『366日』笑顔と幸せに満ちた感動のフィナーレ 記憶を取り戻した遥斗が出した答え

「桜の花を見るたび思い出す。かけがえのない、あの日々のこと」

そんな明日香(広瀬アリス)のプロローグとともに幕を開けた『366日』(フジテレビ系)が感動のフィナーレを迎えた。2023年4月7日に、同窓会で12年ぶりに再会を果たした明日香と遥斗(眞栄田郷敦)。あの日からちょうど366日目、明日香はチャリティーコンサートの舞台に立っていた。最後の1曲「さくらのうた」をクラリネットで奏でながら、明日香は遥斗と過ごしたかけがえのない日々を思い出す。

1年前、高校生の頃から好きだった遥斗と思いを伝え合った明日香は幸せの絶頂にいた。だがその直後、不慮の事故で意識不明の状態となった遥斗。一生目を覚まさない可能性もあったが、それでもみんなが回復を信じて待ち続けた結果、奇跡が起こる。数カ月ぶりに目を覚ました遥斗は高校生以降の記憶を失っていたが、明日香の献身的なサポートもあり、少しずつ日常生活を取り戻していった。

そんな中で遥斗は再び明日香に恋をしたが、依然として記憶は戻らず、互いを傷つけ合わないために別れを選んだ2人。莉子(長濱ねる)との結婚式で智也(坂東龍汰)が語ったように、1年という長いようで短い間にいろいろなことがあった。 人生、何が起こるか本当に分からない。それこそ、10年以上も友達だった莉子と智也が結婚するなんて、同級生たちにとっては寝耳へ水の果報だったことだろう。

2人の結婚式では、同級生たちが学校で撮影したサプライズムービーが流れる。遥斗はあの時、制服姿の明日香を見て失った記憶を取り戻していた。それでもなお、明日香の告白を受け入れることができなかったのは怖かったから。記憶を取り戻したからといって、明日香が好きだった昔の自分に戻れるわけではない。

そんな遥斗に、池沢(和久井映見)は「戻る必要、あるのかな?」と疑問を投げかける。復職後の働きぶりが認められ、大阪にオープンする新店舗のサブマネージャーを任された遥斗。最初は戸惑っていた職場の人たちも笑顔で遥斗の門出を祝い、宮辺(夏子)も長年の思いが果たされることはなかったが、「ほんの一瞬でも水野さんの人生に関わらせてもらって幸せでした」と晴れやかな顔で見送った。遥斗はみんなから愛されている。それは遥斗が何事にも一生懸命で、誰に対しても真剣に向き合ってきたから。それは今も昔も変わらない。智也が言うように、記憶があろうがなかろうが、遥斗は遥斗だ。いつだって太陽のようにみんなの心を照らしている。

明日香も遥斗の存在に背中を押され、再び音楽と向き合った。高校の時、屋上で莉子と「さくらのうた」を演奏していた明日香。グラウンドで野球を練習していた遥斗は明日香が奏でるクラリネットの音に励まされ、その姿がまた明日香を奮い立たせた。そんな思い出が詰まった1曲を演奏し終わった明日香が顔を上げると、大阪に旅立ったはずの遥斗が視界に入る。

明日香の足は自然と遥斗の方へ。「これからいろいろなことと闘っていかなくちゃいけないけど、心配もたくさんかけるかもしれないけど、俺、やっぱり明日香と一緒にいたい」という遥斗の言葉に、明日香は「それでもいい」と答えた。この先、どんな困難があったとしても「それでもいい」と思えるかけがえのない恋をした明日香。その結末は、この上ないハッピーエンドだった。1年前、自分たちの恋が動き出した場所で明日香と遥斗はキスを交わす。明日香にずっと片思いしていた和樹(綱啓永)でさえ願った、2人が一緒に笑い合う光景がそこにあった。

物語の終盤、和樹はカメラを持って出かけた先で芽美(高田里穂)と再会し、笑顔で別れる。智也は軽トラで莉子を職場まで送り出し、お好み焼き屋「てるちゃん」では花音(中田青渚)と竜也(中沢元紀)が輝彦(北村一輝)や智津子(戸田菜穂)と笑い合う姿があった。なおチャリティーコンサートには、池沢も娘の菫(宮崎莉里沙)と駆けつけ、静原(前田公輝)がいつものようにちなみ(鈴木絢音)を愛おしく見つめる姿も。そうやって本作はHYの名曲をモチーフに、それぞれが様々な思いを抱えながら過ごす366日を描いてきた。笑顔と幸せに満ちた大団円は一人ひとりが、明日の自分が笑えるように今日を頑張った結果だ。

そして物語は第1話の冒頭に映し出された2028年へ。一人で桜の木を見上げる明日香のもとに、息子を抱っこした遥斗が駆け寄る。今から4年後の私たちは果たして、どうしているだろうか。HYの「366日」は切ない失恋ソングとして知られているが、最終回を見終わった今、改めて歌詞を聴いてみると印象が少し変わってくる。〈本気であなたを思って知った〉〈あなたは私の忘れられぬ人 全て捧げた人〉というフレーズが物語るように、これは後悔がないほどに誰かを愛した人の歌だ。人生は嬉しいことばかりじゃない。この先、今追いかけている夢を諦めざるを得ない出来事が起きるかもしれない。好きな人と別れなくちゃいけない状況になるかもしれない。だけど、どんなことがあっても、最後は「十分やった」と笑えるように今を懸命に生きていきたい。ドラマ『366日』はそんなふうに思わせてくれる優しい物語だった。

(文=苫とり子)

© 株式会社blueprint