定年後も質素に暮らす「年金夫婦で月20万円」の元大卒サラリーマンでも…「退職金2,000万円」「貯蓄2,000万円」を使い切ってしまうワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

老後を見据えてコツコツと貯蓄を続け、退職金もしっかりともらった。もらえる年金のなかで、身の丈のあった生活を送っている……そんな万全の状態であっても、絶対老後は安全といえるわけではありません。老後、直面する可能性がある想定外のリスクについてみていきましょう。

定年大卒サラリーマン…年金月17万円、退職金も貯蓄も2,000万円超え

どうやら、老後は年金だけでは暮らしていけないらしい……もはやこれは日本人の共通認識。多くの人が老後を見据えて資産形成に励むようになりました。

そもそも、いまの高齢者はどれほどの年金をもらっているのか、というと、厚生年金保険(第1号)の平均が併給の老齢基礎年金も含めて月額14万4,982円。 65歳以上男性に限ると、月額16万7,388円です。年金の手取り額は額面の85〜90%程度になるといわれているので、毎月14.2万〜15万円ほどを手にすることになります。配偶者が専業主婦であれば、月20万円程度となるでしょうか。

年によって数値にバラつきはあるものの、老後資金不足問題が話題になった際には、総務省『家計調査』のデータより、「高齢者夫婦の生活費は毎月5万円不足する。老後30年で2,000万円が必要だ」となりました。

同じ、総務省『家計調査 貯蓄・負債編』によると、総務省『家計調査 貯蓄・負債編(2023年平均)』によると、世帯主60代世帯の平均貯蓄額は2,432万円、平均負債額は201万円。貯蓄-負債の純貯蓄額は2,231万円。これらの統計調査で、とんでもない富裕層が紛れ込んでいる、ということは考えられないので、多少、貯蓄の多い人、貯蓄の少ない人のバラつきはありますが、高齢夫婦の平均貯蓄額は2,000万円を超えています。

さらに老後を見据えて期待したいのは退職金。日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査』によると、大卒総合職の平均退職金は勤続38年(60歳想定)で、2,440.1万円。「大学を卒業して就職した会社で定年まで頑張る!」というケースは少なくなっていますが、1社でコツコツと頑張ってきた大卒サラリーマンであれば、2,000万円を超える退職金が期待できる、というわけです。

老後資金が大変なことに…年金生活者が直面する「3つの想定外」

年金手取り月15万円、夫婦で20万円。2,000万円を超える老後資金を確保し、さらに2,000万円を超える退職金も手にする……平均的な大卒サラリーマン。一見すると老後も安泰です。

よく、十分な老後資金があるにも関わらず、生活に息詰まるパターンとして、現役時代と同じライフスタイルを続けてしまったというパターン。現役時代よりも収入が大きく減る老後。それにも関わらず、現役時代と同じようにお金を使っていたら、破綻するのも時間の問題です。いきなり支出ダウンを図ることは難しいため、定年前から家計を見直し、徐々にサイズダウンしていくのは、老後準備で絶対しなければならないことです。

しっかりと家計の見直しを行い、さらに身の丈にあった生活を心がける……特に昨今の物価高。質素倹約に努めて耐えしのぐ、そんな高齢者は多いようです。

そんな生活を送っていても、稀に「老後資金が激減!」、さらには「老後資金を使い切ってしまった!」という悲劇を目の当たりにすることも。老後に直面する想定外には、どのようなことがあるのでしょうか。主なものを3つ、みていきます。

老後の想定外(1)住宅ローン負担の増加

昨今、ライフステージ全般が後ろ倒しになる傾向にあり、マイホーム購入年齢も上昇しています。そのため、70代でローン完済というのも珍しくないようです。計画的なローン返済を進めていても、突発的な修繕が発生したり、自身のため、もしくは同居する家族のために、大規模なバリアフリー住宅へのリフォームが必要になったりと、想定外の出費が発生することも。収入が限られているなか、ローン負担が重くなり、老後生活に影響を及ぼすことは珍しくはありません。

老後の想定外(2)医療費・介護費の増大

年齢を重ねるごとに増えていく医療費や介護費。自身の対策はできていても、家族の分は考えていなかったということもあるでしょう。特に昨今の長寿化で、親の介護は高齢化。年金生活に突入する年齢で、親の介護が本格化することも多いようです。基本的に親の介護では、親の年金や貯蓄でまかない、介護者に経済的な負担はかからない、というのが一般的ですが、なかには親の医療費・介護費が足りず、子どもたちが身銭を切ることも。その場合、親の介護が終わった後に訪れる自身の介護への影響が甚大、ということも考えられるのです。

老後の想定外(3)退職金や老後資金を狙う詐欺事件

昨今、社会問題となっているSNS型投資を中心とした詐欺事件。SNS型投資詐欺は、SNSのメッセージ機能を通じて、メッセージのやり取りを行い、投資詐欺を行うというもの、その被害者は50代~70代が中心。警察庁の調べによると、今年1~3月のSNS型投資詐欺の認知件数は1,700件、被害総額は約219.3億円で、被害1件あたり1,290万円。なかには億単位の被害もあり、老後を見据えた貯蓄も退職金もゼロに……というケースも。犯人からすると、老後資金のために2,000万円を超える貯蓄があり、退職金も相当額もらっている定年後の高齢者は絶好のターゲットです。「自分が詐欺に引っかかるわけがない……」、被害者がそうコメントを残しているように、誰もが被害者になる可能性があるといえるでしょう。

犯罪に限らず、老後、どのようなリスクに直面する可能性があるのか……きちんと理解し、対策を講じておくことが重要です。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』

総務省『家計調査 貯蓄・負債編』

日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査』

警察庁『令和6年1月~3月におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について』

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