文科省、高専卒者のキャリアパス調査研究報告書を公開

本科・専攻科卒業生進路(n=56)

文部科学省は2024年6月7日、「高等専門学校卒業者のキャリアパス等に関する調査研究」報告書を公開した。専門的能力が優れていると評価される高専卒業生の就職時の処遇は、大卒者より低い傾向にあるといわれる。これは学位の有無が影響しているのか、詳しく分析している。

「高等専門学校卒業者のキャリアパス等に関する調査研究」は高専生のキャリアパスや進路選択にあたっての要因の現状を把握することを目的に2023年11月~12月、リベルタス・コンサルティングが文部科学省の委託を受け実施。高等専門学校56校、国立大学84校、2022年度高専卒業生の回答788件、高専を最終学歴とした人材を採用した企業の回答682件をもとに、就職後の高専卒業生と大卒者との処遇の差、特に、学位の有無が企業における給与の決定などに影響を与えているかを詳しく分析した。

2022年度の高専卒生のうち、本科卒の進路は「就職者」が全体の6割弱、「大学編入者」が2割強、「専攻科進学者」が1割強。専攻科卒の進路は、「就職者」が7割弱、「大学院進学者」が約3割。就職先の企業規模は本科・専攻科のいずれも企業規模は1,000人以上の大企業の割合が高く、職種は技術者の割合が高い。

学校推薦で就職した割合は、本科で8割近く。学校推薦については、約4割が「高専卒業生の給与水準が大卒と比較すると低い」「高専卒業生の配属ポジションに大卒との差がある」など大卒との差を課題としてあげているが、課題が「特にない」学校の割合も約4割あった。

高専は学位が取得できないが、学位のないことによる就職活動における支障の有無を調べたところ、9割近くが「支障なし」と回答。実際に支障が生じた事例は、大卒または専攻科卒限定の求人があることだった。

一方、企業調査によると「高専生からの一般応募が少ない」「企業の需要に対し、学校側からの高専生の紹介が不足している」「企業が高専生にアピールする機会が少ない」などといった課題が聞かれた。

回答企業のうち、高専卒社員(本科卒・専攻科卒計)が「21人以上」在籍している企業は全体の約2割、従業員規模が大きいほど、高専卒社員の人数も多い。

高専卒の処遇については、新卒時は「大学学部卒と同等」以上の企業は少ないものの、40歳時には約4割に増加。「大卒未満」の給与水準となっている割合は、1,000人未満の製造業において割合が高く5割を超えていた。

大卒者と比較して高専本科卒者の給与が低い理由としては、半数以上の企業が「学修歴により給与テーブルが異なるため」と回答し、成果などを理由とする企業はほとんどなかった。昇進スピードや定着率、能力は、大卒と高専卒で同等と考える企業が多く、小規模の製造業を中心に「高専卒の方が資質・能力が高い」と回答している企業も存在した。

高専卒業生の採用意向については、6割弱の企業が採用したいと回答。高専卒業生の社員数を母数としたウエイトバック集計では、企業が採用したいと回答した割合が8割弱にのぼる。調査の詳細は、文部科学省のWebサイトで閲覧できる。

川端珠紀

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