13歳のJA組合員 期待の農業少年 小さい頃から自分の畑を管理 直売所に出荷も 親子は「師弟」であり「ライバル」

小さい頃から野菜作りに励み、なんと小学4年生で農協の組合員となった男の子が長野県安曇野市にいる。現在は13歳の中学2年生。小さい頃から自分の畑を管理し、直売所に出荷もしている。農業青年ならぬ農業少年の1日を取材した。

ベテラン農家のような受け答え

朝どれのレタス。時刻は午前5時過ぎ。

父や祖父母と一緒に精を出すのは、安曇野市の中学2年生・飯沼永遠さん13歳。慣れた手つきで収穫していく。

中学2年生・飯沼永遠さん:
「5分も仕事すれば眠気なんか覚めるかな。(レタスの)出来はいいですよ、結構いい大きさだし、あまり病気にもならなかったから」

まるでベテラン農家のような受け答え。

実は永遠さん、「農協の組合員」。自分で畑を管理し出荷もしている。

小学4年生の時にJA組合員に

永遠さんは市内に合わせて約5.4ヘクタールの田畑を持つ専業農家の長男。

畑で遊びながら育ち、自然と農業を手伝うようになったと言う。

飯沼永遠さん:
「うち自体がずっと農家だったから、ずっと畑で育ったようなものだから」

父・竜也さん(42):
「うれしいですよね、自分と同じことをやってくれるから。2人でやれば3馬力4馬力になるから戦力としても本当に助かる」

小学2年生の頃には、父・竜也さんが永遠さんのために借りた近所の畑で自分で野菜作りをするようになった。

さらに、小学4年生の時に父や生産者仲間の提案でJAあづみの正組合員となり、自分で育てた野菜を直売所に出荷するまでになった。

飯沼永遠さん:
「自分で出してみたら面白いかなと思ってなりました。お客さんがいる時間に行って野菜並べてると『この前これ買っておいしかったから、また買っていくね』って言われると頑張ってよかったなとうれしく思います」

JAあづみの組合員は2024年2月末時点で1万5629人。(正組合員1万1031人 准組合員は4598人)

年間50日以上、農業に従事していることなどが組合員になる条件。高齢化が進み組合員のおよそ7割は65歳以上。永遠さんのような組合員は例がないという。

JAあづみ 営農経済事業部・手塚富康係長:
「(中学生で)家で手伝いしてる方はみかけますけど、組合員で自分から出荷したりという方は今のところ見たことない。(農家の)高齢化が進んでいますので、地元の農業を引っ張っていただける農業青年に育っていただきたい」

朝5時 レタスの収穫に

午前5時前―。

飯沼永遠さん:
「(眠くない?)眠い。(朝の作業は)いつもこんなもんだよ」

起きてすぐに車で5分ほどの畑へ。今はレタスの収穫期。

てきぱきと収穫する永遠さん。時折、作業にムラがあるということだが、祖父母も頼りにしている。

祖父・春夫さん(71):
「助かるよ。きのうテスト勉強でいなかったら、積み込みから何から水かけから、みんなやらなきゃいけないからやっぱ違うわ」

祖母・園恵さん(71):
「私らよりなんでもこなすから助かりますよ、一人前の仕事するから」

2時間ほど作業をしたら朝食。サンドイッチにとれたてのレタスを巻いて頬張る。

飯沼永遠さん:
「お肉がおいしいです。(レタスは?)レタス、シャキシャキです」

朝7時半 中学校へ

朝7時半―。

腹ごしらえをしたら、運動着に着替え、自転車に乗って畑から直接、学校に向かう。

この日は100ケース1440玉のレタスを出荷。

レタスの収穫を終えた父・竜也さんはー

父・竜也さん:
「永遠の野菜で、きのうの夜、荷造りしたのでこれから出しに行きます」

永遠さんが育てた野菜は人気

永遠さんが育てた水菜やチンゲンサイ。学校に行っている永遠さんに代わって直売所に出荷する。

午前10時過ぎ、安曇野市豊科・安曇野スイス村 ハイジの里―。

売り場に永遠さんの野菜も並んだ。

野菜には親子の似顔絵のシールが貼ってある。

購入した客は「しっかりしてて重いし葉っぱもきれいなので、安いから2つ買ってこうかな」、「とてもみずみずしいというか、変にピンピンしてなくて優しい感じですね」などと話し、野菜の評価は高い。

手に取っただけでは中学生が育てものとはわからないが、売り上げは好調だ。

安曇野スイス村 ハイジの里・下平光雄副センター長:
「かなり人気ですね。作ってるものもしっかりとして鮮度確認も、ものがいいものですね。これから農業を担っていただく世代で今、中学生ですけど、そういった部分が頼もしく、お店としても期待しています」

午後4時半 帰宅後すぐに畑へ

午後4時半過ぎ―。

永遠さんは部活動はしておらず帰宅したらすぐに畑へ。

父・竜也さんの畑でお盆に出荷する「アスター」という花の苗を植え付けた。

それが終わったら、次は永遠さんの畑へ。

チンゲンサイなどの収穫だ。永遠さんはこの3アールほどの畑で年間およそ20品種の野菜を育てている。

飯沼永遠さん:
「いかにこの少ない面積で数出すかだから、同じ木からどのくらいとれるみたいな、多収ってやつを選んで作ってますね。大変だけど楽しいですね。大きくなってくのを見てると面白い」

親子は「師弟」であり「ライバル」

いつも一緒の2人。親子は「師弟」であり「ライバル」でもある。

飯沼永遠さん:
「野菜作りの師匠みたいな。基本的な作り方とか消毒の時期とか細かい所をパパに全部教えてもらったかな」

父・竜也さん:
「張り合ってやってる部分もあってお互いライバルかな」

飯沼永遠さん:
「今はライバルだけどゆくゆくは倒してやろうかなと思ってます」

「働き者で感心する」

収穫が終わったら作業場で夕食。

手伝ってくれた近所の兼業農家・小椋さんと一緒に、チンゲンサイはチャンプルーに、水菜はサラダにして食べた。

父・竜也さん:
「(チンゲン菜は)柔らかいです。直売所に出しても恥ずかしくない野菜になったんじゃないですか」

飯沼永遠さん:
「(水菜)シャキシャキでおいしいですね(笑)」

農業仲間・小椋陽一郎さん:
「(永遠さんは)まず働き者というのが印象的。毎日畑に行って収穫時期見極めてとっているというのは普通に感心する」

朝から晩まで農業

作業は夕食後も。翌日、出荷する野菜の袋詰めだ。

レタスの収穫もありこの時期は朝から晩まで農業。

でも、永遠さんは13歳にしてその醍醐味にたどり着き、日々、後継者として成長している。

中学2年生・飯沼永遠さん(13):
「大変さに見合った面白さがあるから、それが一番かな。きれいなものとか、値段が安いとか、お客さんが喜んで買ってもらえるような野菜を多く作っていきたい。お客さんに『これ、この前あって良かったからもう一回買おう』みたいな感じで思ってもらえれば一番いいですね」

(長野放送)

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