「熊本市電の方針は今後見極めたい」全国交通系IC廃止の流れの熊本県のバスや私鉄 熊本市電は判断先送り

熊本市電の全国交通系ICカード廃止をめぐる問題について、大西熊本市長は熊本市議会で、判断を先送りする考えを示した。大西熊本市長は、市電に先行して全国交通系ICカードを廃止し、新たなシステムを導入するバス各社などの状況を見極めるとしている。

熊本市電の全国交通系ICは判断先送り

6月13日の熊本市議会で、吉村健治議員(市民連合)が「熊本市電でバス事業者と同じく使えなくなると、熊本市だけが全国交通系ICカード“空白地帯”となる。全国でも初めての選択をした今回の市長の判断は明らかに顧客サービスの質、利用者数の低下を招くことになると思うが、市民や利用者の理解が得られるのか。白紙に戻して再検討する考えがあるのか」と、熊本市電の全国交通系ICカード廃止の動きについて質問した。

この質問に対して、大西一史熊本市長は「利用者の利便性を考慮すると、熊本都市圏における公共交通の決済環境は圏域の交通事業者共通のものであることが望ましいと考えている。しかし、今般の市民の声も踏まえ、先に更新が始まるバス・電鉄電車の状況、全国交通系ICカード側の動向も注視しながら、市電の方針については今後見極めていきたいと考える」と答弁した。

熊本県内の公共交通をめぐっては、バスなど交通事業5社が機器の更新費などから、全国で初めて、全国交通系IC決済の廃止を発表。2025年4月からはクレジットカードやQRコード決済へ変更する考えで、熊本市電も2026年4月に同様に全国交通系ICを廃止する考えだったが、大西熊本市長は判断の先送りを示した。

「使い勝手がどう変わるか」状況を注視

吉村健治議員(市民連合)が「導入時において、次回更新時に費用が発生することが分かっていなかったのか」と質問すると、熊本市の井芹和哉交通事業管理者は「経年による更新時期の到来により、何らかの対応が必要になるものと認識していたが、今回の多額の更新費までは想定をしていなかった」と全国交通系ICが想定以上の更新費だったことを明らかにした。

全国交通系ICカードの更新費用は約1億9700万円で、一方、更新せず新たなシステムを導入した場合の費用は約1億1000万円と、差額は約8700万円だ。

大西熊本市長は議会後、報道陣に対し「全国交通系ICカードを使っている方が多い状況がある中で、(バスなどの)使い勝手がどう変わるのか、変更することで、すごく面倒だとか、戸惑いも多いと思う。状況の変化が出てくればいろんな対応を考えることはできると思います」と話し、先行して新システムを導入するバスなどの状況を見るなどした上で、熊本市電の決済方法について判断する考えを示した。

(テレビ熊本)

© テレビ熊本