新会長/土木学会・佐々木葉氏/D&Iの実践に取り組む

土木学会の第112代会長に就任した。初の女性会長として会員の多様性を促すダイバーシティー&インクルージョン(D&I)の実践を目指すと同時に、会員相互が信頼し自由に交流できる組織としていく考えだ。土木学会を会員にとっての「インフラ」と捉え、専門性の深化や議論といった会員がやりたい活動を支える各種取り組みも展開していく。

--就任の抱負を。
「土木学会は専門性があるだけではなく、人間として実に多様な力を持った人々によって構成されている。その多様性を発揮することが土木学会の強みだ。初の女性会長が誕生するということは、依然としてマイノリティーである女性技術者や女子学生の希望に、そして土木学会が多様性を重んじているという社会的メッセージとなる。それゆえに、D&Iの実践に取り組んでいきたい」
--多様性の尊重にどのようにして取り組む。
「多様性の尊重とは単に女性や外国人といった属性の多様性を重視することではなく会員一人一人の人としての多様性を尊重することだ。また、元来土木は地域それぞれの固有性を大切にしてきた。このことを景観デザインの観点から向き合ってきた風土と文化を尊重した土木の仕事を通して、広く社会に伝えていく。そして今以上に多様性があったり、自由に発言したりできる組織にしていきたい」
--女性技術者の育成も社会的な課題となっている。
「大学の工学部などで女子枠を設ける動きがある。一種のクオーター制のようなもので賛否はあるが、女性技術者を増やす一つの手段として積極的に取り組むことは必要だと考える。土木学会でもこうした取り組みについて議論を深めたい」
「女性技術者がマイノリティーゆえに特別視されることなどは減ってきており、伸び伸びと仕事をできるようになってきた。ただ、それでも苦労がなくなったわけではないだろう。そうした女性技術者の声は土木学会としても発信していきたい」
--土木学会の目指す姿は。
「土木学会は『インフラ』の役割を担っているともいえる。例えばダムや河川とは、人々が『こんな暮らしを実現したい』と考えた時に、それを可能にする施設として整備するものだ。土木学会も同様に、会員が『こんなことをしたい』『この分野について仲間と議論し、専門性を高めたい』と思ったときにそれを実現する組織でありたい。すでに土木学会にはそうしたニーズに対応した発表会や委員会がある。常に会員がやりたいことを可能にする共通インフラのような姿を目指す」。
(6月14日就任)
(ささき・よう)1984年早稲田大学理工学部建築学科卒、86年東京工業大学大学院総合理工学研究科社会開発工学専攻博士課程前期修了、電力中央研究所入所。2003年早稲田大学理工学部社会環境工学科教授、07年から同大理工学術院創造理工学部社会環境工学科教授。土木学会では景観・デザイン委員長を務めた。神奈川県出身、62歳。

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