『トヨタ・カローラ(AE110型/JTCC)』コンパクトボディで苦しんだニューカローラ【忘れがたき銘車たち】

 モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、全日本ツーリングカー選手権(JTCC)を戦ったAE110型の『トヨタ・カローラ』です。

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 2.0リッターNAエンジンを搭載する4ドアセダン、FIAクラス2ツーリングカーによる選手権として1994年に“再”スタートした全日本ツーリングカー選手権(JTCC)。

 当初はニューツーリングとも称されたこの選手権に参戦するため、トヨタ系ではトムスやセルモといった有力チームがトヨタ・コロナをベース車に選ぶなか、TRDは独自にAE100型のトヨタ・カローラをベースに車両を開発。FETレーシングとタッグを組んで、JTCCを戦っていた。

 そんなTRDは翌1995年、コロナに代わってトムスやセルモが投入したエクシヴのエンジン開発に注力する一方で、独自に生み出したカローラもニューモデルへと進化させていた。

 カローラは1995年に市販車がAE110型へとモデルチェンジ。それに伴ってTRDもAE110型カローラをベースに1995年モデルのJTCCマシンを新たに作り出した。

 先代のAE100型では、車高が下げられなかったことが大きな課題となっていたが、AE110型ではまず規定で定められた最低地上高まで下げられるように車体を設計。

 さらにトヨタの協力によってFEM解析データを用いてロールケージを設計した結果、剛性向上とともに重心の低下と軽量化を図ることにも成功していた。

 またサスペンションもブレーキング時の挙動が不安定だったという問題を解消すべくジオメトリーを変更。搭載する3S-GE型エンジンも補機類などをモディファイすることによって、20kg以上の軽量化を達成していた。

 こうして先代で抱えていた問題点を解消したAE110型カローラは、FETレーシングに供され、1995年の第7、8戦鈴鹿サーキット戦でデビューを果たした。このレースではベテラン、見崎清志のドライブで第7戦は12位、第8戦は11位に終わった。

 その後もAE110型カローラはFETレーシングを始め、他のプライベーターにも供給され、1997年まで参戦を続けたものの、ポイント獲得もままならない状況が続き、同年限りでJTCCへの参戦を終えた。

 トレッドは広く、エンジンルームの寸法にも余裕がある車両がサスペンション設計における自由度が高いなどの理由もあり、コンパクトなボディが不利だとされていたJTCCにおいて、AE110型となっても小さなボディサイズがほぼ変わらなかったカローラは終始、苦戦を強いられる結果となった。

1996年のJTCC第7、8戦MINEサーキットを松永雅博のドライブで戦ったチームサムシングカローラ。
1997年のJTCC第13、14戦十勝インターナショナルスピードウェイを戦ったインギングカローラ。田中実がステアリングを握った。

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