んでくまことを見守っていただきたい

――今回、ラブコメでもありながらミステリー要素があるところが魅力だと思いますが、全11話の中で見せ方のバランスや、重くなりすぎないように工夫したところはありますか?

「第4話までに、1人ずつ3人の男性をまことの恋愛対象としてセットアップしていき、どうミステリー要素を小出しにしていくか、すごく考えました。前半でミステリーを多く出してしまうと、男性陣が怪しくなりすぎてしまい、素直に恋愛を楽しめないかなとか…。まことの相手が誰になっても、それはそれでハッピーエンドだねと思ってもらえるように、前半戦から引っ張り方を意識しました」

――ドラマ作りの上で、プロデューサーとしてのポリシーだったり、意識してる部分はありますか?

「今回のドラマで言うと、一つのキャラクターに偏らないよう、皆、均等に愛されるキャラクターにしたいというところをとても気にしながら作りました」

――均等に愛されるものを作りたいっていうのは、どこから発想が来ていますか?

「記憶喪失の主人公が、目の前に現れた3人の男性から誰を選ぶか、最初からゴールが見えすぎていたらつまらないですし、記憶喪失の前後で隙が違うというところが大事な要素でもあるので、まことの相手が誰になってもおかしくない、かつ連続して見てもらえるものを作りたいと思っていました」

――主題歌であるDa-iCEの「I wonder」は、ドラマを盛り上げる要素でもあるなと感じています。制作を依頼するにあたり、何かリクエストはされましたか?

「最初に『内容やテーマのイメージに引っ張られないでください』と一つだけお願いしました。結果として、ドラマととてもリンクしていて、歌詞に登場する“ガラスのキャンバス”も狙ったわけじゃないんです。本当にすごいなと感動しています」

――できあがった楽曲を聞いて、はまりすぎているなという感覚だったんですね!

「初めて聴いたときから、明るくキャッチーですてきな曲だなと思っていたんですが、どんどん話が進んでいくにつれてはまりすぎていて。世界観を理解して書いてくださったんだろうなと、今振り返って思います。デモを何曲か提案していただいた中の一つが“I Wonder”で、インパクトがあり、最初からこれだねと決まりました」

――これまでのエピソードで、個人的にお気に入りの場面はありますか?

「公太郎の“花びらキス”のシーンはもちろんですが、第4話でまことの誕生日に、ろうそくに見立てて東京タワーが消えるところは、完全に個人的な嗜好(しこう)で作りました。あそこはとてもお気に入りで、台本の打ち合わせの時から、とても盛り上がっていましたし、もちろん撮影でも盛り上がりました(笑)」

――最後に、最終回の見どころをお願いいたします。

「まことが記憶をなくす前の恋と、今の恋。二つの恋心をなにを基準としてどう選ぶか。前向きに自分なりに進んでくまことを見守っていただきたいです。記憶喪失を通しての自分探しの答えも描かれているので、そこにも注目して見てみてください。また、観念的ですが、記憶は、自分が覚えているものしか思い出せないので、記憶喪失関係なく、覚えているものは捉え方によって人それぞれ違う。結果『自分の好きなようにすればいい』というのを、全11話を通して感じていただけたらうれしいです」

【プロフィール】

__八木亜未 (やぎ あみ)
__恋愛、サスペンス、医療系など幅広いジャンルの作品を手掛けるプロデューサー。主な担当作に、「TOKYO MER~走る緊急救命室~」「テセウスの船」「下剋上受験」(TBS系)、けむたい姉とずるい妹」(テレビ東京系)などがある。

【番組情報】

「くるり~誰が私と恋をした?~」
TBS系
火曜 午後10:00~10:57

取材・文/N・E(TBS担当)

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