物流「2024年問題」に対応!物流拠点分散化のメリットと可能性

これまでの記事で、物流の2024年問題とそれに対応する物流拠点の分散化を実現する方法についてご紹介しました。今回はそんな物流拠点分散化のメリットとその可能性について、より深堀ってご紹介しましょう。

2024年問題で進む物流拠点の分散化

これまでの記事でもご紹介したように、物流業界では「2024年問題」が表層化しています。限られたリソースの中でもスピード配送を実現するために、これまで否定的だった拠点の分散化が様々な新しい技術の発展やコストダウンにより広がり始めています。これは、大規模な投資が可能な大企業だけでなく、リソースの限られる中小企業においても、人とシステムのバランスを保つことで実現する企業が増え始めているのです。

例えば北海道でECモールに出店しており受賞歴もある、ある店舗から、当社にこんなご相談をいただきました。

その店舗は、自社のある札幌に物流センターを2つ構えていましたが、2024年問題を契機にECモール側の物流体制が新しくリニューアル。より一層『翌着率』が重視されるようになるため、今後どのように対応すべきかという相談内容でした。

当社と半年以上会議を重ねた結果、これまで全国配送をカバーしていた従来の物流拠点は、北海道から東北までをカバーし、関東と関西に新たに物流拠点を持つ『物流拠点の分散化』を進めるという結論に至ったのです。

このように、自社が持っているエリアの出荷キャパシティと配達エリアを鑑みて、より翌着率を上げるための拠点展開を検討する。この方法こそが、物流業界においてリソースを最大限に活用するとして、よく話題に上がるようになっているのです。

今後、物流を外注に出すか自社の事業として物流までを事業展開のコアに入れて対応するかの判断は別としても、やはり物流拠点をどこに置くのかは今後重要なポイントとなるでしょう。

物流拠点分散化のメリットとは

一番のメリットはこれまでもご紹介した通り、配送スピードの向上が見込める点にあります。

例えば、当社が手がけるEC 物流代行サービスの物流拠点は、日本国内に現在15箇所あります。主な拠点は全国の配送の60%を占める関東・関西に分布しており、今後は約10%を占める九州にも進出予定です。

その15箇所ある物流拠点はそれぞれ規模が異なり、3000坪を超える大規模なものから中規模なものまでさまざまです。特に注力しているのは、関東と関西に分けて翌着率を向上させる取り組みや、RPA(※1)とOMS(※2)を組み合わせて自動化できる体制を整えつつ、翌着エリアをさらに広げることです。

※1 RPA(Robotic Process Automation:主に人を介して行われていたPCの事務作業などを自動化する技術)※2 OMS(Oder Management System:主にECサイトに入力された注文情報を管理し、在庫管理、入金管理、お客様への注文管理メールまでを合理的に一括管理するシステム)

さらに、物流拠点の分散化を実現できれば、物流視点からBCP(Business Continuity Plan)対策の一環にも繋がります。

BCPとは、企業が自然災害や火災などの緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限にとどめることです。さらには、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことを指します。

当社の場合、日本国内で過去数年間台風による被害が頻発しており、BCP対策の観点からも拠点の分散化は急務だと考えていました。実際に大きな台風が発生した際に沖縄のコールセンターが停止する事態も起きていたため、九州にも迅速にフォローできるようなBCP体制を整えています。

今後も、主要なECモールでは限られたリソースの中で出荷スピードがますます求められるようになるでしょう。そんな課題を解決するべく物流拠点の分散化を実現するためには、取引先やパートナー、自社のシステムや体制、投資の方針などを抜本的に見直す必要があります。

これらの大きな改革を実現するためには、共に取り組んでいく関係性のあるパートナー企業と協力するなど、前向きな姿勢が重要です。新たな取引先やパートナー企業に移行する際にも、共に進んでいける考え方を持っている企業を選ぶことが重要だと言えるでしょう。

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