プーチン露大統領による北朝鮮の労働新聞への寄稿全文「ロシアと北朝鮮:長年にわたる友好と協力の伝統」

By Kosuke Takahashi

2023年9月、ロシアのボストーチヌイ宇宙基地でプーチン大統領と会談する金正恩氏(写真:朝鮮朝鮮中央通信)

ロシアのプーチン大統領が6月18~19日に北朝鮮を訪問する。プーチン大統領は昔も今も既存の障壁を破るかのごとく北朝鮮に接近してきた。ソ連崩壊後の2000年7月、その2カ月前に就任したばかりのプーチン大統領は初訪朝し、故金正日総書記と共同宣言に調印した。ロシア最高指導者の訪朝は旧ソ連時代も含めて史上初めてだった。そして、今回の24年ぶりの訪朝は金正恩体制に移行後は初めてとなる。

プーチン大統領は2回目の訪朝を前に北朝鮮の労働新聞に寄稿し、6月18日付の同紙の一面で報じられた。ロシア大統領府(クレムリン)のウェブサイトでも公開された。対米けん制で共闘する露朝の戦略的な接近ぶりを際立たせている。全文は以下の通り。

朝鮮民主主義人民共和国への公式訪問の直前に、私は労働新聞の朝鮮と海外の読者に向けて、両国間の協力の展望とそれが現在の世界において持つ意義についての私の考えを述べたいと思います。
ロシアと朝鮮の友好と隣国関係は、平等、相互尊重、信頼の原則に基づき、70年以上の歴史があり、輝かしい歴史的伝統に富んでいます。私たちの人民は、日本軍国主義に対する困難な共同闘争の記憶を大切にし、その闘争で亡くなった英雄たちを称えています。1945年8月、ソ連兵は朝鮮の愛国者と肩を組んで戦い、関東軍を撃滅して朝鮮半島を植民地支配者から解放し、朝鮮の人々が自立して発展する道を開いたのです。赤軍の朝鮮解放を記念して1946年に平壌の中心に建てられた牡丹峰の記念碑はまさに、両国人民の戦闘的友誼の象徴となっています。
ソ連は世界で最初に、創建されて間もない朝鮮民主主義人民共和国を承認し、外交関係を樹立した国です。1949年3月17日、朝鮮民主主義人民共和国の建国者、金日成同志が初めてモスクワを訪問した際、ソ連と朝鮮民主主義人民共和国は経済文化協力協定に調印し、二国間交流をさらに強化するための法的枠組みを確立しました。我が国は、朝鮮の友人たちが国家経済を建設し、医療制度を構築し、科学と教育を発展させ、専門的な行政・技術職員を養成するのを支援しました。
1950年から1953年にかけての祖国解放戦争の困難な時期にも、ソ連は朝鮮人民に援助の手を差し伸べ、独立のための闘争を支援しました。その後、ソ連は、若い朝鮮国家の国民経済の回復と強化、そして平和な生活の構築に多大な援助を提供しました。
2000年の私の最初の平壌訪問と、翌年の朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長金正日同志のロシアへの再訪問は、両国関係における新たな重要な里程標(りていひょう)となりました。当時調印された二国間宣言は、その後の私たちの創造的かつ多面的なパートナーシップの基本立場と方向を規定しました。
現在朝鮮民主主義人民共和国を率いる金正恩同志は、ロシア国民の友人であり、特出した国家政治家である金日成同志と金正日同志といった先人たちの政策を自信を持って継承しています。昨年9月にロシアのボストーチヌイ宇宙基地でお会いした際に、私はそのことを改めて確認する機会を得ました。
今日も、ロシアと朝鮮民主主義人民共和国は、これまで同様、多面的なパートナーシップを積極的に推進しています。私たちは、朝鮮民主主義人民共和国がウクライナで行われているロシアの特殊軍事作戦を揺るぎなく支持し、主要国際問題においてわれわれと連帯を表し、国連舞台で共同路線と立場を守っていることについて高く評価します。平壌は常に私たちの献身的で志を同じくする支持者であり、正義、主権の相互尊重、互いの利益への配慮に基づく多極的な世界秩序の出現を阻止しようとする西側諸国の野望に断固反対する用意があります。
