廃校利用...ウイスキー蒸留所、相馬の山間に誕生へ 26年発売目指す

写真上=ウイスキー造りに挑む渡辺さん(右)、高橋さん(奥)、平中さん(左)。背後には、原料となるトウモロコシを栽培している畑が広がる 写真下=改装された給食調理室。蒸留器が設置され、蒸気など流れる配管が張り巡らされている

 相馬市西部の中山間地・玉野地区で、廃校になった旧玉野小を利用したウイスキーの蒸留所「玉野アセンド蒸留所」が20日、誕生する。地元のトウモロコシを原料にしたウイスキーを製造し、2026年の発売を目指す。稼働開始に向け準備を重ねてきた蒸留所の3人は「ここでしかできないまろやかで、香り高いウイスキーを造りたい」と意気込む。

 蒸留所は、インフラ整備の総合建設コンサルタント「建設技術研究所」(東京都)が構想。同社が設立した新会社「CTIアセンド」が整備を進め、20日に酒類製造免許を取得する見通しとなった。

 CTIアセンド取締役渡辺暁人さん(47)は「これからが本当のスタート」と気を引き締める。

 渡辺さんは建設技術研究所で技術者として働いていたが、ウイスキー製造事業を立ち上げるため、東京から県内に移り住んだ。農業経験はなかったが、昨年は遊休地を使って原料のトウモロコシ栽培に挑戦。トラクターも乗りこなし、農業部門を主に担う高橋裕二さん(53)と汗を流した。「芽が出て、育って、実がなる。どれも初めての経験で感動の連続だった」と振り返る。

 旧玉野小の校舎の改修工事は完了し、かつての給食調理室には蒸留器やタンクなどが整然と並ぶ。20日の免許取得後、渡辺さんはこの春入社した平中翔梧さん(22)と昨年収穫したトウモロコシを使って、仕込み作業に入る。

 出来上がった蒸留酒は、米国から輸入した、たるに入れ、教室などで貯蔵する。じっくりと寝かせるうちにたるの素材のアメリカンホワイトオークからバニラのような甘い香りが染み出してくるという。「2年後を楽しみにしてほしい」と渡辺さんは笑顔を見せた。

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