宝石のデジタル化と持続可能なPlay to Earnを目指す 「Brilliantcrypto」の狙い

コロプラのグループ会社であるBrilliantcryptoは、開発したブロックチェーンゲーム「Brilliantcrypto」のPC版を、6月17日にリリース。“遊んで稼げるPlay to Earnゲーム”とうたう同タイトルについて、コロプラ創業者兼会長であり、Brilliantcryptoの代表取締役社長を務める馬場功淳氏による説明会が先立って実施。あわせて、コインチェック 取締役社長執行役員(※説明会時は副社長執行役員だったが、6月12日付けで記載の役職に就任)の井坂友之氏によるトークセッションも行われた。

ゲーム内の鉱山で採掘を行い、宝石を獲得

本作は「Proof of Gaming」という新しいモデルを導入したブロックチェーンゲーム。プレーヤーは「つるはしNFT」を持ってゲーム内の鉱山で採掘を行い、宝石を獲得していく。Proof of Gamingは、ビットコインのコンセンサスアルゴリズムである「Proof of Work」より着想を得た仕組みで、ゲームプレイを通じて、デジタル世界における石の価値を証明することにより、他人の価値を創出するというもの。メタバースに価値ある経済圏を生み出す日本発のグローバル大型プロジェクトとしている。

ブリリアンクリプトトークン(BRIL)は、ポリゴンブロックチェーン上で発行される暗号資産。ゲーム内で使用できるつるはしNFTの購入や強化、耐久力の回復などに使用することができるというもので、ゲームを始めるためや、プレイをより効率的にするために使用される。2024年5月27日から開始したBRILトークンのCoincheck IEOにおいて、最終的な購入申し込み金額は、史上最高額となる333億円を突破したという。リリースにあわせて、BRILはCoincheckの取引所にて取り扱いが開始。同日中にCoincheck販売所でも取り扱い開始予定としている。これにより、同サービスでの売買に加え、BRILの送金や受取が可能。BRILはゲーム内のつるはしNFTの修理や強化に必要となる。

宝石をデジタル化するプロジェクト

Brilliantcryptoは、上場企業でもあるコロプラの100%子会社であり、企業としても同じ扱いを受けることを踏まえ、上場企業がトークンを発行してIEOを行うのは、馬場氏によれば世界初のことという。

現状において、仮想通貨を利用したゲームは、ベンチャーなど小規模な企業が運営している場合がほとんどと指摘。背景には法令の遵守や税制、上場企業であれば監査法人による監査も受けなければいけないなど、さまざまな壁がありハードルが高いという。加えて、トークンがどのような売り上げになっているのかなど、会計基準が決まってないところもあり、監査法人も監査しきれない側面もあったことなどが、難易度の高さにつながっているという。そうした状況下でも、監査法人とともにひとつずつクリアしてここまでこれたのは、意義深いことと語る。

馬場氏は、例えば株券は電子化、金銭は電子マネーといった形で、人類はどんどんデジタルに移行しているという。ゲーム内アイテムの販売についても普通のこととなり、これまでコロプラが創業時から販売してきたゲーム内アイテムの売り上げは、5000億円にも及ぶという。また金についても、今はビットコインが資産価値など近いものがあり、デジタル化しているようなものとも語る。

そうしたあらゆるものがデジタル化が進んでいく世の中で、デジタル化されていないものに宝石を挙げる。宝石の使われ方として宝飾品としての価値があり、また価値の保存という観点から、非常に高額な価値があっても持ち歩けるぐらいの大きさで資産の圧縮効果が高く、運搬効率もいいということもあり、現実世界で有用に使われているという。そして馬場氏は、この先宝石がデジタル化する発想や予定もないなかで、これをデジタル化することは、人類史においても意味があることと考えたことが、Brilliantcryptoの発想につながったと語る。

一方、宝石のデジタル化は難しいものとも語る。例えとしてブランドがある車やバックがデジタル化しても、その企業が認めれば一定の価値が保証できるものだが、そもそも宝石は誰のものでもなく、誰のものと存在を証明することができないもの。それを解決する考え方として、Proof of Gamingがあるという。

前述のようにProof of Workに着想を得たもので、ビットコインではこの形で存在の証明と保証をしている。このWorkをGameに変えたら、みんな楽しく宝石を作り出ることができ、それをみんなで保証できるのではと考えたという。

馬場氏としては、このプロジェクトは、今までにないデジタルの世界に、本物の宝石を生み出すプロジェクトであり、その付随として、遊んで稼ぐことができるという概念を用いているものと説明。そして現実世界において宝石を発掘しても、発掘した本人ではなく鉱山主のものとなる場合はあるが、このプロジェクトは誰もが自由に参加し、みんなが平等に扱えるような設計にしているという。

