極上のパンクロック、愛に満ちていた 盛岡クラブチェンジ

ファイトバックの全演奏を終え、ステージで集合写真に納まる出演者ら(石井麻木さん撮影、盛岡クラブチェンジ提供)

 5千人が極上のパンクロックを浴びる空間は、愛に満ちていた。盛岡市のライブハウス、盛岡クラブチェンジ(黒沼亮介社長)が5月に開催した大型音楽イベント「ファイトバック」。アーティストは口々に盛岡のシーンを絶賛した。出演者とファンの視点を大切に復興支援や若手育成にも取り組み、開業22年目に到達した境地。貫禄を見せ、岩手県内で今後続く音楽催事に好影響を与える。

 盛岡タカヤアリーナのステージに「大トリ」で立った10フィートのアンコール後、イベントを象徴する光景が広がった。出演者が黒沼さんを囲み、聴衆を背に記念撮影。「修学旅行かよ」と黒沼さんが笑った場面こそ、アーティストの愛が凝縮された瞬間だった。撮影した写真家石井麻木さんは「愛しかなかった」と投稿した。

 チェンジの大型イベントは5年に一度だったが、今回は2年ぶり。背景には、時代の不確かさがあった。災害や紛争が絶えず、アーティストとの悲しい別れも続いた。前回出演したザ・バースデイのチバユウスケさん、2018年の15周年催事で演奏した遠藤ミチロウさんはこの世を去った。

 10フィートのタクマさんら開催を望む声にも背を押され決断。黒沼さんはミチロウさんのTシャツを着て、チバさんと並んだ写真をホームページに掲載し、本番に臨んだ。

 アーティストは圧巻の演奏を見せた。この日限りのぜいたくな共演も続出。10フィートはロットングラフティー、マン・ウィズ・ア・ミッションのトーキョー・タナカさんらと共演。OAUのトシロウさんは、モノアイズなどに次々と飛び入りし、聴衆も舞台袖も笑顔にした。

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