伝統織物「壮錦」に流行を取り入れて 中国広西チワン族自治区

伝統織物「壮錦」に流行を取り入れて 中国広西チワン族自治区

4日、工房で壮錦製品を確認する「中国工芸美術大師」「中国織錦工芸大師」の称号を持つ譚湘光(たん・しょうこう)さん。(南寧=新華社記者/黄浩銘)

 【新華社南寧6月18日】中国広西チワン族自治区を代表する民族工芸品の織物「壮錦」は、江蘇省南京市の「雲錦」、四川省成都市の「蜀錦」、江蘇省蘇州市の「宋錦」と並んで中国四大織物と称され、その歴史は2千年余り前までさかのぼることができる。チワン族の錦織技法は2006年に第1次国家級無形文化遺産に登録された。伝統的な壮錦は一般的に、「竹籠機」と呼ばれる独特の織機で織られる。単調な動作を何万回も繰り返しても長さ数センチ、幅30センチ程度しか織り上げることができないため、「(「寸錦寸金」(極めて価値が高い)」と言われる。

 生産性が低い上に織物そのものの幅が狭いことから、壮錦を使った製品は種類が限られ販売促進も難しい状況にあった。16歳から壮錦の織り方を習い始め、現在は「中国工芸美術大師」と「中国織錦工芸大師」の称号を持つ譚湘光(たん・しょうこう)さんは、壮錦の伝統文化の継承と発展には製品の革新と生産量の向上に力を注ぐ必要があると考える。

伝統織物「壮錦」に流行を取り入れて 中国広西チワン族自治区

4日、譚湘光(たん・しょうこう)さんの工房で壮錦製品を作る実習生。(南寧=新華社記者/黄浩銘)

 柄のバリエーションを増やすため譚さんは壮錦の幅を30センチから45センチに広げ、その後、3メートルにまで広げた。さらに機械を導入したことで大量生産が可能となり、生産性と経済効果が著しく向上した。一方で譚さんは伝統技法の継承も怠らなかった。自治区内にある複数の専門学校で壮錦製織技法課程を開設、学生に手工芸の錦織技法を教えている。

 織物の幅を広げ、生産量を増やし、若い人材を継続的に育成したことで、デザイン面、応用面ともに壮錦の革新の基盤づくりにつながった。壮錦はこれまで、主にスカーフやバッグ、おんぶひもなどに用いられてきたが、譚さんの率いるチームは商品開発を続けることで、デジタル製品用の保護ケースや化粧ポーチ、馬面裙(プリーツ入りの伝統スカート)などを次々と生み出し、柄やデザインを豊富に取りそろえた。

伝統織物「壮錦」に流行を取り入れて 中国広西チワン族自治区

4日、譚湘光(たん・しょうこう)さんの工房に並ぶ壮錦製品。(南寧=新華社記者/黄浩銘)

 市場動向や流行に沿った革新はチームの若い人材がもたらした。譚さんによると、チームではインターネットや交流サイト(SNS)ではやっているものを研究したり、ファッションブランドの新製品を分析したりして、最新の流行を取り入れた製品を売り出しているという。チームメンバーの范麗華(はん・れいか)さんによると、工房には若い人材が次々と加わり、デザインチームは6人に増えた。壮錦で作った干支の置物や服飾雑貨などは若者の間で人気となり、売り出せば即完売する製品も多いという。

 譚さんは「今年はネット通販で月に10万元(1元=約22円)以上を売り上げている。ファンが増え、さらに売り上げを伸ばしている」と語った。譚さんと工房の若者たちは昨年から、さまざまな壮錦製品を暮らしに取り入れる方法を短編動画で紹介し、ライブコマースも定期的に行っている。譚さんは、ライブコマースは壮錦製品をより直感的にわかりやすく紹介することができるとし、若い消費者の壮錦人気は自分たちの自信につながっていると語った。

 広西民族博物館では、壮錦製品の展示がしばしば行われている。麦西(ばく・せい)副館長は「伝統文化の要素を取り入れた製品に対する若者の表現や個性化された需要は、壮錦製品に新たな市場機会を創出した。伝統技法に現代美学を組み合わせた製品は消費者に大いに受け入れられている。壁に飾っておくための芸術品だった壮錦は、暮らしの中で使われる芸術品に変わりつつあり、民族の伝統文化の継承と発展に新たな活力を呼び込んでいる」と語った。(記者/黄浩銘)

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