リヤカーで日本一周ごみ拾いの旅 辿り着いた本土最西端の地・長崎 各地の出会いが原動力に

リヤカーを引いてごみを拾いながら日本一周を達成しようとする2人組がいる。北海道をスタートし、東北・関東・九州を行脚してきた2人が次に目指したのは最西端の地・長崎だった。スタートから約2年。彼らが旅をする理由とは。

“我に七難八苦を与えたまえ”

長崎県佐世保市小佐々町でリヤカーを颯爽と引くのは藪根頌己(やぶね・しょうき)さん、34歳。引いているリヤカーの重さは約250キロあるという。

藪根さんは「『願わくば我に七難八苦を与えたまえ』という言葉があってそれをモットーに生きているので。この上り坂とか、日々しんどいのが好きでやっている。モチベーションでもある。しんどいこととか大変なこととかのほうがやった後に思い出に残っているので、そういうのがやはり忘れられない」と語る。

そんな藪根さんとともに旅をするのは福本晃子さんだ。

2人の目標は「日本一周」。せっかくなら人に役立つことをしようとの思いでごみ拾いをしている。

晃子さんは、「(旅で)出会った方も今までごみを(道に)捨てたけど絶対ごみを捨てないよと言ってくれた人もいてうれしい」と語った。

2人の旅が始まったのは2022年2月。藪根さんの出身地である兵庫県西脇市をスタートし、この日で848日目だ。(2024年5月29日時点)

2人は日本一周をするにあたり本土の東西南北の先端を巡ることにしている。

まずは日本海側を北上し、青森県からフェリーに乗って北海道へ。2022年8月に最北端の稚内に行き、2カ月後には最東端の根室に到着。その後、本州に戻り、東北、関東、関西へと進んで九州に上陸し、2024年2月に最南端の鹿児島県の佐多岬へ。そして4月28日に長崎県に入った。

会社を退職し始めた旅

決して楽とは言えないこの二人旅、持ちかけたのは藪根さんだった。

藪根さんは、「10代の頃から歩いて日本一周をいつかしたいと思っていて、小学5年生の時に荷物をリュックで背負って自炊をしながら108キロ歩いたことがあり、それをきっかけに好きになった。日本一周=歩くという認識しかなかった」と語った。

子どもの頃からの目標だった“日本一周”。

転機となったのは新型コロナの感染拡大だった。当時会社員だった藪根さんも仕事や生活に制限を受け、時間ができたため日本一周の夢を実現させるには今しかないと退職。一方、晃子さんは趣味の海外旅行ができなくなり入部した登山サークルで藪根さんと出会ったことがきっかけだった。

晃子さんは、「口だけだろうな、本当に行くと思っていなかったので軽いノリで楽しそうという感じだった。荷物を持ってくれるならついていってもいいよと出発することになった」と当時を振り返った。

ソーラーパネルも 相棒はリヤカー

手軽に荷物を運ぼうと旅の相方に選んだのがリヤカーだった。

リヤカーを引くのは藪根さん、ごみ拾いは晃子さんと役割分担をしながら旅をしている。相棒のリヤカーは装備が充実している。空き缶などを分別できるごみ箱や携帯電話の充電に欠かせないソーラーパネルも。

お気に入りはお手製の車両ナンバーだ。「R530」には“リヤカーゴミゼロ”との意味が込められている。

リヤカーを相棒に続けてきた日本一周の旅の途中には、道すがら声をかけてくれる多くの人との出会いと感謝の言葉があった。

藪根頌己さん:応援してくれる方が圧倒的に増えた、ただ旅をしているだけだったら自分がしたいことをしているので自己満足だが、ごみ拾いをすることによってほかの人が感動したよという言葉を言ってくれるのは僕たちとしてもうれしい

福本晃子さん:旅に出てから(ごみを)拾い始めて、本当にこんなにごみがあるんだなと痛感している

集めたごみの総重量は6400キロ

道中で集めたごみは自治体で処分してもらっており、この日はごみ袋6袋分を引き渡した。

これまで拾ったごみの総重量は6400キロを超えているという。

「僕たちは左側車線しか拾えていなくて、後は届かないものも結構ある」と話す藪根さんに、佐世保市環境部 草野治郎課長は、「私たち地元が拾わないといけないものをありがとうございます」と感謝していた。

2人はこれまで旅の様子を毎日SNSで発信しており、今では行く先々で応援に駆けつけてくれる人も出てきた。炎天下だったこの日も、冷たい飲み物やアイスといった嬉しい差し入れが。

差し入れた住民も「自分には全然できないことなのですごい。若くて好奇心がある」と感心している様子だった。

東西南北を制覇!目指すは

藪根さんが全国で唯一来たことがなかった長崎県の旅も終盤だ。

訪れたのは佐世保市の神崎鼻公園。本土最西端の地だ。この日2人は、旅の目的の一つだった本土の東西南北の最先端を全制覇した。

藪根さんは、「出発する前から長崎の坂は大変と想定してきたが、案の定大変だった。トップ3に入るしんどさだった。長崎で食べた数々の地元料理。思い出がたくさんできたのも全て出会った人のおかげ。この旅じゃなかったら知ることができなかったことが色々あるので、本当に感謝が大きい」と旅への思いを語った。

また、晃子さんも「歩き旅がこんなに出会いが多いと思っていなかったので、出発してから自分たちがやりたくてやっていることを『元気もらったよ』『感動したよ』と、涙を流してくれる人もいて、旅に出てよかった」と満足げだった。

長崎に到着した今、これから目指すのはスタートでありゴールでもある兵庫県西脇市。各地の出会いを原動力に2人の旅はまだまだ続く。

(テレビ長崎)

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