大阪の次は福岡で公演…「推し」が来ない! コンサートやライブの「広島飛ばし」なぜ? 実態を探った

広島のニュース

 アイドルや音楽のファンの間で話題に上る、コンサートやライブの「広島飛ばし」。2023年でみると、広島県でのコンサートなどの公演回数は福岡県の半分以下、宮城県の6割にとどまっていた。なぜ広島での公演は際立って少ないのか。実態を探った。

 「広島飛ばし、実感してます。私の推すアイドルグループもそう」。広島市の会社員女性(25)は残念がる。宿泊、交通費を払ってでも福岡や大阪、東京に「遠征」するが、「『推し』が来ないなら、広島から引っ越そうと考える人もいるのでは」と推し量る。

 他の地方中枢都市と比べても、広島公演は少ない。76社でつくる一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(東京)によると、広島県は23年に721回で、福岡県1575回の半分以下だ。宮城県よりも少なかった。

 不満の声は、中国新聞社が4月に実施した広島県内の社会人109人を対象としたアンケートでも浮き彫りになった。広島の「イケてない」と思う点について、40人(36・7%)が「行きたいライブやコンサートが少ない」を挙げた。

 広島市に受け皿がないわけではない。中でも、中四国地方で唯一、アリーナツアーをできる広島グリーンアリーナの存在は大きい。ただ、23年度の公演回数は18アーティストの計31回にとどまった。

 「業界では日本一取れないアリーナと呼ばれています」。夢番地広島オフィス(中区)制作部の大山高志部長(46)が明かす。同社の枠は年間8公演、計16日だけ。23年はK―POPの人気グループの2公演を含む複数の打診をやむなく断った。

 公演回数が伸びない理由の一つは、同アリーナを所管する広島県が有料興行の日数を「10%以内」と定めているためだ。23年度のコンサートを含む有料興業は20件(計36日)。設営や撤去を含めても計74日で、開館日の約2割に収めている。

 県スポーツ推進課の田口新也課長は「本来は県民スポーツのための施設なので」と説明。「コンサートによる広域からの集客は地域活性化につながり、施設利用料は貴重な収入源になる。ただ、県民スポーツが制約を受けるのも困る」と理解を求めている。

© 株式会社中国新聞社