「愛犬のがんとの向き合い方」実際に経験した獣医師に聞いたアドバイスとは

がんは人と同じでどの犬もかかりうる病気です。もしかかったときに動揺してしまうのは飼い主として当たり前のこと。でも、大切なのはそのあとどうやって愛犬を支えてあげるかではないでしょうか? そこで、獣医師の原修一先生に、獣医師の視点からはもちろん、愛犬をがん闘病の末に見送った経験も交えながら、愛犬のがんとの向き合い方について聞きました。

原先生の愛犬メイプルちゃん(メス・享年9才/体重28.0㎏/ゴールデン・レトリーバー/天真爛漫)。血管肉腫での闘病の末、2023年2月に旅立ちました

Q.愛犬ががんに。そのときに飼い主がすべきことは?

A.がんの種類によって予後は異なります。まずは病気と治療について知ることから

「がんは種類によって、完治を期待できるものから難しいものまであります。まずは獣医師から、愛犬のがんについて、選択できる治療と、それぞれの予後の見通しについてなど、充分な説明を受けることから。そのうえで家族で話し合い、治療を選択しましょう」

Q.治療方針に迷うときはどうしたらよいでしょうか?

A.治療をすることでの予後や愛犬の負担はどの程度かなど総合的に見て考えて

「手術は犬にとってリスクや負担が大きいことも多く、また抗がん剤などの化学療法はときに強い副作用に悩まされることも。治療によって期待できる効果の程(メリット)と治療のデメリットを、愛犬のQOLをベースに天秤にかけ、考えてみてはいかがでしょうか」

Q.メンタルを保つ向き合い方とは

A.つらい思いを誰かと共有すると気持ちは楽に。愛犬に励まされることも

SNSなどを通じて同じ病気の愛犬を持つ飼い主さんと話すだけでも気持ちは楽に。また、「寝たきりになっても外に連れ出すとボールで遊ぶようなしぐさを見せてくれるなど、メイプルのうれしいが、そのまま自分の喜びになっていました」と原先生は言います。

引用元:Wavetop/gettyimages

Q.もし先が長くないとなったら、最後のときをどう寄り添ったらよいでしょうか?

A.笑顔で向き合える時間を大切に、どう過ごしたいかを家族で話し合って

「愛犬にどう過ごしてほしいか、どうしてあげたいか、家族で方針を決められるといいですね。僕たち家族は、一分一秒でも長く生きてもらうことよりも、メイプルが穏やかでいられる時間、また家族が笑顔で向き合っていられる時間を大切にしました」

Q.がんの闘病でもっとも大変なことは?

A.愛犬が弱ってくるようなとき、大型犬ではとくに、介護が大変に

「とくにメイプルのような大型犬は、寝たきりになると、排泄のために外に連れ出すなど、毎日の生活における介護は大変です」と原先生。またメンタル面では、愛犬の体調がよいときでも常に不安がつきまといがちに。未来を憂えず、瞬間、瞬間を大切にしましょう。

Q.向き合う時間や充分な治療費が確保できない場合は?

A.恥じることではないので、かかりつけ医に正直に話し、できることをしてあげて

「がんの闘病は時間もお金もかかります。たとえばメイプルを腫瘍専門医に診てもらったとき、検査だけで約30万円かかりました。お金や時間に限りがあるのは当たり前のことなので、正直にかかりつけ医に話をし、そのなかで何ができるかを相談しましょう」

最後に、原先生からのメッセージをお届けします。

投げ出さずに、向き合ってあげてほしい

「一度の手術で完治できるがんもあれば、治療が長引くものもあります。いずれにしても一人で抱えこまず、家族や親しいいぬ友などといっしょに〝向き合い続ける〞ことを、愛犬のためにしてあげてほしいと思います」

お話を伺った先生/上野原どうぶつ病院院長。獣医師 原修一先生
参考/「いぬのきもち」2024年4月号『愛犬のがんと向き合う』
写真/尾﨑たまき
文/川本央子

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