鈴鹿8耐:長島哲太「強いTeam HRCを見せて欲しい」MotoGPライダーザルコへの期待、高橋巧の最多勝利数更新への展望

 鈴鹿8時間耐久ロードレースにおいて、直近の2大会で2連覇を成し遂げ、圧倒的な強さを誇るTeam HRC。今年の体制において、2年に渡って優勝に貢献した走りを見せた長島哲太の名前はなく、高橋巧、名越哲平、ヨハン・ザルコという新たな布陣で3連覇に臨む。そんな彼らは、それぞれどのような心境を抱いているのだろうか。

 2連覇を達成しているだけに、毎年強力な体制が敷かれるTeam HRCだが、今年は現役MotoGPライダーのザルコが加入。昨年までドゥカティのマシンを走らせていたが、今季からLCRホンダ・カストロールに移籍したライダーで、即戦力も期待される。今年も盤石の体制が用意されたと言えるが、チームに欠かせない存在だった長島は不在となった。

 長島は今年からTeam HRCが履くブリヂストンタイヤではなく、ダンロップタイヤの開発ライダーに就任し、全日本ロードは開発を担いながらDUNLOP Racing Team with YAHAGIから参戦をしている。そのため、Team HRCとともに3連覇を目指すことができない状況となってしまった長島は、次のように胸の内を語った。

長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)/2024全日本ロード第1戦鈴鹿2&4 JSB1000

「現状は鈴鹿8耐に参戦の予定は特にありませんが、自分もHRCの開発ライダーとして籍は置いているので、やはり出るからには強いTeam HRCを見せて欲しいと思います」

「(名越)哲平や(荒川)晃大がこうしてファクトリーバイクに乗ることは、ライダーを育てるためにもすごく良いことだと思います。今まではそのような機会がなく、本当に良い機会だと思うのでふたりには頑張ってほしいですし、最終的にTeam HRCが勝って終わってくれると嬉しいですね」

 自身は一緒に走ることができないものの、2連覇をともに達成したチームの優勝を願っている長島。優勝に導いていた走りを見せ、チームの中でも存在が大きかっただけに、長島の不在は彼自身にとってもファンにとっても少し心苦しさが残るものとなった。

 ただ、そんな長島とともに2連覇を達成した高橋が、今度はエースとしてチームを引っ張っていくことになる。高橋は前年度の優勝で、宇川徹氏が持つ最多勝記録5勝に並び、今年はその記録の更新もかかっており、より一層大事な1戦となる。あまり意識はしていないというが、高橋はチームへの期待と自己最多勝利数更新に向けて次のように語った。

高橋巧(Team HRC)/2024鈴鹿8耐 合同テスト

「2連覇している立場として、やはり3連覇も目指さなければなりません。8時間なので最後まで何が起こるか分かりませんし、自分が転ぶ可能性もあります。そんな簡単なレースではないことも理解しているので、まずはしっかり1時間1スティントを大切に走って、しっかりとバトンを渡すことしか考えていません」

「(自己最多勝利は)結果として付いてくるものだと思っています。このチームなら絶対に勝てると信じているので、優勝を目指してチームみんなで頑張りたいです」

 Team HRCで何度も優勝を経験しているだけあり、落ち着いた様子の高橋。そんな高橋とともに3連覇を目指す要員として抜擢された名越は、優勝最有力候補のチームに加入して、やはりプレッシャーも感じているという。表彰台獲得経験もあり、実力があるだけに周りからの期待も大きいのだろう。

 名越は、6月4〜5日に実施された鈴鹿8耐テストではベストタイムをマークするも、アベレージタイムに課題を残していた。高橋も「もう少しアベレージを上げてほしいというのが正直なところです」と語っていたが、テストを重ねるごとに名越の成長ぶりは感じていたようだ。名越も課題が明白になっていることもあってか、テスト終了後には明るい表情も見られた。

名越哲平(Team HRC)/2024鈴鹿8耐 合同テスト

「連覇がかかっていて、ライダーラインアップとチームを見ても勝って当然と言われるような環境で走らせて頂いているので、それ相応のプレッシャーはあります。巧選手はHARC-PRO時代からよく面倒を見てもらっている先輩なので、プレッシャーは常にかけられていますが、それに負けないような良い走りがしたいです」

「昨年は結果的に2位表彰台を獲得できて、あと1歩と思っていたタイミングでのTeam HRCからのオファーだったので、チームの力になれるように走りたいです。誰しもが憧れる鈴鹿8耐の勝利だと思いますし、そのチャンスが何度も回ってくるとは思っていないので、そのチャンスをしっかりと活かして、世界的にも注目されているこのレースでアピールできればと思っています」

 そう語る名越とともに新しく加入し、プライベートテストからマシンを走らせていた若手ライダーがもうひとりいる。2022年に全日本ロードのST600王者に輝いた荒川は、現時点ではライダーラインアップに名前はないものの、高橋と名越とともにテストを進めている。そんな荒川は、プレッシャーは特に感じていないというが、名越同様にテストで課題も見えたようで前向きな姿勢を見せていた。

荒川晃大(Team HRC)/2024鈴鹿8耐 合同テスト

「チャンスを与えてくださっているので、そのチャンスを掴みたいと思っています。できれば走れることが一番ですが、そうでなくても学べることはたくさんあると思うので、しっかり吸収して僕のバイク人生に活かしたいです。もちろん僕の周りから期待もあると思うので、応えられるようにしたいです」

 高橋を筆頭に若手ライダーふたりを新たに迎え入れ、事前のプライベートテストから3連覇に向けて準備を進めているTeam HRC。6月19〜20日に行われる次回のテストには、ザルコも合流する予定で、本戦に向けてようやく完全体となるという。

 耐久レースの経験は少ないが、やはりMotoGPライダーということもあり、周りからの期待も大きい。MotoGPマシンの開発も担当している高橋と長島のふたりも、現役ライダーであるザルコの走りにやはり注目を置いているようだ。

ヨハン・ザルコ(ホンダ・カストロールLCR)/2024MotoGP第6戦カタルーニャGP 初日

「ザルコはしっかりと鈴鹿を走ったことがないと思いますが、あれだけ走っているMotoGPライダーなので何も心配はしていません。台数が多いなかで走ることは珍しいことだと思いますが、当然スピードも見せてくれると思います。今ホンダが上手くいってないなかで、一緒に楽しみつつ良いストレス発散になって欲しいですね」と高橋。

「ザルコとは、Moto2の時に一緒のチームメイトだったこともありますし、MotoGPに上がってからの活躍も知っています。なので、そういったライダーがこのバイクに乗ったときに、どのような走りでタイムを出すのか、今後の自分にとってもすごく役に立つと思うのでとても注目しています」と長島。

 ライダー達は様々な心境を抱えており、そのなかでも大勢のファン、そして今大会は不在となる長島の期待をも背負って3連覇に挑むことになる。大注目のザルコが加わることで、どのような刺激を与えて化学反応を起こすのか。そして、自己最多勝利数の更新がかかる高橋への期待ももちろんだが、新たに加入した名越と荒川の成長にも注目していきたい。

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