なお、Brilliantcryptoは鉱山の提供者というべき立ち位置にあるのだが、エンジニアなどが宝石の量や質を調整して提供するなどといった、不正につながることはできないという。実際、提供側もその鉱山から何が出てくるかがわからないようになっているとし、不正な宝石については、特殊なアルゴリズムを使って偽物と証明できるものにしているという。

提供側も宝石を手に入れるには自ら採掘しかないという仕組みはフェアとも言えるが、運営上必要になってくる利益をどのように得るか、という観点においては懸念もあり、ユーザーから宝石を買い取るファンドを設立したとしている。

上場企業が暗号資産の業界に入ってこれる土壌ができつつある

馬場氏と井坂氏によるトークセッションでは、暗号資産市場やBrilliantcryptoについて語られた。井坂氏は、ビットコインについて、上下動はありつつも長期的なトレンドでは上昇傾向にあること、半減期やそこからの上昇を繰り返す動向があることを説明し、Brilliantcryptoはいいタイミングでのリリースにあると語る。

また、日本においてもWeb3に関しては政府が成長戦略としての取り組みも行っており、これまでBrilliantcryptoのようなサービスを行う場合、税制の問題もあって海外で会社を作って提供するものとなっていたのだが、国内発のサービスとして提供しやすい環境が整ってきたとし、井坂氏も、上場企業が暗号資産の業界に入ってこれる土壌ができつつあるという。

とはいえ、井坂氏が上場企業がIEOを行うこと、そしてBrilliantcryptoの取り組みについて話しを聞いたとき、「とてもチャレンジング」というぐらいに難しさを感じていたという。そうしたなかで必要なのは「トップに強い意志とゲームへの理解」と語り、馬場氏ら関係者の熱意もあって、コインチェックが監査を引き受けることにしたという。

ちなみに井坂氏は、ゲームデザイナーやプロデューサーとしてのキャリアも持っており、馬場氏も、井坂氏とはゲームの話しで盛り上がっていたことや、ゲーム業界の知見があることはこの取り組みに大きかったことを語れば、井坂氏も“自称ゲームエンタメに詳しい取引所”とアピールしつつ、ブロックチェーンゲームにおける“型”がまだ完全に固まりきった状態ではないため、支援したい気持ちもあったとしている。

馬場氏は、ブロックチェーンの技術は早い段階から着目しつつ動向を気にしていたなかで、ウォーキングをすることによって稼ぐことができる「STEPN」というゲームがリリースされ、日本でも一定の盛り上がりがあり、暗号資産のリテラシーがまだ薄い人たちでも海外と取引するような難しい作業をしつつ、プレイしはじめるような状況が生まれたときに、Play to Earnに対しての“引き”の強さやニーズを感じたという。

Brilliantcryptoにおいて、1人のプレイヤーが一つの鉱山を掘る場合、馬場氏によればおよそ12~13時間程度かかり、宝石は5個ほど発掘される想定でいるという。結構手間で大変ではあるが、だからこそ価値が生まれるものであり、参加者が増えるほどそのデジタル宝石の価値も上がり、やがてゲームの外の世界でも価値が伝わっていくことを想定。これはビットコインがたどった道であることも付け加えた。

ゲーム性についても触れ、馬場氏によればどうしてもゲームとしての面白さを出していきたい考えもあったのだが、Play to Earnや宝石の発掘という性質にはあわなかったようで、Brilliantcryptoはイメージとして“プチプチ”を潰すような、ひたすら没頭する感覚に近いものになったという。

締めくくりとして井坂氏は、ゲーム産業がさまざまなテクノロジーを取り込んで大きくなっていった歴史のなかで、ブロックチェーンの流れを取り込むというのもまた必然な流れであること、また暗合資産業界としてさまざまなプレーヤーやクリエーターが参加してこそマーケットも大きくなっていくため、開拓者のような方を支援していきたいと語る。

馬場氏は、約2年間プロジェクトを進めるなかで、始めたときは半信半疑ではあったものの、ゲームやベータテストの感触、5月に行ったIEOが開始13分で、目標金額の15億1200万円を達成したことも含め、追い風を感じていること、そしていい形でリリースできると、手応えを語った。

「Brilliantcrypto」公式サイト

※記事中のゲーム内の画像は、開発中のため変更になる可能性がある。 (C)Brilliantcrypto, Inc.

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