納豆に生卵や熱々ごはんは本当にNG? ひきわりと粒の違いとは 素朴な疑問を栄養士に聞いた

納豆ご飯に生卵(写真はイメージ)【写真:写真AC】

蒸した大豆に納豆菌をつけて発酵させた納豆は、良質なたんぱく質をはじめ、血栓予防に関係するナットウキナーゼなど、健康に欠かせない成分が含まれています。毎日食べたいものですが、意外に誤解していることも。食品との組み合わせやひきわりと粒との違い、1日の適量など、納豆にまつわる疑問や誤解について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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生卵や熱々ごはん 気になる納豆との相性

納豆と生卵の相性が悪いといわれる理由は、納豆が持つ「ビオチン」という成分が、卵白に含まれるたんぱく質「アビジン」と結合する性質を持ち、ビオチンの体内吸収を妨げると考えられていることにあります。ビオチンは、血行の促進やコラーゲンの生成をサポートし、皮膚や爪、髪を健康に保ち美容に良いことで注目されているビタミンB群の一種です。

しかし、ビオチンの吸収を妨げるといっても、実際に健康に悪い影響があるわけではありません。またビオチンは卵黄、キノコ、海藻類、魚介類などにも含まれているため、通常の食生活でビオチンが欠乏することはほとんどないとされています。したがって、納豆でビオチンを摂らなければならないわけではなく、生卵との組み合わせが悪いとはいえません。

ちなみに納豆は、熱々のごはんとの組み合わせがNGという見解も。これは、納豆の健康成分であるナットウキナーゼが熱に弱く、50度以上で活性が低下し、70度以上で失活することに関係しています。ただし、一般的な家庭の炊飯器の保温温度は70度前後。茶碗によそうと冷めるので、炊き立てでよほどの熱々ごはんでない限り、あまり気にする必要はないでしょう。

ひきわり納豆は、粒納豆を刻んだもので栄養価は同じ?

誤解されやすいのですが、ひきわり納豆は、発酵した粒納豆を細かく刻んだものではありません。皮を除いて小さくひき割った大豆に、納豆菌をつけて発酵させたものです。一般的な粒納豆よりも、納豆菌が付着する表面積が増えるので、通常の粒納豆とは味わいや栄養価が異なります。

粒納豆は大豆の食感や歯ごたえを、ひきわり納豆は、皮がない分やわらかいので消化も良く、納豆本来の旨味を感じられます。また納豆1パック(50グラム)で比較すると、エネルギーは粒納豆が95キロカロリー、ひきわり納豆が92キロカロリーであまり変わりません。ただし、食物繊維とビタミンB2、カルシウムは粒納豆のほうが多く、骨の健康を助けるビタミンKはひきわり納豆のほうが多くなるなどの違いがあります。

ヘルシー食品だからたくさん食べた方が良い?

納豆が体に良いのは確かなことなのですが、ヘルシーな食品だから、たくさん食べれば良いというのは誤解です。食べすぎは体調不良を招くこともあります。

たとえば、納豆には大豆イソフラボンが含まれ、適量であれば骨粗しょう症予防、更年期障害の症状軽減などの働きが期待されます。しかし一方でイソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンと同じ働きをすることから、摂取しすぎると乳がんや子宮筋腫のリスクを高める可能性があることも示唆されているのです。

また、納豆菌は生命力がとても強く、過酷な環境でも増えていきます。腸内では悪玉菌を減らして腸内環境を整える働きをしますが、過剰摂取すると腸内環境の納豆菌が増えすぎて、腹痛や吐き気を招くこともあるでしょう。

納豆はプリン体が少なくはありません。尿酸値の高い方は、納豆の過剰摂取も気をつけてください。どんな食品にもいえますが、体に良いからといって過剰摂取はかえって悪影響を及ぼします。納豆でいえば、1日1パックを目安においしくいただきましょう。

和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。

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