Q. 「自殺の兆候」はあるのでしょうか?
Q. 「家族を自死でなくしてしまうというのは、本当に耐えがたくつらいことだと思います。娘が以前うつ病を患ったことがあり、調子が悪そうなときはとても心配になります。 どう見守るべきか頭を悩ませているのですが、いわゆる『自殺の兆候』というものはあるのでしょうか?」
A. 悲観的な発言や食欲など、日常に変化が出ることも。適切なサポートが大切です
大切なご家族が心に不調を抱えられている時は、とても心配なことと思います。 生きていく上ではさまざまな問題が起こります。一人ではうまく解決できそうにない悩みを抱えたときには、生きていく自信を失いそうに感じることがあるものです。 そして、抱えている問題があまりに大きすぎると現実的な判断が難しくなり、抑うつ状態から自死を考えてしまうことがあります。 とはいえ、悩んでいる本人が家族や周りに心配をかけてはいけないと思うと、いつも通りにふるまってしまうものです。 すると、たとえ同居しているご家族であっても、本人が自死を考えるまで深刻な状態になっていたことに気づけないことがあるのです。 そうしたなかでも、自死を考える人の行動や生活の中には、何らかのサインが現れていることが多いため、最近、以前と様子が少し違うと感じたときには、以下のようなサインがないか、よく観察してみることをおすすめします。 ・自分を責める発言、悲観的な発言が増えている ・朝の調子がとても悪そうに見える ・最近、親しい人との死別や、離婚・結婚・転勤など大きなライフイベントがあった ・体調の悪い状態が続いている ・家族とも顔を合わせたがらない ・大切にしていた思い出の品を処分するなど、身の回りを極端に整理している ・食欲が極端に落ちている これらに加え、過去に自殺未遂をしている経験があるような場合は、いっそうの注意が必要です。自死の考えにとらわれてしまうと、一人でその思考を変えるのは難しいものです。 家族を始めとする身近な人が本人の発するサインに気づき、心情に寄り添って支えてあげると、本人は苦しみから少し楽になることができると思います。 最近落ち込みが激しく、上記のような兆候・サインを感じるようになったら、ぜひその人の行動を注意深く見守ってみてください。 そして大切なのは、できるだけ早めに精神科などの専門的なサポートにつなげて、治療をスタートさせることです。 初診の際には家族やパートナーが付き添い、サポートする側としての心得や処方薬の服用方法も一緒に確認するとよいでしょう。
大美賀 直子プロフィール
公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持つメンタルケア・コンサルタント。ストレスマネジメントやメンタルケアに関する著書・監修多数。カウンセラー、コラムニスト、セミナー講師として活動しながら、現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法について幅広く情報発信を行っている。 (文:大美賀 直子(公認心理師))