GLAY×JAY、山下智久×TAEHYUN、香取慎吾×SEVENTEEN……ベテラン勢も意欲、日韓コラボは次のフェーズへ

最近、日本と韓国のアーティストによるコラボレーション楽曲のリリースが相次いでいる。直近では山下智久が、6月5日にTOMORROW X TOGETHERのTAEHYUNとコラボした新曲「Perfect Storm (feat. TAEHYUN of TOMORROW X TOGETHER)」をリリース。さらに5月29日には、GLAYがデビュー30周年記念シングル『whodunit /シェア』の収録曲「whodunit」でENHYPENのJAYとコラボを実現し、話題を集めた。

HIPHOPやR&Bジャンルで活発だった日韓コラボ

こうした日韓アーティストのコラボは、遡れば20年以上前から行われてきた。例えば、2000年~2010年にかけては、R&Bジャンルを得意とする日本のアーティストと韓国の大手事務所出身アーティストによるコラボが相次いだ。

その代表例の一つが、倖田來未と東方神起。2007年11月7日に倖田のシングルとして「LAST ANGEL feat.東方神起」をリリースし、同楽曲は映画『バイオハザードIII』の日本版主題歌にも起用されて話題を集めた。

2009年にはw-indsとBIGBANGのG-DRAGON(当時はまだ日本デビュー前)が「Rain Is Fallin’」で、2010年にはBoAと三浦大知が「Possibility duet with 三浦大知」でコラボを実現。特に前者はw-indsが韓国のイベントに出演した際、タクシーの運転手にたまたまBIGBANGの存在を教えてもらったことから共演につながったというエピソードもあり、メンバーの嗅覚の鋭さには驚かされる。

BIGBANGでは、青山テルマも「Fall in Love」でSOLとコラボ。青山の切なげな歌声とSOLのクリアで深みのある歌声がマッチしたラブソングで、多くのリスナーを魅了した。

そこから少し時間を早送りし、2015年以降の日韓コラボに着目してみると、今度はHIPHOP界隈でのコラボレーションが活発化してくる。

例えば2015年の元日には、ソウル出身のラッパーKeith Apeが、日本のラッパーKOHH(現在は千葉雄喜名義で活動中)とLootaを含む複数アーティストとコラボした「잊지마 (It G Ma) (feat. JayAllDay, Loota, Okasian & Kohh)」をリリース。日本語と韓国語が入り混じった、当時一般的ではないスタイルのHIPHOPサウンドを生み出し、日韓のHIPHOP界隈に大きな影響を与えた。

また、2018年にはSKY-HIが、メジャーデビュー5周年を記念したミックステープの中で、韓国のラッパー Reddyとコラボして「I Think, I Sing, I Say」を発表。さらに2019年には、JP THE WAVYが韓国の人気ラッパー Sik-Kをフィーチャリングアーティストに迎え、切ないメロディと甘いフロウが印象的な「Just A Lil Bit」をリリースした。

2010年代後半は、R&BやHIPHOPなど、コラボレーションが文化として根づいているジャンルを中心に、総じて当時の若いアーティストによる挑戦的な取り組みとして日韓のコラボレーションが行われることが多かった印象だ。しかし、そこから少しずつ他ジャンルでの共作も行われるようになった。振り返ると、2018年にリリースされたEPIK HIGH×SEKAI NO OWARI「Sleeping Beauty」はその先駆け的な作品だったのかもしれない。

GLAY×JAY、山下智久×TAEHYUNなど、相次ぐベテランによるコラボ実現

そうしたベースがあった上での、最近のコラボレーションの様相を眺めていると、昨今はLE SSERAFIMとAdo、imaseといった若手アーティスト同士の共作だけでなく、第一線で長く活躍を続けているベテランアーティストとK-POPの次世代アーティストとのコラボが新たなトレンドになりつつあるように感じる。そしてそのコラボは、良い意味で化学変化を起こして双方の魅力を引き出しながら、両者のファン層の心を掴んでいるように思える。

本稿の冒頭で少し触れた山下智久とTOMORROW X TOGETHERのTAEHYUNによるコラボ楽曲「Perfect Storm (feat. TAEHYUN of TOMORROW X TOGETHER)」は、山下主演のドラマ『ブルーモーメント』の挿入歌ということもあって大きな話題を集めたが、交差する2人の歌声やラップが、疾走感あるサウンドとよくマッチしていて非常に聴きごたえのある一曲に仕上がっている。

また、GLAYとENHYPEN JAYによる「whodunit」は、ハードなロックサウンドとダンサブルなリズムが融合した中毒性のある一曲。その中に響くJAYの突き抜けるような歌声を聴いていると、JAYの歌唱力の高さを改めて実感する。そして同時に、GLAYらしいサウンドのおもしろさとバンドサウンドの魅力、GLAYの演奏のクールさを改めて堪能する楽曲となったのではないだろうか。

また、少し前になるが昨年2月には香取慎吾がSEVENTEENとコラボした「BETTING」をリリースして話題となっていた。同楽曲はSEVENTEENとしては初の日本人アーティストとのコラボに。WOOZIの楽曲制作力と、JEONGHAN、MINGYU、SEUNGKWANのボーカルやラップのスキル、香取の引き出しの多い表現力で、何度聴いても新しい魅力を発見できる深みのある一曲となっている。

こうした「日本のベテランアーティスト×K-POP次世代アーティスト」という新たなコラボが見られるようになってきているのは、日本におけるK-POPの人気が確立し、一定規模のファン層が築かれていることが大きな影響を与えていることは間違いないだろう。また、昨今のK-POPシーンは、アジアかつ世界へとファン層を広げつつある。日本のアーティストにとってはアジアや世界への入り口として、韓国のアーティストにとっては日本国内の認知度向上に繋がるため、コラボを行うという側面もあるのかもしれない。

いずれにせよ、日韓アーティストのコラボは、かつての“挑戦的な取り組み”というフェーズから、もはや一つの王道の楽曲制作スタイルとなりつつある。今後も日本では、多彩なコラボレーションが見られるのではないだろうか。

(文=市岡光子)

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