触媒で衣料品に消臭、防虫機能 井原・西江デニム 定着技術を確立

衣料品に触媒を定着させる洗い機。触媒や薬液などが投入できるようになっている

 洗い加工大手の西江デニム(井原市高屋町)は、化学系ベンチャーの希少金属材料研究所(玉野市宇野)が開発した触媒を衣料品に定着させ、消臭や防虫機能を持たせる技術を確立した。光が届きにくいタンスやクローゼットでも作用し、繰り返し洗濯しても効果が持続するという。OEM(相手先ブランドによる生産)の獲得を進め、来年の春物衣料からの採用を目指す。

 同研究所の触媒は無色無臭の水溶液で、暗所でも反応するタングステン酸アンモニウム化合物を使用。気温15度以上の環境で活性酸素が発生し、臭いの元になる有機化合物を分解する。黄色ブドウ球菌や大腸菌を殺菌する効果、害虫を忌避させる作用もある。

 衣料品の加工を担う西江デニムは、大型の洗い機を使い、独自の薬液で撥水(はっすい)剤などを繊維に結合させる技術を持つ。今回の触媒についてもこの技術を応用し、薬液の濃度や洗い機に投入するタイミング、加工時間などを調整し、生地への定着に成功した。

 触媒を加工した生地について、同研究所で試験を行い、悪臭の原因となるアンモニアの分解作用や、服に穴を開けるヒメマルカツオブシムシを忌避させる効果を確認。触媒が繊維に強く結び付くため、繰り返し洗濯しても効果は維持されるという。

 両社の協業は4年ほど前、触媒の活用先を模索していた同研究所が、公認会計士の紹介で、特殊技術を持つ西江デニムを知ったのがきっかけ。それぞれ触媒の安定供給と生地への定着に関する研究を進め、実用化のめどが立った。同研究所の石川雄一社長は「触媒を生地に接着すると普通は肌触りが悪くなるが、違和感なく定着してもらえた」と話す。

 西江デニムは、OEM(相手先ブランドによる生産)により百貨店ブランドなどにカジュアル製品を供給しており、今後、触媒を加工した製品を取引先にアピールしていく方針。西江真社長は「新たな機能が加わることで、製品の付加価値が大きく上がる。これまではジーンズの生産が中心だったが、カットソーやニットなどにも市場を広げていきたい」としている。

 西江デニムは1960年設立、資本金9900万円、売上高約22億円(2023年9月期)、従業員約130人。希少金属材料研究所は12年設立、資本金330万円、売上高約2千万円(24年2月期)、従業員5人。

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