『インサイド・ヘッド2』北米で今年No.1の大ヒット ピクサーの予想を超えた“逆襲劇”

ピクサー映画が堂々の復活だ。映画『インサイド・ヘッド2』が、6月14日の北米公開から3日間で興行収入1億5500万ドルもの大ヒットを記録した。2024年の公開作品では『デューン 砂の惑星PART2』を抜き、オープニング興収記録を更新。初動成績が1億ドルを超えたのは、2023年7月公開『バービー』(1億6202万ドル)以来11カ月ぶりとなった。

『インサイド・ヘッド2』は、ディズニー&ピクサー映画『インサイド・ヘッド』(2015年)から9年越しの続編。それゆえ興行面は予想のつかない部分があり、業界内では初動興収8000~9000万程度と予想されていた。ところが、蓋を開ければ約2倍のスマッシュヒットで、海外メディアでも衝撃とともに受け止められている。

本作は長編アニメーション映画としても『インクレディブル・ファミリー』(2018年)の1億8268万ドルに次いで歴代2位のスタート。世界的ヒットが記憶に新しい『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)をも抜き去った(ただし、2019年の超実写版『ライオン・キング』をアニメーション映画扱いとした場合は歴代3位)。

『インクレディブル・ファミリー』以来の初動記録とは、すなわちピクサー映画としても歴代2位の記録ということだ。これはピクサーの“逆襲”であり、コロナ禍以降、ディズニーは『ソウルフル・ワールド』(2020年)、『あの夏のルカ』(2021年)、『私ときどきレッサーパンダ』(2022年)の劇場公開を見送り、ディズニープラスで配信してきた。約3年にわたり劇場を離れたせいもあるだろう、その後の『バズ・ライトイヤー』(2022年)と『マイ・エレメント』(2023年)は劇場公開されたが興行的には厳しい結果となっていたのである。

海外市場でも初動成績1億4000万ドルの大記録を打ち立て、わずか3日間で世界興収は2億9500万ドルに到達。長編アニメーション映画として、海外オープニング成績は『アナと雪の女王2』(2019年)を抜いて歴代1位、また全世界でも歴代1位のスタート(ただし現在の為替レート、かつ同一条件での比較)となっている。

注目はラテンアメリカでのフィーバーぶりで、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)を超えて歴代第2位の猛スタートを切った(メキシコだけで初動興収3020万ドル)。ヨーロッパやアジアでも好発進を見せているが、驚くべきはまだ全市場の6割でしか公開を迎えていないこと。今後は中国やフランスやイタリア、スペイン、ブラジル、そして日本などで公開を控えているのだ。

製作費は2億ドルと高予算ながら、今年初となる世界興収10億ドル突破もありうるため、コスト回収はもはや問題にならない。前作『インサイド・ヘッド』の北米興収3億5692万ドル、世界興収8億5885万ドルを超え、どこまで数字を伸ばせるかがひとつのポイントだ。

「傑作」とも評される前作ゆえ、続編には高いハードルが課せられたが、本作はRotten Tomatoesでも批評家スコア92%・観客スコア96%という高評価。観客の出口調査に基づくCinemaScoreでも「A」評価をつかんでおり、興行面の追い風となることが期待される。

『インサイド・ヘッド2』では、高校生になった少女ライリーの頭の中に、幼少期から彼女を見守るヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリに加え、“大人の感情”であるシンパイ、イイナー、ダリィ、ハズカシが登場。思いもかけない感情の嵐が巻き起こる……。日本公開は8月1日。

週末ランキングの第2位は『バッドボーイズ RIDE OR DIE』。公開2週目の週末興収は3300万ドルで、前週比マイナス41.6%と優れたホールド力を示した。フランチャイズ映画の場合、前週比マイナス50~60%となることも珍しくないが、前作『バッドボーイズ フォー・ライフ』(2020年)以上の粘り強さで、北米興収は早くも1億1224万ドル。世界興収2億1464万ドルと、こちらも予想以上の健闘を続けている。

『インサイド・ヘッド2』と『バッドボーイズ RIDE OR DIE』のヒットにより、6月14日~16日は北米市場全体の興行収入が2億ドルを突破した今年初の週末となった。『マイ・エレメント』やDC映画『ザ・フラッシュ』(2023年)が苦戦した昨年の同週末と比べると、興行収入は30%増。年間興行収入も前年比マイナス26%からマイナス23.8%までギャップを縮めたという。

そのほか、ランキングの第3位には『猿の惑星/キングダム』が公開6週目にして前週の第5位から再上昇。上映館数を減らしながらも、週末興収の下落率はわずかマイナス4%という驚きの推移だ。『ねこのガーフィールド』は、『インサイド・ヘッド2』と客層がかぶったために第4位へランクダウン。ただし世界興収は2億ドルを超えており、製作費6000万ドルというコストを踏まえればギリギリ逃げ切った形か。第6位『ブルー きみは大丈夫』は公開5週目にして北米興収1億ドルを突破した。

『インサイド・ヘッド2』の大ヒットは、6月28日に日米同時公開となる『クワイエット・プレイス:DAY 1』や、同じく人気アニメーション『怪盗グルーのミニオン超変身』、そして『デッドプール&ウルヴァリン』にバトンをうまく繋げるか。想像を絶するほどの苦境を強いられた初夏興行から、予想外の逆転劇に期待したい。

北米映画興行ランキング(6月14日~6月16日)
1.『インサイド・ヘッド2』(初登場)
1億5500万ドル/4440館/累計1億5500万ドル/1週/ディズニー

2.『バッドボーイズ RIDE OR DIE』(↓前週1位)
3300万ドル(-41.6%)/3885館(変動なし)/累計1億1224万ドル/2週/ソニー

3.『猿の惑星/キングダム』(↑前週5位)
520万ドル(-4%)/2600館(-555館)/累計1億5780万ドル/6週/20世紀スタジオ

4.『ねこのガーフィールド』(↓前週2位)
500万ドル(-50%)/3411館(-548館)/累計7852万ドル/4週/ソニー

5.『ザ・ウォッチャーズ』(↓前週4位)
366万ドル(-47.7%)/3351館(変動なし)/累計1366万ドル/2週/ワーナー

6.『ブルー きみは大丈夫』(↓前週3位)
345万ドル(-56%)/3006館(-576館)/累計1億90万ドル/5週/パラマウント

7.『マッドマックス:フュリオサ』(↓前週6位)
242万ドル(-42.4%)/1874館(-1110館)/累計6312万ドル/4週/ワーナー

8.『フォールガイ』(↓前週7位)
150万ドル(-42.1%)/1663館(-747館)/累計8790万ドル/7週/ユニバーサル

9.『The Strangers: Chapter 1(原題)』(↑前週10位)
76万ドル(-57.7%)/1027館(-989館)/累計3389万ドル/5週/ライオンズゲート

10.『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』再上映(↓前週8位)
63万ドル(-74.2%)/1035館(-494館)/累計308万ドル/2週/Fathom Event

(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2024年6月17日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)

参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2024W24/
https://variety.com/2024/film/box-office/inside-out-2-shatters-box-office-expectations-biggest-opening-weekend-2024-1236039389/
https://variety.com/2024/film/news/inside-out-2-box-office-opening-weekend-records-pixar-1236039419/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/inside-out-2-box-office-historic-pixar-opening-1235923598/
https://deadline.com/2024/06/box-office-inside-out-2-1235973432/
(文=稲垣貴俊)

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