米国は、いわゆる「ルールに基づく秩序」を世界に押し付けようと躍起になっていますが、これは本質的には二重基準に頼る世界的な新植民地独裁主義にほかなりません。このようなアプローチに反対し、独自の政策を追求する国々は、よりいっそうひどい対外的圧力に直面しています。米国の指導部は、自立と独立へのこのような自然で正当な願望を、米国の世界的な支配に対する脅威とみなしています。
米国とその追随国は、ロシアに「戦略的敗北」を負わせることが目的であると公然と宣言しています。彼らは2014年のキエフでの武装クーデターとそれに続くドンバス戦争を支援し、作り上げることで自ら引き起こしたウクライナ紛争を長引かせ、さらに悪化させるためにあらゆる手を尽くしています。さらに、彼らは長年にわたり、状況を平和的に解決しようとする私たちの試みをすべて繰り返し拒否してきました。ロシアは常に、最も困難な問題も含め、あらゆる問題について平等な対話にオープンであり、今後もオープンであり続けるでしょう。私は最近モスクワでロシア外交官と会談した際に、このことを繰り返し述べました。
一方、私たちの敵対勢力は、ネオナチのキエフ政権に資金、武器、諜報情報を提供し続け、ロシア領土への攻撃に西側諸国の最新兵器や装備の使用を許可し、事実上奨励しています。その標的は、ほとんどの場合、明らかに民間人であります。彼らはウクライナに軍隊を派遣すると脅しています。さらに、新たな制裁を科してロシア経済を疲弊させ、国内の社会的・政治的緊張を煽ろうとしています。
しかし、彼らがどんなにやっきになって尽力しても、ロシアを封じ込めたり孤立させようとする試みはすべて失敗しました。私たちは着実に経済力を強化し、産業、技術、インフラ、科学、教育、文化を発展させ続けています。
私たちの朝鮮の友人たちが、米国による長年の経済的圧力、挑発、脅迫、軍事的脅威にもかかわらず、依然として自国の利益を効果的に守っていることを嬉しく思います。私たちは、朝鮮民主主義人民共和国の人々が自由、主権、民族的伝統のために戦う力強さ、尊厳、勇気を目の当たりにし、防衛、技術、科学、産業の面で自国を強化する上で大きな成果と真の躍進を達成しています。同時に、朝鮮の指導部とそのトップである金正恩同志は、既存の相違点をすべて平和的手段で解決する意向を繰り返し表明してきました。しかし、ワシントンは以前の合意の履行を拒否し、ますます厳しくなり、明らかに受け入れがたい新たな要求を出し続けています。
ロシアは、狡猾で危険で侵略的な敵との対決において、自主と独創性、発展の道を自ら選択する権利を守る闘いをめぐる朝鮮民主主義人民共和国と英雄的な朝鮮人民を絶えず支援してきたし、これからも支援し続けるでしょう。
また、私たちは国際関係にさらなる民主主義と安定をもたらすために緊密に協力する用意があります。そのために、私たちは西側諸国の統制を受けない貿易と相互決済体系を発展させ、一方的な非合法的制限措置に共同で反対していくでしょう。また、それとともに、ユーラシアにおいて、平等で不可分な安全構造を建設していくでしょう。
言うまでもなく、両国間の人的交流を発展させていきます。ロシアと朝鮮の高等教育機関間の学術交流、相互観光旅行、文化、教育、青少年、スポーツ交流など、国と国の間のコミュニケーションを人間中心にし、信頼と相互理解を高めるあらゆることを促進する予定です。
私たちの共同の努力により、二国間の交流がより高いレベルに進み、ロシアと朝鮮民主主義人民共和国の相互に利益のある平等な協力が促進され、両国の主権が強化され、貿易と経済のつながり、人々の交流が促進され、最終的には両国の国民の福祉が向上すると確信しています。
私は金正恩同志が健康であることと、友好的な朝鮮民主主義人民共和国の全ての人民に平和と発展の道で大きな成果があることを願います。

© 高橋浩祐