中村彝アトリエ植栽整備 没後100年 CF活用「憩いの場に」 茨城県近代美術館運営協

中村彝アトリエを覆うように生い茂った樹木=水戸市千波町

茨城県水戸市出身の洋画家・中村彝(つね)の没後100年に合わせ、県近代美術館運営支援協議会(代表・荒屋鋪(あらやしき)透同館長)は17日、同市千波町の同館敷地内にある「中村彝アトリエ」周囲の環境整備のためクラウドファンディング(CF)を始めた。新築復元から36年が経過し、小さかった樹木は巨木に成長。アトリエが見えにくくなっており、同協議会は「植栽を整備して明るい空間にし、人々が憩える場を目指したい」と協力を呼びかけている。

アトリエは1988年の同館開館時、近代美術史に大きな足跡を残した彝の画業を紹介できるよう、拠点とした東京・落合にあった建物を敷地内に復元。彝の没後に組織された「中村彝会」と県内の美術家が集めた資金を県に寄託して実現した。

アトリエ内では、彝の作品モチーフとして描かれたソファや小卓、イーゼルなどの遺品を展示している。代表作「カルピスの包み紙のある静物」(県指定文化財)などの制作過程が垣間見られるとともに、名作を生んだ当時の雰囲気も体感できる。

一方、復元から36年が経過し、アトリエ周辺に植えられたコブシやクロガネモチなどは大きく成長し、現在のアトリエは周囲から見えにくくなっている。同協議会によると、樹木の成長で芝生広場に日が差さなくなり、コケがむす薄暗い場所に変わってしまったという。

このため同協議会は、アトリエ周囲の整備を図るため、CFを活用して資金を募ることを決定。調達された資金は、樹木伐採や剪定(せんてい)、高校生特派員による調査研究費などに充てられる。

目標額は800万円で、募集期間は8月9日まで。寄付額は5000円から100万円まで8段階を設定した。寄付額に応じて、オリジナル彝Tシャツ、銘板への名前掲出、同館で11月に予定される「没後100年 中村彝展」の内覧招待などの返礼品も用意した。

同協議会事務局長の金沢宏同館副館長は「散策する人が気軽に立ち寄れる憩いの空間にしたい。大芸術家、中村彝を知る機会にしてほしい」と呼びかけている。

CFのURLは、https://readyfor.jp/projects/NAKAMURA_Tsune

中村彝アトリエのリニューアルイメージ(県近代美術館運営支援協議会提供)

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