用水路転落 高齢者52.3% 17~21年岡山市 歩行中が最多

用水路転落事故の発生場所や通報日時などを盛り込んだデジタル地図

 岡山市内で2017~21年の5年間に発生した用水路への転落事故のうち、半数超の52.3%を65歳以上の高齢者が占め、事故に伴う死亡率が成人(18歳以上65歳未満)のおよそ4.5倍に上ることが、森泰三ノートルダム清心女子大教授(人文地理学)らのグループの分析で分かった。発生時間帯別でみると「午後6時台」、移動手段は「歩行中」とみられる事故が最も多かった。

 岡山市は用水路の総延長が約4千キロと、1平方キロ当たりの水路延長を示す「用水路密度」は全国平均の約5倍に当たり、転落事故は後を絶たない。グループは市の補助を受けて調査・分析した上で発生場所や通報日時、年齢、けがの程度などを盛り込んだデジタル地図を作成、公開し、警戒を呼びかけている。

 市消防局が救急搬送した事故599件を分析した。高齢者は313件で最多。次いで成人229件、少年(7歳以上18歳未満)42件、乳幼児(7歳未満)10件―の順だった。死亡事故は28件で、内訳は高齢者24件、成人4件。重症(57件)と中等症(161件)も高齢者が半数以上を占めた。

 時間帯別でみると、いずれも午後の6時台53件▽3時台41件▽7時台39件▽5時台、8時台各38件―と薄暮時間帯を中心に多発していた。転落者の年代と時間帯の関係では、高齢者の6時台(30件)と5時台(25件)が目立った。

 転落時の移動手段は自動車、自転車などを除く徒歩とみられる事故が283件、自転車148件―などだった。

 グループは発生場所が明確な583件のデータを地理情報システム(GIS)に書き込み、ノートルダム清心女子大ホームページなどで公開している。地図上のタグを「死亡」「中等症」など転落者の容体別に色分けし、開くと情報が表示される。タグを年代、時間帯で色分けした地図も示している。

 森教授によると、細い道や緩やかなカーブでの発生が多かったほか、ガードレールがある場所でも転落しているケースが少なくなかったといい「危機感を持つことが大切。自宅や学校、勤務先の近くで危険な場所を確認するツールとして地図を利用してほしい」としている。

森泰三教授

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