次世代が発信! 【台湾】洗練された“台湾茶の新世界”を味わえるスポット5選

【台湾】台湾茶

日本で台湾茶ブームが起こった2000年代初頭以降、台湾において台湾茶は“シニア層と日本の観光客向け”の印象があった。

だがここ数年、『萃※(酉部+口+口+がんだれ+敢)』(1)のように海外で学んだ老舗茶商の若き3代目、4代目が自身のセンスを生かして開いた店が増え、さらに『琥泊』(2)のようにブランディングデザインなど異業種で活躍するキーパーソンが、お茶好きが高じて店を構えるケースも。共通するのは、台湾の同世代に向けて台湾茶の魅力を発信している点だ。

お茶を淹れるスタイルも、これまでの中国の名窯による茶壺(急須)や日本の骨董などを組み合わせたセッティングから、『清山寶珠』(3)のように台湾の若手陶芸家による茶器を積極的に使う店主も登場。茶葉は“自分が安心して飲みたいから”と、親族や友人の茶農家から安全で信頼できるものを仕入れる。より洗練され、でも大事にするのはあくまで等身大のおいしさ。次世代が発信する台湾茶の新世界、ぜひ体験を。

1、目利きの若き店主がもてなす静穏なお茶空間。

萃※(酉部+口+口+がんだれ+敢) AINSI THE(ツェイイェン)

茶商の4代目である店主のアンジェラさんが、ロンドンのアートスクールに留学後、自身で開いたティーサロン。店名の「萃」は“厳選したもの”を、「※(酉部+口+口+がんだれ+敢)」は“醸し育てる”ことを意味し、モノトーンで統一されたシックなティーサロンでは、中国・宜興の若手作家の茶器など洗練されたセッティングでお茶をいただける。彼女のお眼鏡に適った高山茶などのほか、年代物の希少な普※(さんずい+耳)(プーアル)茶を揃えるのは、父上が普※(さんずい+耳)茶のコレクターであり、彼女自身も造詣が深いゆえ。初心者にはハードルの高い長期熟成の普※(さんずい+耳)茶も、ここなら安心して扉を開けるはず。お茶は阿里山佛茶240元、1970年代普洱茶1200元など。90分制。ミニマムチャージ500元。茶葉の販売も。

この日は名人が伝統的な製法で作った北埔産の東方美人茶を。800元。中国・宜興の茶壺に徳化の茶杯を合わせて。

TEL:02・2397・3148 12:00~21:00 無休 なるべく予約を。カード可、日本語不可。台北市大安區金華街249‐1號

2、白茶の優美なおいしさに出合う琥珀色に包まれたティーサロン。

Liquide Ambre 琥泊(リキッド アンバー フーポォ)

台北の数々の話題店を手がけるブランディングデザイナーのカレンさんが、長年のお茶好きが高じて開いたティーサロン。映画監督の持ち物というスタイリッシュなビルの2階にあり、1階は文房具ファンに広く知られる雑貨店『TOOLS to LIVEBY』。サロンは店名通り琥珀をキーカラーにした店内で、カウンターは6席。希望の茶葉を伝えると茶師が目の前で3煎淹れてくれる。カレンさんが台湾各地を回って探したという自然農法の茶葉を20種ほど揃え、特に台湾では珍しい白茶が豊富なことが特徴。ティーカクテルや自家製甜點(甘味)も人気だ。中国の名窯・宜興で特注したというモダンな茶壺は販売も(6600元~)。隅々まで店主のセンスが光るコージーな空間だ。

上・本日は鳳凰単叢の白茶を、エレガントな景徳鎮の白磁の茶器で。550元。

自家製スイーツも好吃。手作りピーナッツ豆腐「手工花生豆腐」180元。

TEL:なし 12:00~19:00 月曜休 なるべく予約を。カード可、日本語少し。台北市大安區樂利路72巷15號2樓

3、台湾の作り手たちの“今”を茶農家の2代目が伝える一軒。

清山寶珠(チンシャンバオヂュー)

