京都・嵐山より見ごたえあり!? 全長1.8km竹林「向日市・竹の径」穴場の絶景レポート

洛西竹林公園の竹林(撮影:山本佐和​​)

日本の美を感じさせる竹林。その美しさは国内外問わず、多くの観光客から人気を集め、暑い夏は青々とした竹林が涼やかで心地よい。

京都の竹林といえば、嵐山にある竹林の小径(こみち)を思い浮かべる人が多いが、有名であるがゆえに大混雑。「写真を撮りたいけれど人だらけ」なんてことは、京都の観光地あるあるだ。

そこで今回おすすめしたいのが、京都府向日市(むこうし)の「竹の径」。京都駅から40分ほどの場所にあり、「美しい日本の歩きたくなる道500選」にも選ばれている知る人ぞ知る穴場スポットだ。

周辺には歴史ある神社や古墳が点在しており、ゆったりと街歩きも楽しめるのもポイント。今回はそんな向日市の穴場スポットをめぐるハイキングの魅力をお伝えする。

■奈良時代に創建。重要文化財の向日神社

向日神社の鳥居

ハイキングのスタート地点は、阪急電鉄京都本線の西向日(にしむこう)駅から徒歩15分ほどの場所にある「向日神社(むこうじんじゃ)」。この街のシンボル的存在で、奈良時代の養老2年(718年)に創建された、1300年以上もの歴史をもつ神社である。

鳥居をくぐると、本殿へと続く石畳の参道が真っ直ぐ延びている。約200m続く参道は桜並木と楓のトンネルのようになっており、春になると見事な桜、秋になると真っ赤な紅葉が楽しめるスポットとして地元の人から愛されている。

筆者が訪れた頃は、新緑が美しい季節。暑い日ではあったが、参道に入るとひんやり涼しく、木漏れ日のなか歩くと気持ちよかった。ちなみにこの参道は車も通れる道であるため、注意しながら歩こう。

本殿は伝統的な三間社流造(さんげんしゃながれづくり)で、国指定重要文化財に指定されており、明治神宮のモデルになったとも言われている。

また、本殿だけではなく、境内の13もの建造物が国登録有形文化財であるというから驚きである。また、本殿の裏には不動明王を祀る不動尊などが鎮座している。有名な観光地と違って人も少なく、ゆったりと神社を参拝できるのもありがたい。

■街に点在する歴史ある古墳群

桓武天皇のお墓

向日市は、街にさまざまな古墳が点在しているのも特徴の1つ。観光協会では、西向日駅の隣駅である東向日駅から洛西口駅まで、6つの古墳を見て回る約2時間半の「古墳めぐり」コースが紹介されている。

今回は竹林が目的だったので全ての古墳は網羅できていないが、竹林へと向かう途中、3つの古墳を見て歩くことができた。

向日神社北側の勝山公園内にある「元稲荷古墳(もといなりこふん)」、 竹林近くにある「桓武天皇皇后陵(かんむてんのうこうごうりよう)」、そして竹林内にある「寺戸大塚古墳(てらどおおづかこふん)」である。

「竹の径」(南側)入口付近にある「寺戸大塚古墳」

寺戸大塚古墳は、古墳時代前期、4世紀の前方後円墳。全長は約98mあり、三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)など多くの出土品があった。一見雑木林のように見える場所にも、大昔の歴史が詰まっていると思うとわくわくする。

ちなみに東向日駅近くの向日市文化資料館では、古い街並みを再現した3Dマップなど歴史を体感できる展示がたくさんあるので、時間があればぜひ足を延ばしてほしい。

■美しい日本の道。全長約1.8kmに渡る「竹の径」

竹の径(南側)の入口

出発地点の向日神社から北に25分ほど歩くと、竹の径の入口に到着だ。ここから全長約1.8kmの竹林が続く。嵐山の「竹林の小径」の全長が約400mであり、その長さは圧倒的だ。

真っ直ぐに空へと伸びる竹が美しい。街歩きで汗ばんだ体には、凛とした空気が広がる竹林がとても涼しく、気持ちよく感じた。

向日市は、もともと良質な筍の産地で「たけのこの里」としても有名な場所。平成12年に景観保全のために整備して作られたのが、この「竹の径」で、植えられているのはすべて向日市特産の「孟宗竹(もうそうちく)」だ。

波のようなデザインの「海道垣」

歩く際は、竹垣にも注目してほしい。さまざまなデザインの竹垣は全8種類。竹の枝を束ねた「竹穂垣」や古墳の形をイメージした「古墳垣」、波のようなデザインの「海道垣」など、それぞれのデザインコンセプトを読みながら歩くのがまた楽しい。

10月にはライトアップイベント「竹の径・かぐやの夕べ」が開催され、幻想的な竹林が体感できる。

■洛西竹林公園で、竹の魅力を深掘り

竹細工や様々な種類の竹が展示されている竹の資料館

竹林の径に来たなら必ず立ち寄ってほしいのが、北側に位置する洛西竹林公園内の「竹の資料館」と「生態園」である。

竹の資料館には、竹の特徴や使われ方などの歴史を紐解くパネルをはじめ、建築や装飾品などに用いられる京都産の「京銘竹」の展示、京都八幡のマダケを使って作られた世界初の竹フィラメントであるエジソン電球、茶道具や扇子といった工芸品など、普段じっくりと見ることのない竹の世界が繰り広げられている。

隣接する生態園には全国各地さまざまな種類の竹が植林されており、一口に「竹」と言ってもこんなにも種類がたくさんあるのか! と驚かされるほどだ。

また、竹だけではなく、応仁の乱の発端となった百々橋(どどばし)や、織田信長にまつわる石仏を安置した石仏群など、歴史的な史跡があるというのも大きな魅力である。

見応えたっぷりの施設だが、入館料は無料。今まで知り得なかった竹の魅力を発見できる2つの施設。ぜひハイキングの休憩がてら、ゆっくり堪能してほしい。

向日市の穴場スポットめぐりは、街に眠る歴史に触れ、日本の竹の魅力を再発見するハイキングとなった。これから暑い夏、涼しくも美しい竹林に癒されに行ってみてはいかがだろうか。

【ルートタイム】
西向日駅から向日神社(15分)→向日神社から竹の径(25分)→竹の径を抜けて洛西竹林公園(15分)→ 洛西竹林公園から洛西口駅(25分) トータル1時間20分

●京都市洛西竹林公園

住所:京都府京都市西京区大枝北福西町2丁目300-3

※この記事の情報は2024年6月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。

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