日赤名古屋第二病院で医療過誤、複数回におよぶ不適切対応で患者死亡

 日赤名古屋第二病院(名古屋市昭和区)は17日、昨年、適切な治療を行わなかった結果患者が死亡する重大な医療過誤があったと記者会見で公表し、謝罪した。死亡したのは男子高校生で、救急外来で2度にわたって正しい診断ができなかったうえ、3度目の来院後入院となった後も適切な治療が行われなかったため死亡に繋がったという。

2度にわたる救急搬送で相次いで不適切な対応

 病院が記者会見を開いて公表したところによると、昨年5月28日の早朝に、16歳の男子高校生が腹痛やおう吐、下痢などを訴え救急車で搬送された。この際は研修医が診察し、CT検査で胃の拡張を確認した一方、血液検査で脱水が疑われる数値が出ていたことを見逃し、上司の医師に相談せず急性胃腸炎と診断して整腸剤などを処方し帰宅させた。

 しかし症状が改善しなかったため、男子高校生は同日昼前に再び救急外来を受診。2度目は別の研修医が診察したが、前回の診断を踏襲し自ら診断せず、翌日、近くのクリニックを受診するよう指示した。

 男子高校生はこの指示を守り、翌朝29日、付近のクリニックを受診すると、このクリニックでは「緊急処置が必要」と診断され、改めて地域の基幹病院である日赤名古屋第二病院を受診。3度目の受診でようやく十二指腸が閉塞する「上腸間膜動脈(SMA)症候群」の疑いと診断され、緊急入院した。

ようやく入院、そこでも不適切な対応

 しかし入院後も、診断した病気の症状のひとつである脱水に対する医師や看護師らによる処置が適切に行われず、翌日の未明に容体が急変。心停止となり意識不明のまま、6月15日にSMA症候群による腸閉塞(へいそく)、高度脱水のため死亡した。 

 病院はこの事態に、事故調査委員会を設置し調査。まとめた報告では、医療過誤の原因として、脱水症の評価が不十分だったことによる治療開始の遅れ、救急外来での研修医のサポート体制の不備などを指摘。会見した同院の安井敬三副院長は「急性胃腸炎と診断して重症度を軽く見積もり、患者の苦しみに耳を傾けなかった」と病院側の責任を認めた。

 同院は責任を認め遺族に謝罪し、現在、和解に向けて協議を進めている。遺族は「研修医の勝手な判断、誤診がなければこのような結果になっていなかった。本当に後悔しかない。何度も助けられる機会はあったのに見過ごされてしまった。目の前で苦しんでいる人の声をもっとしっかり聞いてほしい。16歳の男の子の人生を突然終わらせてしまったこと、夢見ていた未来を奪ってしまったことを決して忘れないで」などとコメントを出した。

 会見で佐藤公治病院長は「苦痛とおう吐に苦しむ患者に最後まで適切な対応をせず、未来ある患者を救うことができなかった。大変申し訳なく、心からおわび申し上げたい。職員一丸となって再発防止に努めていきたい」と述べた。

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