トヨタの2017年NASCARカップ王者トゥルーエクスJr.が今季限りでの引退を表明「判断に満足している」

 近年は所属先のジョー・ギブス・レーシング(JGR)と単年契約を繰り返し、キャリアの将来を熟考してきたマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が、アイオワ・スピードウェイで開催された2024年NASCARカップシリーズ第17戦『アイオワ・コーン350 パワード・バイ・エタノール』の現地金曜に、今季限りでのフルタイム引退を表明。2017年のカップシリーズ王者である43歳の現役最年長ドライバーは「自分の決断に満足している」とし、このスポーツで達成した戦歴と周囲への感謝の言葉を述べた。

 カップ通算34勝を挙げ、歴代勝利数で20位タイ。ポールポジション23回と1万2000周以上のリードラップを記録してきたニュージャージー出身のトゥルーエクスJr.は、今季最終戦まででカップ通算693戦の出場を記録する見込みで、2001年以降のエクスフィニティ・シリーズなど初期の3大ナショナルシリーズを合わせれば、ストックカーで800戦以上の出走を数える。

「来年はフルタイムのレースシートには復帰しない。でも、もちろん今年の残りレースが本当に楽しみだ」と切り出したトゥルーエクス。

「信じられないほど素晴らしい経験だったし、大変な道のりでもあった。今は将来が楽しみだし、まだどんな未来になるかはよくわからないが、自分の判断には満足しているよ」

 前述の2001年初参戦を経て、2004年にはデイル・アーンハートJr.が共同所有するチームで2004年、2005年とエクスフィニティでのシリーズチャンピオンを獲得。2006年にカップ昇格を果たすと、その後はアーンハート・ガナッシ・レーシングやマイケル・ウォルトリップ・レーシングを経て、ファニチャー・ロウ・レーシング時代の2016年にはトヨタ陣営のJGRと提携を結んだ。

 トゥルーエクスJr.の78号車が2017年にタイトルを獲得したシーズンは、カップでも圧倒的な記録の年度として語られ、年間8勝でトップ10フィニッシュを26回、ステージ優勝を19回記録し、通算2253周をリードした。そんな苦労人はJGRで通算15回の勝利を挙げ、シリーズランキング2位を2回(2019年、2021年)獲得している。

「ジョー・ギブス、JGR、そしてトヨタの全員に感謝したい。彼らは本当に素晴らしかった」と、今季限りで19号車のシートを離れるトゥルーエクスJr.は語る。

「チャンピオンシップを制覇することはずっと夢見ていたことで、それを実現できたのは素晴らしいことだ。長年にわたり、本当に素晴らしい人たちに囲まれて本当に幸運だと感じている。一緒に仕事をしてきたすべての人たち、クルーメンバー、クルーチーフ、チームオーナー、その他すべての人たち、全員に感謝している」

「もちろん、みんな恋しくなるだろうが、僕は世界からいなくなるわけではない。僕はまだここにいるし、一緒に何かをしたり、楽しんだり、少し人生を楽しんだり、リラックスしたりするつもりさ」

ジョー・ギブス代表らとともに、アイオワ・スピードウェイでの金曜会見に臨んだマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)
ファニチャー・ロウ・レーシング時代の2016年に、トヨタ陣営のJGRと提携を結んだことが契機に
2017年には年間8勝を挙げてカップシリーズ王者に。デイル・アーンハートJr.らから祝福を受けた

■「僕は今でもレースが大好き」。今後の予定も明らかに

 今季シーズン開幕以降、気持ちの大半は引退に傾いていたものの、数週間前にJGRへ決意を伝えるまでは、自身の判断にまだ完全に確信が持てなかったとも明かす。

「すべてについて考えるのに時間が掛かっただけだ。これは大きな決断で、僕だけでなく多くの人々に影響する。それが一番難しい部分だった。世話になった人々を失望させたくはないからね」

 カップでは19シーズン、都合21年間を過ごしたNASCARの世界において、合計3つのシリーズタイトルを保有する43歳は「この21年間、レースを欠席したことはなく、練習を欠席したこともなく、何かに遅刻したこともなく、出演を欠席したこともない」と、自身のその勤勉さも強調した。

「誰かが作ったスケジュールに従って人生を生きてきたが、今は自分のスケジュールを自分で作るときだ。結局のところ、それがすべてだよ。やりたいことをやりたいし、いつできるか、いつできないかを誰かに指図されたくはないんだ」と続けるトゥルーエクス。

「僕は今でもレースが大好きだし、これからもレースに出る。何を、いつ、どのように、そしてどんな理由かはわからない。まだ何もわかりはしないが、この立場にいられること、そして自分の条件でこの決定を下せることをとても幸運に思う。ずっとやりたいと思っていたことなんだ」

 記者会見に同席したジョー・ギブス代表は、今後も「彼にレースに出るよう説得できるかもしれない」との希望を語り、アンバサダーとしてJGRに関わり続ける予定と、そのプロジェクトの詳細を今後決めていく予定であることも明かした。

「マーティンが我々との将来に向け、引き続きプロジェクトに参加してくれることを本当に楽しみにしている。ジョニー・モリス(パーソナルスポンサーの小売チェーンである 『バス・プロ・ショップス』の創設者)と一緒にどこかの木陰で彼を見つけなければならないことは確かだが、その日を楽しみにしているんだ」とギブス代表。

「彼と一緒に仕事ができて本当に良かった。マーティンの評判は誰もが知っていると思うし、彼は真の紳士であり、素晴らしい競争相手であり、引退はチームにとって明らかに大きな出来事であり、大いなる損失だ」

 改めて引退を決断した経緯について「適切な時期だと感じたから」だと明かしたトゥルーエクスJr.だが、今季カップシリーズのチャンピオンシップポイントではまだ未勝利ながらランキング5位につけている。

「自分が思っていた以上の成果を達成できたと思う」と、自らのキャリアを総括したトゥルーエクス。

「とはいえ、多くの失望や、振り返って『ああ、あれが違っていたら……』と考えるようなこともたくさんあるよ。でもこの(エリミネーション)フォーマットで王座を獲得し、3回も準優勝(ランキング2位)を獲得できたのは最高だ」

「自分の成果を誇りに思うし、持てる力をすべて出し切ったと感じている。自分がやったことは本当にうまくいったと感じるし、そのことにも満足している。気分がいいし、とても幸せ。この瞬間のすべてに心から満足しているよ」

カイル・ブッシュやデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)ら、曲者ぞろいの僚友と共闘した
「自分の条件でこの決定を下せることをとても幸運に思う」とトゥルーエクスJr.
今季まだ未勝利ながらランキング5位。もちろん最後のチャンピオンシップ進出を目指す

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