ロッテ・愛斗、広島戦で入団会見で語った「チームのため、ピッチャーのために守る」を体現した外野守備

「守備は自分のために守るのではなくて、チームのため、ピッチャーのために守る。ピッチャーの人生を背負っていると思って守っている」。

現役ドラフトで加入したロッテ・愛斗は、昨年12月19日に行われた入団会見で守備へのこだわりについてこのように語った。

6月9日の広島戦、1-1の8回一死一、二塁で広島・松山竜平が左中間に放った当たりをセンター・髙部瑛斗がダイビングキャッチを試み弾いてしまうも、すぐにカバーに入っていたレフト・愛斗が素早く処理し、一塁走者の矢野雅哉の生還を許さなかったこの守備に、“チームのため、ピッチャーのために守る”を体現した守りのように感じた。

そのことを愛斗に伝えると、「気づかない人もいると思いますし、当たり前だろうと思っている人もいると思うので、見えないファインプレーというか、見てもらえていて良かったなと思います」と明かした。

大塚明外野守備走塁コーチも「すごく良かったと思う。もともと才能がある子だから、一生懸命やってくれれば一番うまいくらい」と評価した。

4月17日の西武戦、2-0の9回二死二塁で山村が放ったライトフェンス際の大きな飛球をフェンスにぶつかりながらも何事もなかったようにキャッチ。簡単そうにキャッチしているが、そこも計算して捕球しているように見えた。

「オドオドしながら捕るのとか、ギリギリ合わせて捕るというのは、ピッチャーもキャッチャーも不安だと思うんですよ。難しい打球、人が難しく捕る打球をいかに簡単に捕るように見せるか。そうすることで、愛斗のところに飛んだら大丈夫と、安心すると思うんですよ。そこの信頼関係だと思うので、難しかった打球を難しく捕るのは誰でもできる。難しい打球を簡単に捕れることは誰もできないと思うので、その準備は前もってやっています」。

試合前練習のノックや打球捕などで、その日のZOZOマリンスタジアムの風などを計算して練習しているのだろうかーー。

「しますし、バッティング練習の打球と試合の打球は違うんですよ。なので、その人が今どういう状況にあるのか、進塁状況がどうなのか、状態はどうなのか、このピッチャーの球速帯でここに打って来れるのかとか、これだけは一番やっちゃいけないとか、色々あるじゃないですか。それをいく前に全部整理しているんですよ」。

「僕とかだったら、ベンチで見ていることが多いんですけど、ぼーっと見ているようで、こうやって打っているんだとか、こういうふうに打ちたいんだ、この選手の状況はこうなんだとか、全てを加味した上でここに守ると決めて守っています」

「譲れないところというか、だから僕は誰にも守備は負けないって自分の中で思います。僕の中では、人生賭けて思って守れるというのはそこにあると思います」

西武時代はライトを中心に守っていたが、ロッテに移籍してからはレフトでの出場もある。ベンチで見ている時はレフトならこう守る、ライトならこう守ると考えているのだろうかーー。

「ライトで出た時、レフトで出た時というか、バッター、ピッチャーの力量、こういうふうな変化球を投げるというのはわかっているので、力量がわかっている。あとはバッターの力量を知るだけなので。このバッターはこういうテーマを打ってきているんじゃないかな、今日、明日はまた変わるかもしれないとか、状況に応じたバッティングができるのかなとか、そういうのを考えながら主にピッチャーとバッターを見ながら試合中はやっている感じです」。

派手なプレーだけがファインプレーじゃない。1つのアウトを取るために考えて、考えて、ポジショニングしたことをわからないように見せ、簡単にアウトにする。これこそが本物のプロの外野守備だ。

取材・文=岩下雄太

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