米メリーランド州、大麻絡みで有罪の17万5000人を恩赦

アメリカ・メリーランド州のウェス・ムーア知事(45、民主党)は17日、大麻所持などで有罪判決を受けた17万5000人に恩赦を与える行政命令に署名した。「麻薬戦争が引き起こした数十年にわたる弊害」に対処するためだという。

ムーア知事は、この行政命令は「アメリカ史上最も広範囲におよぶ、州レベルの恩赦」であり、「このような措置としては我が国史上最大のもの」だと述べた。

そして、「メリーランド州は多くの歴史的過ちを正すために、この機会を役立てていく」と付け加えた。

メリーランド州では1年近く前に大麻が合法化された。アメリカでは現在、国民の半数以上が大麻を合法とする州で暮らしている。

連邦政府も大麻の再分類を進めている。ジョー・バイデン米大統領は、大麻所持の罪で有罪となった米国民に対し、2度にわたり大規模な恩赦を行っている。

「大麻の犯罪化がもたらした影響に対処」

民主党の新星であるムーア氏は、住民投票で大麻が合法化されて以降、メリーランド州は「この国で最も公平で優れた合法市場の一つ」を展開してきたとした。

「合法化は麻薬戦争によって引き起こされた数十年の弊害の時計の針を戻すものではない」と、ムーア氏は州都アナポリスで語った。

「犯罪化がもたらした影響に対処しないのであれば、合法化の恩恵を祝うことはできない」

メリーランド州の2022年の報告書によると、同州の白人は黒人に比べて大麻を使用する割合が高いが、合法化以前は大麻所持容疑で逮捕される黒人の数は白人の2倍以上だった。住民に占める黒人の割合は3人に1人だが、刑務所に収監されている男性の3人に2人以上が黒人であることが、州のデータで示されている。

アンソニー・ブラウン州司法長官は、「長年の懸案だった」今回の動きは、大麻の取り締まりにおける人種にもとづく偏見という「現代の足かせ」を事実上解くものだと述べた。

恩赦対象は

今回の措置では、州の電子裁判記録に登録されたすべての、軽微あるいは軽犯罪の大麻所持罪が恩赦の対象となる。

薬物に使用する道具に関連する軽微な罪もすべて免除される。州当局によると、こうした犯罪に恩赦を与えるのは同州が初めてだという。

裁判記録が書面で保管されている、さらに昔の有罪判決については、恩赦を申請できる。

また、すでに死亡した人にも恩赦が適用される。

恩赦対象者には刑務所に収監されている人は含まれていない。しかし、前科のある人の多くは犯罪歴を理由に、住居を選んだり、雇用や教育を受ける機会を拒否されており、恩赦でそれが変わることが期待される。

アメリカの連邦レベルや州、地方自治体の指導者たちには、有罪判決を受けた人々に恩赦を与えることで、それらの人々が失ったかもしれない権利の一部または全部を回復させる権限がある。

過去5年間では少なくとも9つの州で、大麻に絡んだ軽微犯罪で有罪となった人々に恩赦が与えられた。

恩赦は過去の犯罪を許すものだが、必ずしも犯罪記録を封印あるいは抹消することにはならない。

前科の記録については、恩赦から10カ月以内に犯罪歴調査データベースから削除されるが、抹消するよう申請をしない限り、公的な裁判記録には残り続けると、米紙ワシントン・ポストは伝えている。

(英語記事 Maryland pardons 175,000 people of cannabis convictions

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社