【千葉魂】大先輩の言葉で原点回帰 益田の背中追う横山 千葉ロッテ(第423回)

横山陸人

 「抑えをやりたいんだろ?」。横山陸人投手は2軍落ち後、頻繁に食事に誘われ、そうハッパをかけられた。声の主は憧れの大先輩・益田直也投手。落ち込んでいるであろう後輩に気を配り、時間がある時は夕食を共にするようにしていた。

 「そんなんやったら取れんよ。奪い取りにくるぐらいの気持ちで来いよ」。マリーンズの絶対的守護神は10歳以上、年下の後輩の目標を知っていた。将来的には自分に代わって、ストッパーの座に君臨する。それが横山の目標であることを。だからあえて本人の前で堂々と、そう声をかけ、落ち込む若者に刺激を与え続けた。

 4月19日のファイターズ戦(エスコンフィールド)で4番手として登板した横山は押し出し四球を与えサヨナラ負け。敗戦投手となり、これを最後に1軍の舞台から遠ざかっていた。

 「2軍に落ちた時は、結構、きつかった。周りが見えなくなっていた。改めて試合終盤の大事な場面で投げる厳しさ、難しさを知りました。自分の球を投げられなくなっていた。そんなボクが2軍にいる時、益田さんが電話をくれて食事に誘っていただき、『しっかりとやれよ』『そんなんじゃ抑えを取れんぞ』と励ましてくださった。本当にありがたかったです」と横山は振り返る。

 横山は憧れの大先輩から背中を押され立ち上がり、2軍で原点回帰を行った。コーチから「オマエの強みはなんだ?」と質問を受けた。1軍で必死に投げているうちに気付けば忘れかけていたことだった。背番号「60」の強みはなんといってもサイドから繰り出される150キロを超える剛速球。特に高めのストレートは威力十分で打者のバットは空を切る。もう一回、そのことも見つめ直し、強化した。そしてコーチと会話の中で野球の原点であるキャッチボールへの想いも考え直した。

 「キャッチボールをアップのようなものではなく、しっかりと目的意識を持って取り組んだ。具体的に言うと相手の身体の左側に狙いを定めて絶対にそこにボールが行くように投げた。キャッチボールは毎日、行うので毎日、その練習ができる」と振り返る。

 1軍復帰登板となった6月5日のジャイアンツ戦(東京ドーム)こそ2失点したものの、その後は4試合連続無失点。6月15日のドラゴンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)はブルペンデーの先陣を切り先発し、2回を無失点しチームの連敗ストップに貢献。プレーボール直後の初球は154キロを計測した。

 「球はよくなっている。期待に応えられるように結果を出し続けて、今後も強い気持ちで投げていきたいと思っています」と横山。昨秋は侍ジャパンのメンバー入りもした次代の守護神候補は憧れの大先輩の背中を必死に追いかける。もう下を向かない。真っすぐ、前を向いて走っていく。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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