店主のルビーさんは、文山包種茶で知られる茶どころ・坪林の茶農家の2代目であり、シンガポールで五つ星ホテル専門のインテリアデザインを手がけていた経歴を持つ。お茶の知識と海外で磨いた美意識とで、茶葉や茶器、雑貨を扱う心地よいセレクトショップをオープンした。茶葉は伝統的製法で作る包種茶や台湾紅茶など5種類ほど。店内には彼女が見立てた台湾の作家による茶器が所狭しと並ぶ。瑞々しい感性に満ちた茶器は手馴染みも良く、日々のお茶時間に溶け込むものばかりだ。ちなみに現在はカフェの営業はなく試飲のみ。マナーとして試飲の後は茶葉または茶器の購入を心がけたい。上・昔ながらの深めに焙煎した包種茶を、ルビーさん推しの作家「白花花」の絵付けの茶器で。蜜のような柔和な甘みがふわり。熟香包種茶50g 400元。

手前の茶壺は陶芸ブランド『陶事』の女性作家のもの。4800元。茶海2600元など。

TEL:02・2737・3777 13:00~18:00 日・月曜休 カード可、日本語不可。台北市信義區富陽街72巷19號1樓

4、老舗の5代目が大胆に提案する新しい台湾茶の楽しみ方!

WANGTEA LAB×有記(ワンティーラボ×ヨウジー)

1890年創業、台北でも随一の歴史を誇る『有記名茶』。その本店の隣に「もっと台湾茶を広く知ってほしい」と5代目の王聖鈞さんが開いたのが、多彩な淹れ方で提供する次世代のティーラウンジ。主役となるのは茶葉に天然素材をブレンドし二酸化炭素や窒素とともにタップから注ぐドラフトティー。きめ細かな泡とお茶やフルーツ、スパイスなどが重層的に香る味わいは爽やかなモクテルのよう。レシピは王さんが考え、常に新作が登場する。ほかにミルクドリンクやエスプレッソならぬティープレッソなど種類が豊富で、その飽くなき探究心は店名通りまさにラボ(研究所)! 上・奥から、桂花烏龍や蜜香紅茶にイチゴなどをブレンドしたドラフトティー「草苺重撃」240元、貴妃烏龍ミルクティー180元。

ハンドドリップで淹れた『有記名茶』の看板茶、奇種烏龍‐包種200元。茶葉チョコレート1個60元~。

TEL:02・2558・5551 10:00~19:00 無休 カード可、日本語不可、サービス料10%。台北市重慶北路二段64巷24號1・2樓

5、秘蔵の茶葉とティーカクテルを「OMAKASE」スタイルで。

ASABAN TEA(アサバンティー)

京都の美術大学留学時に日本茶の文化に触れ、改めて台湾茶に興味を持ったというアーサーさんの茶芸サロン。『孵珈琲洋館』と同じビルの4階にあり、中国・宜興の茶壺や徳化の白磁の茶杯が、迪化街の歴史ある老建築に映える。メニューは、40種類ほどの茶葉の中からお客の希望に合わせて店主が選ぶ「OMAKASE(おまかせ)」スタイル。またティーカクテルもあり、アンティークのバカラなど美しいグラスで味わうことも。完全予約制の密やかな雰囲気もまた魅力だ。上・「OMAKASE 季」は茶葉1種(4煎)に自家製みたらし団子付きで700元。この日は甘露な熟成感が花開く2010年阿里山佛手茶を。

「OMAKASE 享」は茶葉1種(3煎)+カクテル1品で1000元。写真は蜜香烏龍のシロップにジンや花椒、レモン果汁などを合わせた一杯。オールドバカラのグラスで。

TEL:なし 13:00~19:00 木曜休 予約制(Instagram:@asabanteaから)。カード可、日本語可、サービス料10%、2時間制。台北市大同區歸綏街218‐1號4樓

※『anan』2024年6月19日号より。写真・田尻陽子 取材、文・藤森陽子 コーディネーター・片倉真理

(by anan編集部)

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