萬の南画表現に焦点 文化たどり先人作品も 鉄五郎美術館企画展覧会【花巻】

萬と南画文化の関わりに迫る企画展覧会「萬鉄五郎と土沢≪南画の系譜≫」

 花巻市東和町土沢の萬鉄五郎記念美術館は、開館40周年の企画展覧会「萬鉄五郎と土沢≪南画の系譜≫」を開いている。同町出身で日本近代絵画の先駆者萬鉄五郎(1885~1927年)の南画表現に焦点を当てるとともに、郷土の先人南画家の作品を展示し、萬の素養を育んだ絵画文化をたどっている。30日まで。

 中国の「南宗画」の略称で「文人画」とも称される南画は、江戸中期に日本にもたらされてから俳画、山水画、墨彩画、水墨画として独自に発展。文人特有の「脱俗遠塵」の芸術哲学が当時の画家を引き付けた。

 萬は少年期に水墨画を学んだ素地があり、西洋絵画に傾倒する中でも南画の影響を感じさせる作品を残している。病気療養で神奈川県茅ケ崎市に移り住んでからは、南画の伝統的な技法や精神性に自らの絵画表現との一致点を見いだし、洋画との融合にオリジナリティーを追求したとされる。

 今回展示しているのは、萬が幼い頃に模写した山水画や南画の掛け軸作品など。関東大震災の体験を踏まえて茅ケ崎の風景を描いた「地震の印象」は、波打つ大地や揺れる山、飛んでいく人物など動きのあるコミカルな作品で、インパクトと独創性にあふれる。

 開館時間は午前8時30分から午後5時(入館は4時30分)まで。月曜休館。入館料は一般500円、高校生・大学生300円、小中学生200円。問い合わせは同館=0198(42)4402=へ。

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